この記事でわかること
- 主婦も慰謝料や治療費は通常の金額を請求できる
- 休業損害と逸失利益は特別な計算が必要
- 主婦が交通事故に遭った場合、専門家に依頼するのが得策
- 交通事故の主婦の慰謝料相場が知りたい方
- 主婦は十分な休業損害がもらえるか不安に思っている方
- 主夫は逸失利益がどのような計算になるのか知りたい方
交通事故に遭った場合、損害賠償請求はその後の生活にとって非常に重要です。子育てや家事などに忙しい主婦の方だとなおさらです。
「交通事故に遭ったらどのくらい損害賠償をもらえるのだろうか」「主婦であることが何か影響するのだろうか」と不安に思われている方も多いのではないのでしょうか。
この記事では、主婦(主夫)の交通事故の慰謝料の相場と計算方法、さらには休業損害や逸失利益についても詳しく説明します。
交通事故に遭った主婦(主夫)の方が受け取れる慰謝料相場と計算方法を確認していきましょう!
交通事故の損害賠償の種類とは
交通事故の被害者になった場合、加害者に対して損害賠償を請求することができますが、その内容は複数の種類の損害から構成されています。
交通事故の損害賠償の慰謝料は2種類に分かれていることや、慰謝料と休業損害の違いには要注意です。主婦(主夫)の方は特に休業損害や逸失利益が示談交渉で争点になることが多いのでしっかり確認しましょう。
- 入通院慰謝料(傷害慰謝料)
- 後遺障害慰謝料
- 治療費類
- 休業損害
- 逸失利益
入通院慰謝料(傷害慰謝料)
交通事故に遭って怪我をすると、入院や通院をしなければならなくなりますが、これによる精神的な苦痛を慰謝料として請求することができます。これを入通院慰謝料と言います。
後遺障害慰謝料
交通事故で負った怪我が後遺症になって残ってしまった場合、これによる精神的な苦痛を後遺障害慰謝料として請求することができます。後遺障害は14段階の等級に分類されており、それぞれの等級に応じた慰謝料が支払われます。
治療費類
交通事故で負った怪我の治療のために出費した治療費、入院費、病院までの交通費、看護費、投薬費、その他諸雑費も請求することができます。確実に請求するために、それぞれの出費の際に領収書を発行して保存しておくことが望ましいです。
休業損害
交通事故で怪我を負い、仕事を休まなければならなくなった結果、今までの収入が得られなくなることがあります。仕事を再開するまでの、この失った収入部分は休業損害として請求することができます。
逸失利益
交通事故で負った怪我によって、それ以降仕事をすることができなくなることがあります。この本来得られるはずだった将来の収入を逸失利益といい、損害賠償として請求することができます。逸失利益には、被害者が死亡した場合の死亡逸失利益と、被害者の体に後遺症が残った場合の後遺障害逸失利益があります。
損害賠償額を算定する際の3つの基準
ここまで、交通事故の各損害について見てきましたが、それぞれの損害賠償額を具体的に決定するための判断基準には次の3つあります。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 弁護士・裁判所基準
そして、一般的に請求できる慰謝料の額は、自賠責保険基準<任意保険基準<弁護士・裁判所基準、の順に高額になります。
自賠責保険基準
自賠責保険基準は、自動車の強制加入保険である自賠責保険が設定している損害賠償の基準です。基本的に法令で定められた最低額を支払うための保険なので、支払額は限られています。残りの損害額は、加害者が加入する任意保険から支払われることになります。
任意保険基準
任意保険基準は、ドライバーが任意で加入している保険会社が設定している損害賠償の基準です。基本的には自賠責保険で不足した分を補填するために用いられます。そして、各会社の基準額はまちまちであり、公表もされていないことが多いです。
弁護士・裁判所基準
弁護士・裁判所基準とは、裁判所での過去の判例などに基づいて設定される損害賠償の基準です。基準額は公表されており、弁護士が損害賠償の交渉に介入した場合に適用されます。
弁護士・裁判所基準の1番の特長は、基準となる損害賠償額が他と比べて高額であるということです。なぜ高額なのかというと、裁判所が被害者保護の観点から高めの基準額を設定しているからです。
そして、交渉に弁護士が介入すると、保険会社としては、訴訟を起こされた場合結局弁護士・裁判所基準が適用されるので、弁護士が提示する弁護士基準=裁判所基準を受け入れざるを得なくなります。だから、弁護士との交渉では、保険会社は弁護士・裁判所基準を適用した損害賠償額を支払うことになるのです。
主婦であることによって損害賠償額の計算は不利になるのか?
