高齢者の親が交通事故に遭ったときの慰謝料はどうなるか?

高齢者の親が交通事故に遭ったときの慰謝料はどうなるか?

交通事故の被害者が70歳、80歳、90歳といった高齢者(老人)である場合は、若者と比べ逸失利益や慰謝料が減額されてしまうのかという不安があります。実際に高齢者ご自身の得られる損失利益と慰謝料、また親が事故で死亡してしまった場合、その親族はどれくらいの慰謝料がもらえるのでしょうか。

そこでこの項目では、高齢者の親が交通事故に遭ったときの慰謝料について解説していきます。

高齢者の交通事故は朝晩の歩行中の事故がほとんど

高齢者社会白書の高齢者(老人)による交通事故検収の統計によると、高齢者の事故は、朝晩の歩行中に事故被害に遭うケースが多く、70歳、80歳、90歳だけで交通事故死者数の過半数以上を占めています。

下の図のように、高齢者の歩行中の死亡事故は全体の40%以上、年齢別・歩行中死者数の70%超と、高齢者の歩行中の事故が非常に多いことがわかります。

高齢者の歩行中の事故
【参考】:交通事故総合分析センター
さらに、歩行中に交通事故に遭う被害者を年齢層別、被害程度別にみると、死者は50%以上、重傷者は30%以上と、高齢者の被害状況の程度は非常に大きくなるという特徴があります。

ケガや後遺症も高齢になると治りにくい

高齢者の事故のほとんどが歩行中であることから、けがの程度も酷く、骨折や頭部を損傷し、ひどい時には、脳挫傷や脳内出血、認知症、外傷性くも膜下出血など、高次脳機能障害を発症させてしまうこともあります。

現在では医学技術が進歩しているとは言っても、高齢者は運動能力が衰え、免疫力や抵抗力も低下していますので、ケガも後遺症も治りにくいのが実情です。

このため、ほとんどのケースで入院治療が必要になるのですが、入院治療は半年から1年以上もの長期になることが一般的で、治療費がかなりの高額になってしまいます。さらに、精神的に大きなダメージを受けた場合や認知症などになった高齢者には家族のケアも必要になります。

これに伴い、家族は仕事を休んで病院に出向いたりする必要も出てきますし、認知症になった場合は付添が必要になることもあり、家族にも肉体的・精神的にかなりの負担が強いられます。

高齢者の逸失利益・慰謝料の相場について

事故に遭った高齢者やその家族にとって逸失利益や慰謝料の相場がどうなるのか、老人であることが理由で減額されてしまうのか、また、収入があるのと収入がないのではどう違うのかなどが気になると思います。まずは逸失利益とはどういったものか、どのように計算するのかを解説します。

逸失利益の算定について

逸失利益とは、交通事故によって後遺障害が残ったこと又は死亡したことにより、事故前の仕事ができなくなり収入が減少するために失われる将来の利益のことです。交通事故では、この利益を算出し、損害(慰謝料)として請求することができます。逸失利益は、原則として後遺障害によって喪失した労働能力を基礎に算定します。

逸失利益=基礎となる収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

基本的に、自賠責調査事務所の認定した後遺障害等級と、等級に定められた労働能力喪失率、労働能力喪失期間を基準により算定されます。青い本(交通事故損害額算定基準)と、赤い本(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準)には具体的事案が多数あげられており、弁護士や裁判所でも算定にあたっての参考にされています。

基礎となる収入

原則として事故前の収入を基礎とします。主婦、学生など事故前の収入が認定できない場合は賃金センサスの平均賃金を基礎とします。被害者が中年以上あるいは喪失期間が短期であるときは被害者の年齢に応じた平均賃金を用います。

労働能力喪失率

後遺障害により労働能力の低下した割合を労働能力喪失率と言います。自賠責保険、労災保険では後遺障害等級に分け、それぞれ喪失割合を定めています。基本的に裁判でも喪失率が尊重されていますが、そのまま認めることが不相当な事案では柔軟に喪失率を認定しています。

労働能力喪失率表
障害等級 労働能力喪失率
第1級 100/100
第2級 100/100
第3級 100/100
第4級 92/100
第5級 79/100
第6級 67/100
第7級 56/100
第8級 45/100
第9級 35/100
第10級 27/100
第11級 20/100
第12級 14/100
第13級 9/100
第14級 5/100

労働基準の喪失率は、自賠責施行令別表1及び2に定められた率を用いるのが通例です。捉え方には2つ説があり、一つは事故前と後の収入の差額をもって損害と考える「差額説」もう一つは、身体の後遺障害自体を損害と考える「労働能力喪失説」があります。

