「交通事故に遭い、むち打ち(頸椎捻挫・腰椎捻挫)と診断された場合、被害者は病院にどのくらいの期間を通院して頻度はどれくらいがベストなのか?」むち打ち事故に遭われた被害者の中には、そんな疑問をお持ちの方がとても多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、むち打ちの最適な通院期間と頻度について、交通事故の専門家の目線で解説していきます。
むち打ちの最適な通院期間と頻度
この項目では、むち打ちの最適な通院期間と頻度について、注意点を含め各項目に分けて解説していきます。
最低でも週2回は通院治療する
通院頻度に関しては、1週間に2回以上は通院治療(リハビリ)を受けるのがベストです。できることなら毎日、2日に1回など、積極的な通院実績を作ることが大切です。
注意点は、ごく稀に週1回程度しか行けないときもあるというのは何の問題もありませんが、1週間開けて次の週に1回、次の週も開けるといった通院間隔の場合、保険会社への証明も難しくなります。
どれだけ忙しくても、最低でも週2回以上はリハビリを受けるように心掛けましょう。
保険会社は通院期間3ヵ月を目安としている
保険会社の多くは、むちうち症を軽微な症状と断定しており、治療期間の目安として3ヵ月を一つの区切りにしています。
むち打ち事故の被害者がご本人で保険会社とやり取りしている場合、症状が改善していないにもかかわらず、保険会社の一方的な判断で治療費打ち切りになることがとても多ため、注意が必要です。
症状が治るまで通院するのが最適な通院期間、ただし6ヵ月まで
むち打ちの治療はあくまでも症状を回復するためですので、症状が治るまで通院するのが最適な通院期間です。そもそも、交通事故によってむち打ち症を負った被害者が怪我の治療を受けるにあたり、加害者側の保険会社に気を使わなくてはいけないこと自体が問題です。
症状や回復には個人差もありますし、一定の期間が過ぎれば治るわけでもありません。むち打ち症で6ヵ月程度の安静加療が必要になるケースも珍しくありませんので、治ってもいないのに保険会社に言われるまま症状固定に移行する必要は一切ありません。
ただし、むち打ちという症状に対する医学的見解から、一般的な症状の場合は事故日から3ヵ月、症状が酷くリハビリを続けるも一向に改善されない場合は約6ヵ月が通院期間の限度です。
その後も症状が残る場合は、症状固定にして後遺障害認定を申請することになります。また、後遺障害認定の申請をする場合は、症状固定後も申請結果が出るまでは自費で通院実績を作っておくことが大切です。
むち打ち治療は必ず整形外科を受診する
交通事故でむち打ち症を負った場合、被害者がどこで治療を受けるのかを決める権利があります。ただし、交通事故の損害賠償請求には「医師による診断と治療」が必要です。単に事故で怪我をした、症状があるでは慰謝料を請求することができません。
また、正月等の病院の長期連休など特別な事情がある場合を除き、事故日から10日以上開けて病院で診察を受けたとしても事故とは無関係の怪我・症状とされることが多いですので注意が必要です。
むち打ち事故に遭った場合は、事故後すぐに整形外科を受診して医師による診断・治療を受けましょう。
接骨院は賠償請求が認められないことが多い
接骨院や整骨院は、柔道整復師等が施術を行うため、スタッフは病院の医師ではありません。そのため、健康保険が使える施術もほとんどなく、交通事故の損害賠償請求でも、事故後に接骨院の施術のみを受けている場合は支払い拒否となることが多いです。
ただし、まずは整形外科で診断治療を受けてから、医師からの指示がある場合に限り、補助的リハビリとして受けるのであれば、賠償請求が認められることもあります。
むち打ちの慰謝料計算には3つの基準がある
むち打ちの慰謝料を計算する方法には「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つがあります。
慰謝料計算の基準は、交通事故の慰謝料増額で非常に重要な部分ですので必ず押さえておきましょう。
自賠責保険基準
自賠責保険基準とは、国土交通省が管轄する自賠責保険が交通事故被害者に最低限の補償をするために設けられた基準です。そのため、自賠責保険で慰謝料を計算した場合、3つの基準の中で最も低い金額になります。
自賠責保険基準の場合は、限度額が傷害損害や休業損害等を含めた慰謝料全体で120万円と定められています。
