交通事故の「実況見分調書」とは?作成時の注意点と取り寄せ方をわかりやすく解説

交通事故の現場検証

交通事故の状況や証拠を警察がまとめた「実況見分調書」は、保険会社が過失割合の決定を行う際の重要な証拠のひとつとなります。

もし、誤った内容の実況見分調書が作成されてしまうと、交通事故の被害者は過失割合や損害賠償で大きく損をしまいます。被害者がそのような事態に陥らないためにも、実況見分調書について理解することはとても重要です。

この記事では、
・交通事故の実況見分調書の基礎知識
・実況見分調書の重要性
・実況見分調書作成時の注意点
・実況見分調書の取り寄せ方

以上4点を重点的にわかりやすく解説しています。実況見分調書について疑問やお悩みを持たれている方の参考になれば幸いです。

交通事故の「実況見分調書」とは

交通事故の「実況見分調書」とは、警察が交通事故の加害者、被害者、目撃者といった交通事故に関わった人物の「実況見分」の結果を書面にしたものです。

「実況見分」とは、人身事故が発生した場合に警察が行う現場検証のことを指します。交通事故の現場で警察官が道路に白線でマークをしていたり、メジャーで測定を行っている様子を目にすることがありますが、あの作業が、実況見分や現場検証です。

実況見分では、「ここで信号が赤になったのを見た。」「ここで相手の自動車が飛び出してきた。」「ここで相手と衝突した。」といったことを、立会人が警察官に説明をします。そして、警察官は、立会人の証言を聞きながら現場の図面を作り、衝突現場などの証拠を記載します。

実況見分は基本的に事故に関わった加害者と被害者を立会人として進めることが通常ですが、交通事故の内容、例えば被害者が死亡した場合や被害者が重症を負い実況見分が行えない場合などは、加害者の証言のみで実況見分書が作成される場合もあるのです。

また、補足ではありますが、よく「納得のいかない実況見分調書にはサインをしてはいけない。」との説明がなされることがありますが、それは誤りです。作成された実況見分書には、作成した「警察官」が署名押印を行い、立会人が署名押印をすることはありませんので覚えておきましょう。

実況見分調書に記載されている内容

実況見分調書には、主に以下のような内容が記載されます。中でも、「立会人の指示説明」は被害者と加害者で意見が食い違いこともあるので、できるだけ記憶に基づいた正確な証言を行うことが重要です。

・実況見分の日時、場所、立会人名といった基本情報
・現場道路の状況(路面のコンディションや当時の交通規制情報など)
・運転車両の状況(車両番号、損害部位、程度など)
・立会人の指示説明(最初に相手を発見した地点、ブレーキを踏んだ地点、衝突した地点など)
・交通事故現場の見取り図や写真

「実況見分調書」と「供述調書」の違い

実況見分調書と似た証拠書類に、「供述調書」というものがあります。実況見分調書と供述書類は、混同されて理解されてしまう方が多いため、それぞれを分けて考える必要があります。実況見分調書とは、先述したとおり、事故の状況や証拠を立会人の証言をもとに警察官が書き起こした書類です。

一方で、「供述調書」とは、立会人のみならず、交通事故の加害者、被害者、目撃者、関係者などの供述内容がまとめられた書類のことです。実況見分調書とは異なり、各関係者ごとに作成されます。供述調書は、警察官や検察官の取り調べをもとに作成されます。警察官は関係者に質問をし、その回答を警察官がまとめていきます。

供述調書は、現場に立ち会い作成を行う実況見分調書とは異なり、基本的には警察署または検察庁にて作成されます。よく、刑事ドラマなどで警察官2人に対して関係者が証言しているシーンが見られますが、それを想像してもらえるとわかりやすいでしょう。

出来上がった供述調書には、最後に署名押印をする必要があります。ただし、署名押印は、自分の証言が正しいものと同意することですので、よく読み誤っているところは訂正して貰う必要があります。なぜなら、一度署名押印した内容を後で訂正することは不可能であるからです。