差額説によれば、たとえ後遺障害が残ったとしても、事故前と比べて収入が減らなければ逸失利益は認められません。これに対して労働能力喪失説では、後遺障害自体が損害であることから事故前と比べ実際に収入が減らなくても逸失利益が認められます。

労働能力喪失期間

労働能力喪失期間は、後遺障害によっては一定の期間の経過により機能が回復する可能性があるため、障害の部位、程度、年齢、馴化、仕事の内容などの具体的状況により喪失期間を限定することがあります。ただし、原則的に就労可能年齢とされる67歳までを期間とします。

ライプニッツ係数

逸失利益を現在の価値に引き直すためライプニッツ係数を乗じます。ライプニッツ係数は現価値に引き直すために複利により計算する方法です。率については実務では裁判も含め5%のライプニッツ係数を使用しています。

67歳以上は逸失利益が請求できないの?

ここでポイントになるのは、就労可能年数とされる67歳以上という点です。67歳を超えると逸失利益が請求できないのか、又は大きく減額されるのかというとそうではありません。

67歳を超える場合は、平均余命年齢の半分の係数を適応することになります。男性を例として、70歳の場合は平均余命16年の半分の8年、80歳の場合は平均余命9年の半分の5年(過半数切り上げ)、90歳の場合は平均余命4年の半分の2年が、就労可能年数とされます。

収入がない場合の逸失利益の相場は?

高齢者で収入がない、つまり「無職」の場合は「基礎となる収入」がないことになります。しかし、実際に仕事をしていない無職の主婦の場合でも逸失利益が認めらます。無職の場合は、原則として政府が発行する「賃金センサス」の産業計、企業規模計、学歴計の男女別労働者全年齢平均の賃金で該当する年齢の平均賃金を基礎となる収入とします。

逸失利益は、原則として事故前年度の年収額を基礎収入として算出しますが、収入がある場合だけではなく、収入がない無職の場合でも逸失利益を得ることは可能です。ただし、重要なのは「就労の蓋然性」です。就労の蓋然性とは、労働能力及び労働意欲があることを意味します。就労の蓋然性がない場合は基礎収入がゼロということになります。

就労可能年数は67歳までと定められていますが、80歳の被害者に脳挫傷等の後遺障害が認定され、就労の蓋然性があるとして年間240万円の給与収入の50%が就労対価にあたると認められた裁判事例があります。つまり、67歳を超える高齢者は、逸失利益の請求において就労の蓋然性を立証できるか否かが争点となります。

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逸失利益以外に慰謝料(損害)として認められる項目

次に、逸失利益以外にも慰謝料(損害)として認められるものには、次のようなものがあります。

介護費

後遺障害が極めて重く、寝たきりの状態になるなどの場合には、将来にわたって介護を必要とします。一般的に余命年数の期間に応じて介護費を算定しますが、介護費ついては5%のライプニッツ係数により現在の価格に引き直すことになります。

将来の治療費

症状固定後の治療費は損害として認めないのが原則ですが、症状固定後も治療を要する場合には、将来の治療費も損害として認められることもあります。

装具・器具等購入費

将来の装具・器具等の購入に要する費用です。例えば車椅子や義足などの器具を必要とする場合に、購入代金が損害となります。また、交換が必要なものに関しては、介護費と同様に5%のライプニッツ係数を乗じ、現在の価値に引き直します。

後遺障害に伴う家屋改造費

後遺障害によっては家屋の改造等を必要とする場合があります。例えば、車椅子での生活を余儀なくされる場合に玄関等の段差の解消、浴室、トイレ等の改造が必要になるなど、これらの費用を損害として認められます。

高齢者の逸失利益・慰謝料相場について

高齢者の逸失利益は、年間収入額又は年相当額に該当等級の労働能力喪失率と後遺障害確定時の年齢における就労可能年数のライプニッツ係数を乗じて算出した額となります。

逸失利益に関しては、被害者の収入額等の事案によってケースバイケースです。ただし、一定の基準はありますので、下記を基に逸失利益を算定することができます。

有職者

事故前1年間の収入額と後遺障害確定時の年齢に対する年齢別平均給与額の年相当額のいずれか高い額を収入額とする

・事故前1年間の収入額を証明することが困難な者
年齢別平均給与額の年相当額

・退職後1年を経過していない失業者(定年退職者等を除く)
退職前1年間の収入額を事故前1年間の収入額とする

・家事従事者
58歳以上の者で年齢別平均給与額が全年齢平均給与額を下回る場合は、年齢別平均給与額の年齢別平均給与額の年相当額とする

・その他働く意思と能力を有する者(無職者)
年齢別平均給与額の年相当額とする。ただし、全年齢平均給与額の年相当額を上限とする

慰謝料等

後遺障害に対する慰謝料等の額は、該当等級ごとに金額が定められています。

自動車損害賠償保障法施行令別表第1

介護を要する後遺障害
等級 慰謝料
(2020/03/31以前の事故)
慰謝料
(2020/04/01以降の事故)
第1級 1,600万円 1,650万円
第2級 1,163万円 1,203万円