たとえ主婦であっても、交通事故で負った慰謝料、治療費などは通常通り請求できます。
ただし、休業損害、逸失利益に関しては、その人の職種や収入が計算で考慮されるので、主婦であることによって損害賠償額に影響が出ることがあります。
入通院慰謝料(傷害慰謝料)・後遺障害慰謝料・治療費は主婦でも通常通り請求できる
入通院慰謝料(傷害慰謝料)・後遺障害慰謝料・治療費といった損害は、被害者の職種によって金額が変わるものではありません。ですから、主婦であっても問題なく請求することができます。
入通院慰謝料(障害慰謝料)の計算方法・相場
自賠責保険基準での入通院慰謝料の計算式は次のようになっています。
2020/04/01に入通院慰謝料の基準が日額4,200円から4,300円になりましたので、このページでは新基準で計算します。
入通院慰謝料=(「実治療日数×2」と「治療期間」のうち日数の少ない方)×4300円
実治療日数とは、治療期間のうち、実際の治療は行われずに怪我からの回復のために静養する期間を除いた日数を言います。
例えば、治療期間40日、実治療日数30日である場合、実治療日数×2=60>治療期間=40となるので、入通院慰謝料=40×4300円=17万2千円となります。
一方、弁護士・裁判所基準では、入院月、通院月に応じた慰謝料の目安の金額が規定されており、日本弁護士連合(日弁連)が発行している「赤本」などで確認することができます。すでに述べた通り、弁護士・裁判所基準の方が自賠責保険基準よりも請求可能な金額は多く、平均して約1.5〜2倍の金額になっています。
後遺障害慰謝料の計算方法・相場
後遺障害慰謝料の、各計算基準による慰謝料の金額は次のようになっています。主婦の方もこの表を参考に後遺障害慰謝料を算出することができます。
等級 | 弁護士・裁判所基準 | 任意保険基準(推定) | 自賠責保険基準 |
---|---|---|---|
第1級 | 2800万円 | 1600万円 | 1150万円 (要介護の場合1650万円) |
第2級 | 2370万円 | 1300万円 | 998万円 (要介護の場合1203万円) |
第3級 | 1990万円 | 1100万円 | 861万円 |
第4級 | 1670万円 | 900万円 | 737万円 |
第5級 | 1400万円 | 750万円 | 618万円 |
第6級 | 1180万円 | 600万円 | 512万円 |
第7級 | 1000万円 | 500万円 | 419万円 |
第8級 | 830万円 | 400万円 | 331万円 |
第9級 | 690万円 | 300万円 | 249万円 |
第10級 | 550万円 | 200万円 | 190万円 |
第11級 | 420万円 | 150万円 | 136万円 |
第12級 | 290万円 | 100万円 | 94万円 |
第13級 | 180万円 | 60万円 | 57万円 |
第14級 | 110万円 | 40万円 | 32万円 |
休業損害・逸失利益は主婦でも請求できるのか?