一方で、自賠責保険は審査が緩いというメリットがあります。実際に、むち打ちの場合に任意保険会社が認めてくれないケースで、自賠責保険に請求することで認められることがあります。
また、通院分の慰謝料を随時請求できる点や任意保険会社のように病院への治療打ち切りや被害者への催促もありませんので、限度額までは安心して通院治療を続けられることが大きなメリットです。
自賠責保険基準は、交通事故被害者が自賠責保険会社に対して「被害者請求」を行うことで採用されます。なお、被害者請求は被害者自身でも弁護士に依頼しても可能ですが、いずれも自賠責保険基準が適応されることに変わりはありません。
自賠責保険基準での慰謝料の計算方法は下記のようになります。
・自賠責保険基準
「実通院日数×2」か「治療期間」のどちらか少ない方×4200円=入通院慰謝料
2020/04/01に自賠責保険が改定されたので、4月以降に発生した事故の場合は4300円が基準になります。
任意保険基準
任意保険基準はどの保険会社も算定基準を公開しておらず、それぞれが独自の基準を設けています。
ただし、任意保険基準は自賠責保険基準を基に、それより少し高い程度の基準を設けています。
そのため、自賠責保険基準を基に慰謝料を計算することで、おおよその目安を把握することができます。
弁護士基準
弁護士基準は、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称:赤い本)」の入通院慰謝料の算定表を基準に計算します。
入通院慰謝料の計算方法には2種類の基準表ありますが、むち打ちの場合は、他覚所見のない(骨折等の画像所見がなく、医師の見解による判断)軽症の怪我の場合に用いられる別表2の基準が適応されます。
むち打ちの場合の表の見方は、通院3ヵ月で53万円、4ヵ月で67万円という風に通院B欄の縦1列目を基準として、原則として通院期間で慰謝料が固定されています。
後遺障害等級は通院実績(頻度・期間)や事故状況が重要視される
むち打ちで認定対象となる後遺障害等級は、「12級13号(認定基準:局部に頑固な神経症状を残すもの)」と「14級9号(認定基準:局部に)」の2つがあります。
ただし、12級は簡易的なレントゲン画像だけでは事足りず、CTやMRI等による画像所見が必要になります。
軽微な事故のむち打ちで12級が認定されることはほぼなく、むち打ちの認定対象は14級のみと言っても過言ではありません。
また、後遺傷害診断書も医師の見解によるものとなりますので、14級の認定は目に見えない症状を証明するために通院実績や事故状況が重要視されています。
医師の診断、通院実績、症状、事故状況、すべての条件が揃ってはじめて認定の可能性が出てきます。
14級は、等級や後遺障害慰謝料は最も低いものの、他の等級に比べて認定のハードルは非常に高いのが実情です。
むち打ちは弁護士に依頼することで慰謝料を大幅に増額できる
弁護士基準は弁護士に依頼するだけで適応されます。任意保険基準を弁護士基準で計算しなおすことで受け取れる金額(示談金)は確実に上がります。交渉次第では、保険会社が提示する示談金の約2倍程度の金額になることも多いです。さらに、休業損害や後遺障害等を含めると場合によっては3倍以上になるケースもあります。
実際に、むち打ち事故を弁護士が介入することで、100万円以上の増額、250万円以上の示談金獲得といった事例は数多く存在します。
保険会社の一方的な打ち切りを阻止するには弁護士への依頼が必須
保険会社も被害者に支払う慰謝料を国の機関である自賠責保険に請求します。保険会社が通院治療の早期打ち切り(症状固定)を打診するのは、自賠責保険に請求することで賄える120万円以内に慰謝料を抑えたいからに他なりません。
保険会社の一方的な治療打ち切りは弁護士に依頼するだけで簡単に阻止することができますので、症状回復まで安心して通院治療を受けることができます。
まとめ
今回は、むち打ちの最適な通院期間と頻度について解説しました。むち打ち事故の被害者は、適切な通院期間や頻度を認識していないことが多く、保険会社はそれをいいことに時期早々に示談に持ち込もうとします。
交通事故問題に精通した弁護士は、このような事案に慣れているため被害者の強い味方となってくれます。また、保険会社とのやり取りは全て代理人である弁護士が引き受けますし、通院治療や休業損害等の適切なアドバイスを受けることも可能です。
弁護士への依頼は早ければ早いほど多くのメリットを得られます。むち打ち事故でお悩みの方は弁護士に依頼して適正な慰謝料獲得を検討しましょう。