車間詰めすぎ運転は罰金?車間距離保持義務違反の罰則内容とは

車間詰めすぎ運転は罰金?車間距離保持義務違反の罰則内容とは

このところ、日本各地で続発する悪質なあおり運転が、大きな社会問題になっています。

これだけ問題視されていても、実はあおり運転自体を取り締まる規定はまだなく、警察では、既存の法令を駆使してあおり運転を取り締まっています。

その一つが、「車間距離保持義務違反」です。車間を極端に近づけるあおり運転の典型的な行為で、あおり運転をしたドライバーの多くが車間距離保持義務違反で検挙されています。

ここでは、車間距離保持義務違反とは具体的にどのような行為で検挙されるのか、その罰則はどんなんものか、などについて解説します。

車間距離保持義務違反とは

前の車が急停車した場合でも、後続車が追突を避けられるだけの車間を空けることを義務付けた「車間距離の保持」に関する規定があります。それが車間距離保持義務です。

道路交通法(車間距離の保持)
第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。

2017年の東名高速道路でのあおり運転による死亡事故を受け、警視庁が車間距離保持義務への取締りを強化したことから、2017年~2018年にかけて車間距離不保持による摘発件数が急増しています。

特に、より重大な事故へ発展する恐れのある高速道路での摘発件数は、2017年の 6,139件から倍増し、2018年では1万1,793件にのぼっています。

一般道の反則金と減点とは

道路種別 通常違反点数 反則金
大型 普通 二輪 原付
一般道路 1点 7,000円 6,000円 6,000円 5,000円

一般道路において車間距離不保持をすると、上記のような減点と反則金の対象になります。

反則金を払うのを拒んだり、特に悪質な行為だったりした場合は、法定刑の対象となり「5万円以下の罰金(道路交通法第120条1項二号)」が科せられます。

罰則自体はそれほど重くないようにも感じますが、車間距離保持義務違反は、危険運転の一つです。これが引き金となり大きな事故を起こし、相手にケガをさせたり、死亡させたりした場合、危険運転致死傷罪の対象になります。

危険運転致死傷罪であれば、最長で20年以下の懲役、免許取り消しなどの重い処分を受ける可能性もあります。

高速道路の反則金と減点とは

道路種別 通常違反点数 反則金
大型 普通 二輪 原付
高速道路 2点 12,000円 9,000円 7,000円 走行不可

高速道路において車間不保持をすると、上記のような減点と反則金の対象となります。

一般道と同じく、反則金を払うのを拒んだり、特に悪質な行為だったりした場合は、法定刑の対象となり「3ヶ月以下の懲役、または5万円以下の罰金(道路交通法第119条1項一号の四)」が科せられます。

警察によるあおり運転の取締りが強化されて以降、あおり運転の影響が特に重篤な高速道路では、各都道府県の警察のヘリコプターが、上空から車間距離不保持などの違反を確認しています。違反を発見次第、高速隊のパトカーと連携することで、現行犯を迅速に検挙しています。

また、ドラレコ(ドライブレコーダー)の普及を受け、映像を提供してもらうことで、その場で検挙できなかった犯人や、言い逃れしようとする悪質なドライバーを、車間距離保持義務違反による罪で、後日逮捕することも可能になっています。

車間距離保持義務違反にならないためには

車間距離保持義務違反にならないためには、むやみに前の車との距離を詰めないことのほか、そもそも適正な距離がどのくらいなのか、目安を知っておくことが欠かせません。

適切な車間距離を知ること

道路交通法では、適正な車間距離は何メートルである、という具体的な規定を設けていませんが、一般的には、
・走行速度が60㎞以下‥‥速度の数値-15m(速度が時速60㎞なら、60-15=45m)
・走行速度が61㎞以上‥‥速度の数値m(速度が時速70㎞なら70m)

が必要だと言われています。

これはあくまでも目安ですので、上記の基準より車間を詰めたら即、車間距離保持義務違反というわけではありません。

また、適切な車間距離を知るために、停止しようと思ってから実際に停止するまでに、どのくらいの距離が必要かを知るのも、よい参考になります。車が停止に必要な距離は「空走距離+制動距離」で求められます。

空走距離

空走距離とは、ブレーキを踏もうと思ってから、実際にブレーキを踏むまでに車が進む距離のことで、「反応時間(秒) × 車速(m/秒)」の計算式で求められます。

個人差はありますが、反応時間は0.75秒~1秒と言われているので、時速40㎞で走っていた場合の空走距離を計算すると、
0.75×(40000÷3600)=8.3333‥‥
約8.3mの空走距離となります。

