この記事でわかること
- 交通事故で打撲を負った際に気を付けるべきことがわかる
- 交通事故で打撲を負った場合の慰謝料の相場がわかる
- 打撲の場合、保険会社は1ヶ月ほどで治療費打ち切りを通告してくる
- 適切な慰謝料を受け取るための治療の注意点がわかる
交通事故では、体の一部を打ってしまう「打撲」のケガは非常に多くなっています。ほとんどの打撲は時間が経てばよくなりますが、中には長期間痛みが続いたり、「後遺症(後遺障害)」が残るケースもあります。
打撲のような軽症で慰謝料はもらえるのか不安に思っている方もいらっしゃるかもしれません。結論から言うと、打撲でも治療費や慰謝料を貰うことができます。
しかし、単なる打撲だからと症状を甘く見てしまう被害者の方がいます。また、保険会社も打撲を軽く考えて処理しようとします。そのため事故後の対応がおろそかになり、十分な慰謝料を貰えないケースもあります。
この記事では、交通事故で「打撲」を負った際に気を付けること、打撲の慰謝料の相場、治療の際に気を付けるべきことについて解説しています。
症状が打撲だけだからと治療を怠ってはいけません。まずは打撲の治療や事故後の対応に必要なことをチェックしていきましょう!
交通事故で「打撲」を負った際に事故後の対応で気を付けること
打撲は、外部から身体に強い衝撃が加わることで起こるケガで、「打ち身」とも呼ばれています。痣(あざ)などができることはありますが、傷口を伴わないことが特徴です。
被害者の方は外傷がほとんど無い軽症の場合、治療や通院を怠るケースが多く見られます。慰謝料請求を考えたときに、事故後の対応には気を付けなくてはなりません。
打撲を甘く見てはいけない|治療に4ヶ月以上かかるケースもある
打撲をした部分は、外からはたいしたケガではないように見えることがほとんどです。しかし、実際には皮下組織や筋肉がダメージを受けています。
関節や筋肉、神経の損傷がひどければ、「1ヵ月以上」痛みや腫れが続くでしょう。また、後から痛みが出てきて「むち打ち」だったということもよくあるケースです。そうなると、治療に「数か月以上」かかることも珍しくありません。事故後はできるだけ早く整形外科で検査・治療を受けましょう。
打撲が合併症を引き起こすことがある
打撲の後遺症の中でも、特に注意が必要なのは「合併症」です。打撲による損傷が、他の症状を引き起こす可能性があるのです。
- 肝臓損傷:腹部打撲により腹腔内出血を起こす危険が高い
- コンパート症候群:打撲によって筋肉組織が炎症を起こし、神経麻痺などを引き起こす
- 外傷性骨化性筋炎:打撲が原因で筋組織が「骨化」してしまう状態
これらの合併症は、交通事故による「強い打撲」によって発生する可能性が高くなっています。打撲部分やその周辺に違和感がある場合には、必ず「精密検査」を受けてみてください。
打撲でも神経系統に後遺症が残るケースがある
打撲は目立った外傷がないため、「すぐに治るだろう」と考えてしまう人は少なくありません。しかし、顔面などを打撲した場合には、神経系統の障害が残るケースは多々あります。
また、損傷が筋肉や神経にまで及ぶ場合には、治療を続けても痛みやしびれがとれないことは珍しくないのです。このような場合では、後遺障害等級を認定してもらい、「後遺障害慰謝料」を請求することが可能です。
自覚症状だけでなく、MRI画像等の「医師による所見」もあると後遺障害等級が認められやすくなるでしょう。
警察に人身事故として処理をしてもらうこと
交通事故で打撲を負っても症状が比較的軽傷だった場合、加害者側や警察から物損事故として処理するように促されることがあります。
その理由は、加害者側は刑事責任の問題が無くなり、警察は「実況見分調書」という資料を作成する手間が省けるからです。
もし物損事故として処理された場合は、けが人がいない事故として扱われることになるので、怪我に対する治療費や慰謝料は請求できなくなります。
ですので、大した怪我じゃないからと思って物損事故の処理にせず、人身事故として処理してもらってください。
打撲の慰謝料相場について
慰謝料の算定基準には、3つの基準があります。算定基準とは簡単に言うと慰謝料の算出方法のことです。
- 自賠責保険基準
- 任意保険基準
- 弁護士(裁判)基準
交通事故の慰謝料相場は、「どの基準」を用いるのかによって大きな違いが出てきます。基本的に、保険会社と示談交渉をする際は、最も賠償額の低い「自賠責保険基準」で算定されることになります。
弁護士(裁判)基準に関しては、弁護士に依頼しなければ採用できない基準ですのでご注意ください。
通院の期間 | 自賠責保険基準 (2020/03/31以前の事故) |
自賠責保険基準 (2020/04/01以降の事故) |
任意保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|---|
1か月 | 8.4万円 | 8.6万円 | 12.6万円 | 19万円 |
2か月 | 16.8万円 | 17.2万円 | 25.2万円 | 36万円 |
3か月 | 25.2万円 | 25.8万円 | 37.8万円 | 53万円 |
この金額は、それぞれの基準の算定方法によって出された金額です。あくまでも相場となる「目安」だと考えてください。
慰謝料に関する詳しい計算方法は、以下の記事をご覧ください。
打撲の場合は病院への通院回数と通院期間が慰謝料に大きく影響します。痛みや痣が残っているならば適正な通院回数と治療を心がけましょう。
後遺障害の慰謝料の相場は?