供述調書は、実況見分調書と同じく示談交渉や民事訴訟における重要な証拠のひとつとなります。そのため、証言をする際には「正確に記憶どおりに証言する」「誘導に尋問にのらない」「納得のいかない場合は署名押印をしない」といった点に注意しましょう。

実況見分調書はなぜ重要なのか

さて、実況見分調書についての基本情報を説明してきましたが、なぜそれほどまでに実況見分調書が交通事故の被害者にとって重要となるのでしょうか。

それは、実況見分調書が損害賠償請求を行う際に重要な「過失割合」の決定に大きな影響をあたえるためです。実況見分調書が過失割合に与える影響について解説します。

実況見分調書は過失割合に影響をあたえる

実況見分調書は、「過失割合」に大きな影響をあたえる重要な要素のひとつです。過失割合とは、事故の責任を加害者と被害者にどの程度あったのかを表す数値であり、通常は「加害者90:被害者10」のように表します。そして、過失割合は加害者側の自動車保険会社が「実況見分調書」をもとに決定するのです。

実況見分調書には、先述したように「事故発生時の状況」や「立会人の供述内容」といった、過失割合を決定するための重要な要素が記載されています。もし、納得のいかない過失割合を保険会社に提示された場合、被害者が実況見分調書を持っていれば、それを交渉材料として用いることが可能となります。

そのため、実況見分調書は被害者にとって重要な書類となるのです。

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実況見分調書作成時の注意点

実況見分調書は、警察が作成したあとに、被害者が手を加え訂正を行えるものではありません。そのため、被害者は実況見分調書を警察官が作成している際に、誤った内容を記載されないよう、発言には注意を払う必要があります。

実況見分調書作成時の注意点を、「被害者が実況見分に立ち会える場合」と、「立ち会えない場合」にわけて解説します。

実況見分に立ち会える場合

被害者がひどい怪我を負っておらず、加害者と一緒に実況見分に立ち会える場合には、被害者は実況見分に立ち会うようにしてください。なぜなら、加害者の立ち会いのみで実況見分が行われると、被害者に不利な証言が行われる可能性があるためです。
また、立ち会う際には、できるだけ正しい記憶に基づいて、正確に警察官に説明をしてください。

もし、被害者の説明が二転三転し、さらに加害者に全ての責任をなすりつけるような信憑性に欠ける発言をしてしまえば、正しい実況見分調書が作成されなくなってしまうからです。

実況見分に立ち会えない場合

もし、事故によって重度の怪我を負い、病院に搬送された場合には、実況見分は被害者抜きで行われることになります。「被害者の回復を待ってくれてもいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、事故後時間が経過すればするほど、事故の証拠が発見しづらくなってしまうためです。

もし、実況見分に立ち会えなかった場合は、後に作成する供述調書にしっかりと自分の言い分とその時の状況を伝えるようにしましょう。供述調書は、署名押印前に確認し、訂正することが可能なため、自分の証言と食い違いがあるところは指摘し訂正してもらうようにしましょう。

実況見分調書取り寄せの流れ

実況見分調書は、必要に応じて被害者が取り寄せることが可能です。ただし、そのためには正当な手続きを踏む必要があります。実況見分が終わったあとに、「その場でコピーが欲しい」と現場の警察官に申し出ても、もらうことはできません。

ここでは、実況見分調書を取り寄せる際の「注意点」「時期」「方法」を解説します。

取り寄せる際の注意点

実況見分調書を取り寄せる前に、ひとつ気をつけなければならない点があります。それは、実況見分調書は取り寄せ請求を行う時期によって、請求が認められない場合があるという点です。

その理由は、実況見分調書はあくまで「刑事事件の証拠書類」であるからです。そもそも、実況見分調書は、警察が交通事故の加害者を刑事事件として裁くための証拠として作る書類です。

