外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)とは何かがわかる
外貌醜状で認められる後遺障害の等級がわかる
外貌醜状で後遺障害認定を受ける方法がわかる
外貌醜状で逸失利益が認めらやすいケースがわかる
交通事故の後遺障害の中に、外貌醜状という顔に症状が残るケースがあります。顔に傷やアザが残ると日常生活や人生に大きな影響を及ぼします。
被害者ならば、当然、適正な賠償を受けるべきです。しかし後遺障害が認められても逸失利益という部分で加害者側と争うことになる場合が多く、納得のいく賠償金が得られていないのが現状です。
この記事では、外貌醜状で認められる後遺障害の等級は何か?外貌醜状による逸失利益が認められやすいケース、認められづらいケースについて解説しています。
外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)とは
外貌醜状とは、交通事故で怪我をしたことによって、外見に醜状が残る場合の後遺障害です。
たとえば、交通事故では大やけどをすることもありますし、顔に傷がつくことや、アザが残ることもあります。このように、見た目に問題が残る後遺障害が外貌醜状です。
交通事故で外貌が変わってしまったら、当然その人は大きな精神的苦痛を被ります。その状態で一生生きていかなければならないので、後遺障害に認定されます。
外貌醜状の後遺障害等級は傷やあざの場所と大きさを考慮して決めれています。頭や顔や首など人目につくような場所で大きさが大きいほど後遺障害等級は高くなります。
以下で具体的にどのような場所にどの程度の大きさの傷があれば、後遺障害等級に認定されるかについて解説します。
外貌醜状で認められる後遺障害の等級
外貌醜状になると、7級か9級か12級の後遺障害が認定される可能性があります。最も程度が重い場合ものから7級、9級、12級となります。
外貌醜状の程度として7級は、外貌に著しい醜状を残すもの、9級は外貌に相当程度の醜状を残すもの、12級は外貌に醜状を残すものとなります。
それぞれについて、認定されるための要件があります。それぞれの後遺障害の内容と、認定されるための要件は以下の表の通りです。
後遺障害等級 | 外貌醜状の程度 | 外貌醜状の内容 |
---|---|---|
第7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの | ・頭部に残ったてのひら大(指の部分は除く)以上の瘢痕または頭蓋骨のてのひら大以上の欠損 ・顔面部に残った鶏卵大以上の瘢痕または10円硬貨大以上の組織陥没 ・頸部に残ったてのひら大以上の瘢痕 |
第9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの | 顔面部に残った長さ5センチメートル以上の線状痕 |
第12級14号 | 外貌に醜状を残すもの | ・頭部に残った鶏卵大以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大以上の欠損 ・顔面部に残った10円硬貨大以上の瘢痕または長さ3センチメートル以上の線状痕 ・頸部に残った鶏卵大以上の瘢痕 |
外貌醜状の認定要件の詳細
以下では、外貌醜状が後遺障害として認定されるための要件を解説します。まず、外貌醜状として認められるためには、頭か顔か首に醜状が残ったことが必要です。露出面であっても手足などは対象になりません。
また、頭や顔の部分であっても、眉毛や髪の毛によって隠れてしまう部分については、外貌醜状として認められません。
それぞれの等級における外貌醜状の認定基準を解説します。
【7級12号】外貌に著しい醜状を残すもの
この場合、外貌醜状が残った場所が頭か顔か首かによって、認定基準が異なります。頭の場合には、手指の部分を含まない手のひらの大きさ以上のあざがある場合か、頭蓋骨に手のひらの大きさ以上の欠損がある場合に認定されます。
顔の場合には、鶏卵の大きさ以上のあざや、10円硬貨の大きさ以上の組織陥凹がある場合に認められます。
首の場合には、手のひらの大きさ以上のあざが残った場合に7級となります。
【9級16号】外貌に相当程度の醜状を残すもの
9級16号は、顔の怪我だけが対象です。顔面に5センチメートル以上の線状の傷跡が残った場合に認められます。
【12級14号】外貌に醜状を残すもの
12級にも頭と顔と首のケースがあります。頭の場合には、頭蓋骨に鶏卵の大きさ以上の欠損がある場合に認定されます。
顔の場合には、10円硬貨の大きさ以上のあざや3センチメートル以上の線状の傷跡が残る場合に認定されます。