症状固定後も痛みやしびれが残る場合、「神経症状」に関する後遺障害が認定される可能性があります。
具体的に言えば、「14級9号」と「12級13号」の等級です。
等級 | 内容 | 自賠責保険基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|---|
14級9号 | 局部に神経症状が残すもの | 32万円 | 40万円 | 110万円 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 2020/04/01以降の事故は94万円 | 100万円 | 290万円 |
後遺障害等級が認定された場合、慰謝料に加え「逸失利益(障害がなければ得られてだろう利益)」も請求することが可能です。
頭部の打撲により「高次脳機能障害」が残れば、さらに上の等級が認定され、後遺障害慰謝料や逸失利益が増額されることになります。
治療の際に注意すべき4つのポイント
打撲の治療の際に注意すべきポイントは4つあります。
- 事故直後すぐに病院で受診する
- 治療費の打ち切りを打診されても自己判断でやめない領収書を保管する
- 領収書を保管する
- 適切な通院期間と頻度を守る
それぞれ詳しく説明します。
事故直後すぐに病院で受診する
交通事故により怪我を負った際に慰謝料を請求するには、交通事故と怪我との因果関係を証明する必要があります。証明のためには医師による診断書が必要になるため、必ず病院に行くようにしましょう。
事故から間隔をあけて病院で受診してしまうと、怪我が交通事故によるものではないと判断されてしまうこともあります。特に打撲のような比較的軽傷の場合はその可能性が高くなります。ですので、事故当日もしくは翌日には病院で受診するようにしましょう。
保険会社に 治療費の打ち切りを打診されても自己判断でやめない
保険会社は打撲のケガを軽く扱う傾向があります。そのため、打撲の場合、治療中にも関わらず、加害者側の保険会社から、1ヶ月程度で治療費の打ち切りを打診されることが多いです。
その際に「もう痛みはなくなってきたから良いかな…」と自己判断で通院をやめてしまうと、怪我に対する適切な慰謝料を受け取れなくなります。
加害者側の保険会社から治療費の打ち切りを打診された際は、必ず医師に治療を継続する必要があるかを相談しましょう。まだ治療の必要があるといわれた場合は、主治医に診断書を書いてもらい保険会社に提出し、治療継続の必要性を主張しましょう。
領収書を保管する
病院でもらった治療費の領収書や、通院の際に使った公共交通機関の交通費の領収書は必ず全て保管しましょう。通院の際にタクシーを使うと打撲の症状の際は交通費が出ない事が多いため、やむをえない場合以外は公共交通機関で通院しましょう。
治療費や交通費以外にも事故が原因で生じた費用については加害者側に請求できるので、全て領収書を保管するようにしましょう。
適切な通院期間と頻度を守る
慰謝料を増やすには、適切な頻度での通院と治療期間が大事になります。あまり痛くないからといって途中で通院を止めたり、忙しいなどの理由で通院頻度が少なくなってしまうと、本来もらえていたはずの慰謝料よりも減額される可能性が高いです。
必ず医師が完治または症状固定と判断するまで治療を適切な頻度で続けるようにしましょう。
交通事故による打撲で弁護士に相談した方が良いケース
交通事故被害に遭った方の中に、打撲のような軽傷の場合では弁護士に相談する必要はあるのかと疑問を持っている方もいらっしゃると思います。
しかし、打撲の場合でも弁護士に相談した方が良いケースがあります。それは以下の2つのケースです。
- 弁護士特約に加入している場合
- 通院期間が半年を超える場合
弁護士特約が使える場合は、上限の300万円までの費用を保険会社が負担してくれるので、被害者の方は実質無料で弁護士に依頼することが出来ます。
弁護士に依頼すると、面倒な手続きを代わりに行ってくれたり、慰謝料がアップする可能性が高いので、依頼することをおすすめします。
通院期間が半年を超える場合は、弁護士に費用を払っても、被害者の方は慰謝料の増額分でプラスになる可能性が高いです。そのため通院期間が半年を超える場合は、弁護士特約に加入していなくても依頼した方が良いです。
弁護士に相談するタイミングは早いほうが良いでしょう。打撲だけでもまずは弁護士に相談してセカンドオピニオンを得ることが大切です。弁護士特約に加入していれば迷わず依頼することです!
まとめ
交通事故で打撲を負った場合の慰謝料は、通院期間で決まる場合が多いです。通院期間が長くても通院頻度が少ないと適切な慰謝料を受け取れない可能性があるため、必ず医師に言われた通院頻度を守るようにしましょう。
治療をしている際に、加害者側の保険会社からの治療費打ち切りの打診があった場合は、自己判断で通院を止めずに、医師と相談して治療を継続するかを決めましょう。
弁護士特約に加入されている方は、弁護士に相談するとメリットが多いので、まずは無料相談を受けることをおすすめします。