最近、高齢者の運転ミスによる交通事故が多発しており、芸能人の運転免許証の自主返納なども話題となりました。
高齢者となった人の運転免許証の自主返納が増えると思われた一方で、「自分はまだまだ大丈夫。」「運転できなくなったらどこにも出かけられなくなる。」と自主返納を渋る高齢者はまだまだとても多く、そんな高齢者のいる家族にとっては悩めるところです。
家族としては免許更新のタイミングで自主返納をして欲しいと思っている人も少なくないのではないでしょうか。
70歳以上の人が該当となる「高齢者の免許更新」は、2017年3月に改正された道路交通法により、
・運転を行うための適正があるのかの診断
・高齢者独自の講習を受けること
以上の2点を行わなければ免許の更新を行うことができなくなり、免許更新までの期間も70歳以下の人とは違い3年~5年の周期での更新となりました。
高齢者独自の講習とはどのようなものなのかを理解している人は意外と少ないようです。そこで今回は、高齢者の免許更新制度についてわかりやすく説明していきたいと思います。
高齢者の免許更新は毎年?免許更新の頻度は?
高齢者の免許更新は、毎年ではありません。
・70歳以下の場合は、有効期間が5年
・71歳の場合は、有効期間が4年
・72歳以上の場合は、有効期間が3年
というように、3つの段階に分かれています。
この運転免許証の有効期限は、交通違反や事故のないゴールド免許の方も共通しています。ただし、交通違反や事故を起こしてゴールド免許ではない場合は、年齢にかかわらず有効期間は3年です。
免許更新までの有効期間は、更新年の生年月日の前後1ヶ月と70歳以下の期間と変わりません。
高齢者の免許更新はどうやって行う?
運転免許の更新期限までに、年齢に応じた必要な講習を受講しなくてはなりません。
・70歳以上の場合 高齢者専用の特別講習を受講
・75歳以上の場合 認知症機能検査を受け、その診断結果に基づいて必要な講習を受講
講習を受講する場合、事前予約が必要で75歳以上の「認知症機能検査」によっては時間が必要となるため、運転免許の更新期限の半年前には、必要な検査や講習についての「お知らせ」が送付されます。
70歳以上の高齢者の運転免許更新の「お知らせ」が届いたら、そこに記載されている方法で早めに講習の受講などを行うようにしましょう。
高齢者専用の特別講習とは?
70歳以上からの免許更新は、加齢による身体機能の衰えや、その衰えが自動車運転にどのように影響を及ぼしてしまうのかなどを正しく認識することを目的として高齢者対象の特別講習を行います。
特別講習には、
・高齢者講習
・シニア運転者講習
・チャレンジ講習&特定任意運転者講習(簡易講習)
と種類があり、そのいずれかを受講しなければ免許更新を行うことはできません。
70歳以上なら必須の高齢者講習
70歳以上の人が免許更新で必ず受けなければならないのが高齢者講習です。この高齢者講習が、高齢者の免許更新の基本となっています。
講習で行われること
・座学:講習開始の約30分で、通常免許更新の際に行われている「道路交通法の改正点」や「最近の交通事故の状況」などを学習します。
・検査:検査では、一般の免許更新でも行われる視力検査にプラスして全部で3種類の検査が行われます。
・実技:実際に自動車を運転して運転状況の判定が行われます。
3種類行われる視力検査の内容は?
通常の運転免許更新で行われる視力検査は、ごく一般的な視力検査ですが、高齢者講習で行う視力検査は以下の3種類が行われます。
・動体視力検査:動いているものを見る時の視力を計測する。
・視野角度の範囲の計測:動かず正面を見た時に左右どこまで見ることができるか。
・夜間視力検査:夕暮れ時や夜間の時間帯にどのくらい見えているのかという。
実技講習の内容は?
約60分という時間を使って自動車教習所のコースで行われます。運転する車は、「オートマ車」か「マニュアル車」の好きな方を選ぶことができます。
・必要な場所で正しく停車することができるかを判断する「信号停止」と「一時停止」
・ハンドル操作が正しく行われるかどうかを判断する「Sカーブ」と「クランク」
などを実際に運転します。実技講習の目的は、知らず知らずのうちにしている自分のクセを知ることと、
安全配慮に欠けている部分を把握することで、免許更新後の安全運転に対する意識を高めるために行われます。
必要書類等
高齢者講習を受講するために必要となる書類は、
・運転免許証
・高齢者講習のお知らせ(ハガキ)
・筆記用具
・眼鏡、補聴器等(必要な方)
などが必要となります。高齢者講習のお知らせ(ハガキ)は、運転免許証更新の約5ヶ月〜6ヶ月前に自宅へと届きますので、そのお知らせが届いたら早めに受講するようにしましょう。
受講手数料(2018年4月1日-手数料改定)
高齢者講習の受講料は、5,100円です。75歳以上で、高齢者講習を受講する前の講習予備検査(認知機能検査)で、臨時の高齢者講習が必要となった場合は、3時間の講習となり受講料も7,950円と増額になります。
講習場所
運転免許証の現住所を管轄している都道府県内にある指定自動車教習所などで行われています。
好きな地域で受けることのできるシニア運転者講習
運転免許証の現住所を管轄している都道府県内にある指定自動車教習所以外でも受講することができる講習です。
高齢者講習を免除できるチャレンジ講習&特定任意運転者講習(簡易講習)
70歳を過ぎたけれど、まだ若い頃と同じような身体機能だという場合は、チャレンジ講習&簡易講習で運転免許の更新を行うことができます。
