この記事でわかること
- むち打ちと慰謝料の基準がわかる
- むち打ちの後遺障害慰謝料と等級がわかる
- むち打ちの自賠責基準と弁護士基準の慰謝料が比較できる
交通事故で後ろから追突された場合、重症には至らなくてもむち打ち症となることがあります。むち打ちは診断が難しいケガではありますが、通院ともなれば当然ながら慰謝料が請求できます。
このとき、慰謝料の相場を知っておくことで、相手の保険会社が提示する賠償金額は高いのか?低いのか?が分かります。
この記事では、むち打ちになってしまった場合の慰謝料の相場と賠償金を増額させるための方法についてご説明します。受け取る慰謝料で損をしないように参考になさって下さい。

むち打ちは外傷がないため被害者は慰謝料請求を十分得られないことが多い症状です。むち打ちと慰謝料基準を理解して適正な請求を行ってください!
むち打ちとは
むち打ちは正式名称を「外傷性頚部症候群(がいしょうせいけいぶしょうこうぐん)」や「頚椎捻挫」などと言い、俗には「鞭打ち症」と呼ばれることもあります。交通事故やスポーツ中の衝突などによって首が無理にしなることで起こる症状群を指します。首が痛くて回らなくなるほか、頭痛やめまい、倦怠感などの不定愁訴(ふていしゅうそ)を伴うこともあります。
むち打ちははっきりとした診断がしづらいため、交通事故処理のような正確な診断を要する手続きにおいては少し厄介なケガでもあります。慰謝料を提示されたときは、金額が妥当かどうか見極めることが大事です。
むち打ちに関係する慰謝料とは
慰謝料とは交通事故によって受けた悲しみや恐怖などの精神的損害を償うための賠償金です。入通院慰謝料・後遺症慰謝料・死亡慰謝料があります。
むち打ちに関係する慰謝料は3つのうち、入通院慰謝料と後遺症慰謝料になります。慰謝料の算定はそれぞれの保険会社や判例の基準に従って行います。
むち打ちの入通院慰謝料とは
入通院慰謝料とは、交通事故で負ったケガの治療や通院に対する慰謝料のことです。算定基準によって金額に違いがあります。
算定基準には以下の3つがあります。
入通院慰謝料の自賠責基準
自賠責基準は自賠責保険で損害額を算定する際に、損害保険料率算出機構が使用する基準です。4,200円を一日の上限として、次のうちどちらか少ない方と掛け合わせます。
ただし、2020/04/01以降の事故の場合は日額4,300円が上限です。以下の計算例では4,300円を使用します。
- 治療期間(入院期間+通院期間)
- 通院日数×2
(例1)入院が10日間、通院期間が80日間でそのうち40日通院した場合
10日+80日 > 40日×2
となるため40日×2の方を上限にかけ合わせ
4,300円×80日=344,000円が慰謝料となります
(例2)入院が10日間、通院期間が80日間でそのうち50日通院した場合
10日+80日 < 50日×2
となりますので、90日の方を採り
4,300円×90日=387,000円が慰謝料となります
ただし、1か月の上限は126,000円となっていますので、単純に日数が増えれば、慰謝料が増えるわけではない点に留意してください。
入通院慰謝料の任意保険会社基準
任意保険会社基準は任意保険での損害額算定基準です。各保険会社が個別の支払い基準を設けていますが、会社間の差はほとんどありません。
入通院慰謝料の弁護士基準(裁判基準)
弁護士基準は過去の判例を基に損害額の定型化、定額化を図った基準です。日弁連交通事故相談センター編による交通事故損害額算定基準は全国的に使用されています。
(例1) 他覚症状のないむち打ちの場合、3か月間で20回通院した場合の慰謝料は36万円となります。
(例2) 他覚症状があるむち打ちで1か月入院し、3か月通院した場合は115万円です。
むち打ちの後遺障害慰謝料とは
後遺障害とはケガが完治せず、症状固定となった後に医師により診断を受け、保険会社から等級認定された状態のことを言います。
後遺障害慰謝料は後遺障害の等級に則して支払われます。入通院慰謝料と同じく自賠責保険・任意保険・裁判所ごとに基準が設けられています。
むち打ちの後遺障害等級
むち打ちは後遺障害の中でも比較的症状が軽いものとされています。そのため、通常は14級か12級に認定されることがほとんどです。
等級 | 後遺障害 |
---|---|
第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
むち打ちの後遺障害は神経症状とみなされる
第14級9号も第12級13号も、神経症状が見られる場合に認定されます。その違いは第12級13号には頑固な神経症状があることです。
12級13号に認定されるには医学的な診断や検査で神経症状が検知されなくてはいけません。ジャクソンテストやスパーリングテストなどの検査によって、首を動かしたときの手のしびれの有無を診ます。
むち打ちの後遺障害に対する慰謝料比較
むち打ちの後遺症慰謝料における自賠責基準と弁護士基準を比較すると、弁護士基準の金額は自賠責基準の3倍以上になっていることがわかります。この差は、事故の被害が大きいほど大きくなります。そこで慰謝料増額のカギは等級を上げることだと思われる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、後遺障害の等級認定はしっかりとした医師の診断を基に行われるものですので、上げようとして上がるものではありません。
むち打ちの慰謝料増額を目指すのであれば、弁護士に依頼をして弁護士基準(裁判基準)で示談交渉に望む方が実現の可能性が高いでしょう。
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
第12級 | 93万円 2020/04/01以降の事故は94万円 |
290万円 |
第14級 | 32万円 | 110万円 |
※ここでは自賠責基準と弁護士基準を比べていますが、入通院慰謝料と同じく、実際にはこの中間くらいの金額にあたる任意保険基準もあります。

自賠責基準と弁護士基準の慰謝料を比較するとこんなに金額差があるんです。どちらが得なのかは一目瞭然ですよね!
妥当な慰謝料を受け取るには弁護士に任せることが適切な対応です
むち打ちは自分では様々な不調を感じていても、他覚症状がない場合が多いケガです。後遺障害となっても、他の症状と比べて軽症とみなされがちです。
そのため、示談交渉で相手の提示金額に安易に同意してしまう人も多くいます。しかし、被害者には事故で負ったケガの精神的な苦痛に対して、しっかりと妥当な慰謝料を加害者側から受け取る権利があります。
法的に妥当な慰謝料を受け取るためには、ご自分一人で戦うよりも弁護士にご相談されることをお薦めします。弁護士であれば、裁判基準の慰謝料の支払いを相手の保険会社に交渉することができます。
提示された慰謝料の金額を増額させられる可能性がありますので、示談を受け入れる前に一度相談してみましょう。