交通事故の原因が居眠り運転であったかどうかはドライバー本人が認めるか、警察が現場検証や目撃者の証言などから判断します。
居眠り運転をしていたことが明らかになれば、それは当然重大な過失とみなされます。警察や保険会社にその事実があったかどうかをよく確認してもらいましょう。
居眠り運転は2つの義務違反
居眠りは生理現象ではありますが、運転中にしてしまうことは不適切です。疲労が溜まらないように配慮することも、車を運転する上でドライバーに求められる責務と言えます。
疲労や睡魔は居眠り運転を無罪放免にする言い訳にはなりません。運転中に居眠りをすることは、2つの義務違反とみなされる可能性があります。それが以下の安全運転義務と過労運転等の禁止義務です。
安全運転義務
居眠り運転は道路交通法第70条の「安全運転義務」に違反します。脇見運転もこれに抵触します。以下がその条文です。
(安全運転の義務)
車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。
これに違反した場合は、「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金」に処せられます。
【参考】:道路交通法
過労運転等の禁止義務
道路交通法第66条では過労運転等の禁止を定めていて、居眠り運転はこれにも抵触します。
何人も前条第1項に規定する場合のほか過労病気薬物の影響その他の理由により正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。
前条第1項というのは、酒気帯び運転の禁止を定めた項目です。過労運転は「3年以下の懲役、または50万以下の罰金」となり、安全運転の義務違反よりも罰則が重いことが分かります。
【参考】:道路交通法
過労運転とは
過労運転とは、正常な運転ができないような過労状態でハンドルを握ることです。単なる疲労はここでは当てはまりません。
とはいえ、それでは判断が曖昧になってしまうため、厚生労働省労働基準局によってトラックやバス、タクシー業者向けに基準が定められています。自動車運転労働者はこの基準内で業務を行う必要があります。
以下が「トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント」の一部です。
- 1箇月の拘束時間は原則として293時間が限度
- 1日(始業時刻から起算して24時間)の拘束時間は基本的に13時間以内
- 1日の運転時間は2日平均で9時間が限度
- 1週間の運転時間は2週間ごとの平均で44時間が限度
- 連続運転時間は4時間が限度
居眠り運転による事故は多くの場合、加害者の過失が100%
居眠りは一瞬とはいえ、意識を失った状態ですので、ハンドルを操作することが不能の状態です。加害者が居眠り運転をしたことで起きた事故は多くの場合、加害者側の過失が100%と認定されます。そこで、被害者がすべきことは正当な損害賠償を受け取ることです。
診断書を警察へ提出し、確実に人身事故扱いに
相手の居眠り運転によってケガを負ったのであれば、人身事故となります。物損事故のままでは損害賠償の中に慰謝料は含まれません。なぜならば、慰謝料は傷害によって与えられた精神的苦痛に対する償いだからです。
休業損害や治療費も支払われないため、人身事故に切り替える必要があります。まずは、病院で診断書を書いてもらい、警察に届け出ましょう。長期間空けてしまうと、ケガと事故との関連性が疑われることも考えられます。2週間以内を目安に届け出るようにしましょう。
賠償金額が少ないと思ったら弁護士に相談を
示談交渉の際に、相手の保険会社が損害賠償金を少なく見積もってくることがあります。それに応じてしまうと、正当な賠償金を受け取る機会を逸してしまいます。そのため、提示金額が低いと思ったら、弁護士に相談してみましょう。
まとめ
居眠り運転をするドライバーは少なくありません。交通事故の相手が居眠り運転をしていたことがわかったら、保険会社に過失割合を決めてもらう際にとても有利になります。
この場合、相手の任意保険から補償をしてもらうことになりますので、相手の保険会社に居眠り運転の事実を認めさせる必要があります。相手の過失が認められれば適正な損害賠償の金額を請求することが可能になります。
相手とその保険会社の対応に納得いかないことがある際は、交通事故に強い弁護士に相談しましょう。