制動距離

制動距離とは、ブレーキを踏んでから、実際に停まるまでに進む距離のことです。「制動距離=車速(km/h)の2乗÷(254×摩擦係数)」の計算式で求めることができます。摩擦係数は、乾いた路面だと0.7、濡れた路面だと0.5という値が用いられています。

ここでは乾いた路面で、時速40㎞で走行していたことを想定して計算してみると
(40×40)÷(254×0.7)=8.99
制動距離は約9mということがわかります。

上記で求められた数値から、乾いた路面を時速40㎞で走行していた時の停止距離は、空走距離約8.3m+制動距離約9m=17.3mということが分かります。

この計算式は覚えておくと便利なので、ご自分が日頃走行する機会の多い道路での走行速度で調べてみるとよいと思います。時速60㎞以上を出すことも多い幹線やバイパスなどでは、思った以上に停止距離が必要だということが分かります。

事故を未然に防ぎ、車間距離保持義務に違反しないためにも、上述した内容を参考に、広めに車間距離をとることを意識したほうが良いでしょう。

車間距離の2秒ルールを知っておこう

走行中に適正な車間距離を計算することは無理なので、もっと簡単に車間距離の目安を知ることができる「2秒ルール」というものもあります。

これは、前の車が通過したある地点、例えばある電柱を通過した時点をゼロとし、そこから「0(ゼロ)、1(いち)、2(に)」と数えた2のタイミングで、自分の車が電柱を通過できれば、程よい車間距離が保たれているという目安です。

実際に、車間時間を2秒以上取っていると重大な事故は少なく、2秒以内だと重大な事故が多く起こっているというデータもあります。

だからといってむやみに車間をとればいいわけでもなく、4秒以上の車間時間を取ってしまうと、逆に不要な割り込みを招くことになり、違う危険を誘発することに繋がります。車間を詰めすぎず、空け過ぎぎず、適正な車間距離というものを意識する必要があります。

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そもそも適正な車間距離を取らなくてはならない理由とは

車間距離 必要な理由
適正な車間距離を知るための計算方法や目安を紹介しましたが、そもそも、適正な車間距離をとらなければならない理由とは何でしょうか。

運転マナーとして

車は便利で快適なものである一方、使い方を間違えれば簡単に多くの人の命を奪うことができる危険なものでもあります。多くのドライバーがそのことを理解し、ある程度の緊張感を持ち、よい運転マナーで、ルールを守って運転しています。

適正な車間距離を保つことも運転マナーのひとつであり、周囲のドライバーが快適に走行するために欠かせないことです。一方で、一部のマナーの悪いドライバーがいることで、ルールが乱れ、事故を誘発します。

実際の判例で、「少し脅かしてやろう」という軽い気持ちからあおり運転を行ったことで、前の車が他車と衝突し、衝突された車の女性が重体となった事故が起きています。

この事故で、あおり運転をしたドライバーは懲役6年の判決を言い渡されています。自分のマナーの悪さが、重大な事故につながることを意識して運転する必要があります。

ドライバー同士のトラブルを回避する

人と人との間でも快適な距離感「パーソナルスペース」があるように、車同士でも適切な距離感があります。

車同士の距離が近いほど、衝突を始めとした事故のリスクが高まるのはもちろんのこと、互いの存在が気になり、相手の運転の仕方などに対するストレスも生じます。

それによりトラブルが起きる可能性が高まるので、互いを意識しすぎなくてすむ、快適に運転できる距離を保つのが重要です。

2秒ルールや車間距離を参考に、程よいスペースを空けて走行することを心がけましょう。

追突事故のリスクを回避する

警視庁の「平成30年中の交通事故の発生状況」によると、全事故のうち、追突事故の構成率が最も高く全体の34.7%を占めています。

こうした追突事故の主要な原因として挙げられるのは、適正な車間距離の不保持です。交通事故の発生件数を減らすためにも、適正な車間距離を保持することが欠かせないと言えます。

まとめ

危険運転のひとつでもある車間距離保持義務違反は、あおり運転を摘発するために適用されることが多い違反行為です。

現在、警視庁では、あおり運転に対する罰則の重い刑法を適用することを検討しているため、これまで車間距離不保持義務違反として取り締まられていた違反行為が、もっと重い罪として扱われる可能性があります。

あおり運転はもちろん絶対にしてはいけない行為ですし、あおり運転という意識はなくても、車間を極端に詰めることで、前車のドライバーが恐怖を感じること、それにより事故が引き起こされる可能性があることを理解して運転しましょう。

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