チャレンジ講習&特定任意運転者講習(簡易講習)ではまず、実際に運転を行い合格する必要があり、不合格となってしまった場合は、再挑戦するのか、高齢者講習を受けるかを選択する必要があります。
高齢者講習ではなく、チャレンジ講習&特定任意運転者講習(簡易講習)を受けると、講習費用が少し割安となるので、運転技術や身体能力に自信のある人にはおすすめです。
チャレンジ講習の内容
運転免許教習所にあるコース内で、普通自動車を実際に運転して評価され、70点以上で合格となります。
受講手数料(2018年4月1日-手数料改定)
1回あたり2,650円
講習場所
チャレンジ講習を受講できる場所は、運転免許証の現住所を管轄している都道府県内にある指定自動車教習所などです。ただし、どこの指定自動車教習所でも行われている訳ではないので事前の確認と予約が必要です。
特定任意運転者講習(簡易講習)の内容
約1時間の講習を受けることで通常の高齢者講習を受講したことになり、運転免許証の更新を行うことができるようになります。30分程度の座学と運転適正検査を30分程度行うもので、約1時間という短い講習となります。
受講手数料(2018年4月1日-手数料改定)
受講手数料は、1,800円です。
講習場所
運転免許証の現住所を管轄している都道府県内にある指定自動車教習所などです。
75歳以上の人は、講習予備検査(認知機能検査)が必要
75歳以上の人は、記憶力や判断力の状態に応じて運転に支障がないかの判定を行ったあと、必要となる講習を決めるために、講習予備検査(認知機能検査)を受けることが必須となっています。
認知機能検査とは?その問題は?
75歳以上の人が必ず行わなければいけない「認知機能検査」では、認知症の症状があるかどうかの検査となりますが、どのような問題が出題されるのか気になりますよね。
認知機能検査では、判断力と記憶力がどのような状態なのかを行う検査で、
・時間見当の検査:検査を行う日の年月日と曜日、時間を3分間で行うもので、全正解で15点という点数配分
・手がかり再生の検査:16種類ある絵を記憶したあと、その絵を答えるもので14分間行い、全正解で32点という点数配分。
・時間描写の検査:時計の文字盤を書いて問われた時刻を書き足すもので2分間行い、全正解で7点という点数配分。
以上のような問題が出題されます。
講習予備検査(認知機能検査)で行われるテストの難易度は?
認知症を患っていたり、その兆候がある人にとっては難しい問題に感じますが、そうではない場合は、決して難しい問題ではありませんので難易度は高くありません。
ただし、手がかり再生の検査で全問正解するのは若い人でも難易度が高く、検査方法も最初はヒントなし。正解率に合わせてヒントを出すという風に段階を追って行われます。
認知機能検査では、
・76点以上なら合格
・49点〜75点なら、記憶力や判断力が低くなってきていると判定
・48点以下なら不合格
となります。
不合格だったらどうなる?
48点以下となってしまった場合は、「認知症の可能性を否定できない。」として医師の診断が必要となります。医師が認知症と判断した場合は、免許の更新は許されず、免許停止もしくは、取り消しという措置がとられます。
認知症ではないと判断された場合と、前回と比べて認知機能が低下していると判断された場合は、一般的な高齢者講習だけではなく、臨時の高齢者講習が義務付けられることとなります。
指示された講習をすべて受講しなければ、運転免許の更新を受けることはできません。
臨時の高齢者講習の内容は?
講習予備検査(認知機能検査)の結果が76点未満となり、医師の診断もしくは、臨時適正検査を受けて認知症ではないと判断された場合、個別指導としてさらに60分プラスされることとなります。
実技講習では、運転の様子をドライブレコーダーに録画され、録画されたものを見ながら安全運転するために必要なことを指導されます。
高齢者の免許自主返納について
各都道府県にある警察署では、
・病気などで運転が困難になってしまった人
・安全に運転するのが難しい人
・高齢者で運転の自信がなくなってしまった人
などに対して「運転免許証の返納」を勧めています。
「運転免許証の返納」は、各地域にある警察署や免許センターなどで行われており、返納する場合の手数料などは不要です。
返納時に申請すれば「運転経歴証明書」が交付され、運転免許証と同様に身分証明書として使用することができ、運転免許証のような有効期限もありません。
また自治体によっては、様々な特典や優遇措置を受けることができます。
例えば、
・公共交通機関の料金の割引
・タクシーの割引
・旅行会社での旅行プランの割引
・レジャー施設の割引
・飲食店などの割引
などがあり、思った以上に多くの特典を利用することができます。
まとめ
高齢者の免許更新は、一般の免許更新とは違い時間と手間が思った以上にかかることがわかりました。70歳を過ぎて運転免許証の更新を行う場合は、案内が届いたら早めに高齢者講習を受けることが大切です。
高齢者講習は、これまで当たり前のように車の運転をしてきた人に対して運転免許証の返納を勧めるために行われるものではありません。
高齢者の人が、自分自身の身体能力が今どのような状態なのかを正しく理解できる機会を持つことと、劣ってしまった身体能力に対してどうカバーすれば良いのかを理解し、安全運転を遂行するために行われるものです。
高齢者の運転ミスによる交通事故を防ぐためにも、しっかりと「高齢者講習」を受講して安全運転をもう一度考えるようにしましょう。