自動車損害賠償保障法施行令別表第2

介護を要しない後遺障害
障害等級 慰謝料
(2020/03/31以前の事故)
慰謝料
(2020/04/01以降の事故)
第1級 1,100万円 1,150万円
第2級 958万円 998万円
第3級 829万円 861万円
第4級 712万円 737万円
第5級 599万円 618万円
第6級 498万円 512万円
第7級 409万円 419万円
第8級 324万円 331万円
第9級 245万円 249万円
第10級 187万円 190万円
第11級 135万円 136万円
第12級 93万円 94万円
第13級 57万円 57万円
第14級 32万円 32万円

高齢者の死亡事故の相場と慰謝料請求権

死亡事故の損害は、一般的にその親族に被害者請求権があります。死亡慰謝料として死亡までの損害と死亡に関する障害があります。死亡に関する障害は、「葬儀費用」「死亡慰謝料」「逸失利益」があり、死亡慰謝料、逸失利益は損害額の多くを占めます。

葬儀費用としては、60万円又はこれを超えることが明らかな場合は、100万円の範囲内で必要かつ妥当な実費が認められます。

死亡慰謝料の慰謝料請求権については、死亡した本人の精神的苦痛に対する損害賠償(民法第710条)とその父母、配偶者、子の近親者等の親族の精神的苦痛に対する慰謝料があります。死亡した被害者の近親者については、被害者の父母、配偶者及び子に対して(民法第711条)と規定していますが、慰謝料請求権は必ずしもこれに限定されるわけではなく、被害者と長年同居し生活してきた被害者の妹、内縁の配偶者、兄、妹等にも慰謝料請求権が認められた裁判例があります。

高齢者の事故で保険会社との慰謝料交渉で争点になるポイント

後遺障害の認定は、第三者機関である自賠責調査事務所(損害保険料率算出機構)が書類審査で判断します。また、国が設けた自賠責保険は損害を最低限保証する保険ですが、任意保険会社はまず自賠責保険に認定申請し、自賠責保険にまかなえない損害を填補する保険です。

このため、高齢者(老人)が負傷したケースで保険会社と交渉する際に争点になるポイントは自賠責保険で補えない逸失利益・慰謝料の全てです。あくまでも保険会社は被害者の味方ではないということを覚えておかなくてはいけません。被害者に支払う保険金を如何に減額するのかを最大の使命としています。

交通事故に強い弁護士なら高齢者の慰謝料請求を増額に導くことができる!

無職など、事故に遭った高齢者(老人)が実際に減収がない場合は、保険会社は逸失利益を認めないことが通例です。逸失利益を勝ち取るためには弁護士に依頼して、保険会社と交渉する又は訴訟によって裁判所に認めさせる必要があります。

慰謝料の基準には「自賠責保険基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判所基準)」の3つがあり、自賠責保険基準と任意保険基準ではそこまでの差はありませんが、これらに比べて弁護士基準は約3倍も高くなります。実際に裁判を提起して保険会社が提示する慰謝料の4倍以上を獲得できた事例も多々あります。

損害賠償額がかなりの高額になるケースが多い高齢者(老人)の事故では、保険会社との交渉が極めて困難になります。交通事故に関する法令や専門知識、解決実績を有す弁護士に依頼することで、予想を大きく上回る賠償額を獲得できた事例は数多くあります。ただし、気になるのは弁護士への依頼費用ではないでしょうか。実際は交通事故で弁護士への依頼費用を心配する必要はありません。

ご自身又はご家族に弁護士特約に加入している方がいれば、弁護士に依頼する費用を保険会社が支払うことになりますので、弁護士費用を気にする必要はありません。弁護士特約は保険加入の7割以上の方が加入していますので、一度確認してみることをお勧めします。

もしも弁護士特約に加入していなくても、相談料、着手金無料の成功報酬型の交通事故に強い弁護士なら依頼して安心です。費用倒れにならないように得られる慰謝料や解決までの見通しについて説明を受けることができます。まずは、交通事故に強い弁護士に相談してみることをお勧めします。

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