そのため、刑事事件の証拠である実況見分調書は、本来は民事事件では利用できないのです。しかし、それでは警察が集めた証拠を一切民事利用できないということになってしまい、弁護士や被害者が1から証拠を集める必要があり、被害者保護の観点に欠けます。

そこで、一定の条件を設けることで、刑事事件の証拠を民事利用のために提供してもらうことが許されているのです。したがって、まだ警察が捜査段階にある場合などは実況見分調書の請求ができませんので、取り寄せの時期には気をつける必要があります。

実況見分書を取り寄せられる時期

実況見分調書は、「捜査段階」「不起訴処分後」「公判段階」「判決確定後」の4つの時期によって、取り寄せの可否が異なります。

このなかで、被害者は「捜査段階」の時点のみ、実況見分調書を取り寄せることができません。なぜなら、刑事事件の捜査段階の時点において、証拠を外部に流すことは認められないためです。

以下は、実況見分調書の取り寄せの可否をわかりやすくまとめた表になりますので、参考にしてください。

時期
取り寄せの可否
1.捜査段階
非公開のため、取り寄せはできない(刑事訴訟法47条)。

2.不起訴処分後
実況見分調書の開示請求が可能。

3.公判段階
実況見分調書の開示請求が可能。

4.判決確定後
実況見分調書の請求が可能(刑事訴訟法53条)。

実況見分調書の取り寄せ方

実況見分調書は、「不起訴処分後」「公判段階」「判決確定後」の3つの時期によって、取り寄せる方法が異なります。

以下は、それぞれの時期によって異なる取り寄せ方をわかりやすくまとめた表になりますので、参考にしてください。

時期
請求方法
1.不起訴処分後
不起訴処分後時点では、被害者は以下の3つの方法を用いて開示請求が可能です。
①弁護士法23条照会による方法
②被害者本人が検察庁へ行く
(検察庁への事前連絡と身分証明書・交通事故証明書が必要)
③代理人弁護士または事務員が取り寄せる
(不起訴記録閲覧・謄写申請書、委任状、交通事故証明書を検察庁へ持参が必要)

2.公判段階
公判段階時点では、「被害者」「遺族」「代理人弁護士」が裁判所に対して閲覧謄写請求を行うことで取り寄せることが可能です。

3.判決確定後
判決確定後の時点では、検察庁に対して以下の2つの方法を用いることで取り寄せることが可能です(刑事訴訟法53条)。
①被害者本人が検察庁へ行く
(検察庁への事前連絡と身分証明書・交通事故証明書が必要)
②代理人弁護士または事務員が取り寄せる
(不起訴記録閲覧・謄写申請書、委任状、交通事故証明書を検察庁へ持参)

実況見分調書は保管期限があるため要注意

実況見分調書や供述調書といった刑事記録には「保管期限」があります。保管期限が過ぎてしまった刑事書類は破棄されてしまいます。保管期限は、加害者が起訴された場合は、おおむね3年から5年、不起訴の場合は早い場合1年で破棄されてしまいます。
そのため、実況見分調書を必要とする場合には速やかに本人もしくは代理人弁護士に依頼して取り寄せることをおすすめします。

まとめ

実況見分調書は、保険会社と過失割合を交渉する場合においての重要な書類です。被害者としては、交渉材料として入手しておきたい書類のひとつです。

ただし、先述したように実況見分調書の取り寄せは複雑な手続きが多く、時間も労力もかかってしまうため、被害者本人が取り寄せるよりも弁護士に依頼して取り寄せてもらうことをお勧めします。

弁護士に依頼することによって、「複雑な請求手続きの代行」「実況見分調書の読み方」「保険会社との代理交渉を依頼」といったサポートを受けることが可能です。

また、気づかないうちに実況見分調書の保管期限が過ぎてしまい破棄されていた、といった事態を避けるためにも、早めに交通事故に強い弁護士に依頼すると良いでしょう。

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