主婦は給料をもらえる職業ではないから休業損害や逸失利益は請求できないのではないかと一見思うかもしれませんが、主婦の方であってもこれらを請求することはできます。
また、男性である主夫であっても、女性である主婦と全く同様に扱われます。
専業主婦の休業損害の計算方法・相場
専業主婦の休業損害の計算式は次のようになっています。
休業損害額=1日あたりの基礎収入×休業日数
自賠責保険基準の場合、1日あたり6100円が基礎収入とされ、任意保険基準でもこれと同様の金額が採用されていることが多いです。
弁護士・裁判所基準の場合、基礎収入は、賃金センサスというそれぞれの年齢層に対応した平均収入額の統計を元に算出されます。賃金センサスに基づく専業主婦の1日あたりの基礎収入は約1万円となっています。
弁護士・裁判所基準 | 任意保険基準 | 自賠責保険基準 | |
---|---|---|---|
主婦の1日あたりの基礎収入 | 約1万円 | およそ6100円 | 6100円 |
兼業主婦の休業損害の計算方法・相場
兼業主婦でも、その家事労働は給与所得を得るに値する経済的価値を有すると考えられるので、休業損害を請求することはできます。そして、その計算方法は基本的に専業主婦の場合と同じです。
そして、兼業主婦は、自分の仕事の休業損害と家事労働の休業損害のうち高額な方を選択して請求することができます。
ただし、兼業主婦の給与所得は一般的に多くはなく、この収入を基準に基礎収入を算出すると専業主婦に比べて非常に低い金額となり、不均衡が生じます。そこで、兼業主婦の1日あたりの基礎収入は一般的に、全ての女性の平均収入額を基準に算出することになっています。この金額は約7000円となっています。
また、兼業主夫の場合も、男性だからといって区別する理由はないので、兼業主婦と同じ基準を用います。
主婦の逸失利益の計算方法・相場
主婦の逸失利益の計算式は次のようになっています。
逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×ライプニッツ係数
基礎収入は、上で述べた休業損害におけるものと同様に算出されます。
労働能力喪失率とは、後遺障害によってどれほど労働能力が低下したのかを示す数値のことで、第1級から第14級までの14等級に分かれており、後遺障害の程度によってどの等級に該当するかが判断されます。
ライプニッツ係数とは、簡単にいうと中間利息控除率のことです。逸失利益として得たお金を銀行預金などで資産運用すると利息が発生するため、この利息額を初めから控除しておくためにこの指数が用いられます。
【参考】:ライプニッツ係数とは?逸失利益の計算方法まで解説! 【計算機付き】
事故に遭った主婦(主夫)の賠償金がわかる便利な計算機です。まずは計算してみませんか!
【計算機】交通事故の賠償金を計算する
主婦が交通事故にあった場合に弁護士基準でどのくらい交通事故賠償金を受け取れるのか計算してみましょう。
{{goukei | comma}}万円
弁護士に依頼した場合、報酬金{{hiyou | comma}}万円を差し引いた{{zankin | comma}}万円が手元に残ります。 弁護士に依頼した場合、報酬金が賠償金より高額なため費用倒れになる可能性があります。 保険会社の提示金額が弁護士基準と同額以上のため、弁護士に依頼しても賠償金を増額できない可能性があります。
賠償金詳細 | |
---|---|
入通院慰謝料 | {{nyuutuuin | comma}}万円 |
後遺障害慰謝料 | {{kouisyou | comma}}万円 |
死亡慰謝料 | {{sibou | comma}}万円 |
休業損害 | {{kyuugyou | comma}}万円 |
逸失利益 | {{issitu | comma}}万円 |
弁護士報酬は以下のように計算しています。
- 保険会社から賠償金額の提示がない場合 獲得した賠償金の10% + 20万円
- 保険会社から賠償金額の提示がある場合 獲得した賠償金と提示された賠償金の差額の20% + 20万円
ただし、訴訟費用などの雑費は含めていません。
まとめ
主婦が交通事故の損害賠償を請求する場合、慰謝料や治療費は一般の働いている人と同じ金額になります。また、休業損害や逸失利益も請求することが可能です。ただし、これらは主婦(主夫)独自の計算方法によって算出されるので、注意が必要です。
そして、実際に損害賠償を請求するにあっては、金額の計算に専門的な知識が必要であったり、保険会社との交渉が素人には難しかったりと、被害者自身が手続きを行うのには限界があります。
ですから、損害賠償請求では弁護士などの専門家に依頼するのがおすすめです。専門家は手続きを的確かつスムーズに行うことができます。また、弁護士・裁判所基準による賠償請求をおこないますので賠償額が多くなるなどメリットは大きくなっています。
まずは交通事故に強い弁護士に相談されることをお勧めします。