首の場合には、鶏卵の大きさ以上のあざの痕がある場合に、後遺障害12級14号が認められます。
外貌醜状で後遺障害認定を受ける方法
外貌醜状が残って後遺障害の等級認定を受けるためには、後遺障害等級認定請求をしなければなりません。その方法としては、事前認定と被害者請求があります。
事前認定は、相手の保険会社に後遺障害等級認定の手続きを任せてしまう方法です。
被害者請求は、被害者が自分で相手の自賠責保険に後遺障害の等級認定請求をする方法です。
確実に等級認定を受けたいなら、自分で手続きをすすめる被害者請求がおすすめです。その理由としては、被害者請求の場合は、自分で後遺障害等級の申請に必要な書類を集めるので、等級が認定されるために最大限の準備が出来るからです。
ただ、被害者請求をするときには、専門的な知識も必要なので、被害者が自分で手続きするよりも交通事故問題が得意な弁護士に依頼する方が有利です。
外貌醜状で請求できる賠償金
外貌醜状で請求できる主な賠償金は4つです。
- 治療関係費
- 休業損害
- 後遺障害慰謝料
- 逸失利益
それぞれ詳しく解説します。
治療関係費
治療関係費とは、「治療費」「入院費」「入院雑費」「文書科」「交通費」の事です。
入院雑費とは、入院している間にかかる日用雑貨品や消耗品などの総称です。こちらは出費の必要性などの判断をするのが大変なため、定額で入院日数×1500円と決まりがあります。
文書科は交通事故証明書や、診断書の所得費用などの事です。
交通事故によって発生した費用に関しては賠償金として請求できるので必ず領収書を保管するようにしましょう。
休業損害
休業損害とは、交通事故による怪我が原因で仕事を休んだために減った収入のことです。この収入を加害者側に請求できます。
治療のために有給休暇を使った場合でも請求できるので、会社を休んだ際は必ず請求するようにしましょう。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ってしまったことが原因で精神的な苦痛を受けたとして、それに対して支払われる賠償のことです。
後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害の等級によって異なります。弁護士・裁判基準と任意保険基準、自賠責基準の3つの基準によって金額が異なりますが、外貌醜状の場合には、以下の通りとなります。
等級 | 弁護士・裁判基準 | 任意保険基準 | 自賠責基準 (2020/03/31以前の事故) |
自賠責基準 (2020/04/01以降の事故) |
---|---|---|---|---|
7級 | 1000万円 | 500万円 | 409万円 | 419万円 |
9級 | 690万円 | 300万円 | 245万円 | 249万円 |
12級 | 290万円 | 100万円 | 93万円 | 94万円 |
このように、外貌醜状の後遺障害が残った場合、7級に認定されると1000万円もの慰謝料を請求できますし、9級でも690万円、12級なら290万円程度の後遺障害慰謝料を請求できます。
ただ、この数字は弁護士・裁判基準で計算した場合の金額なので、任意保険基準や自賠責基準で計算するとその金額は大きく下がります。
そこで、外貌醜状のケースでなるべく高額な後遺障害慰謝料の支払いを受けたい場合は、弁護士・裁判基準で後遺障害慰謝料を計算することが重要になります。
逸失利益
逸失利益とは、後遺障害が残ったことによって労働能力が低下してしまうことで、得られなくなってしまった将来の収入のことです。
後遺障害の等級によって労働能力喪失率が決まっており、その数値と事故当時の年収をかけ算することによって計算します。
逸失利益は就労可能年数の分を請求できるので、事故前の収入が高かった人や年齢が若い人だと逸失利益は高額になります。
外貌醜状の症状が起こった場合の労働能力喪失率は、以下の通りです。
等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
7級 | 56% |
9級 | 35% |
12級 | 14% |
最も程度の重い7級の場合には労働能力喪失率が5割を超えてくるので、かなり高額な逸失利益が認められることもあります。5000万円を超える可能性も十分にあります。
外貌醜状では示談交渉の際に逸失利益によるトラブルが起こりやすい
外貌醜状では示談交渉の際に逸失利益によるトラブルが起こりやすいです。その理由は見た目には影響があっても身体的機能に影響がない場合が多いので、労働能力喪失率をしていないとみなされるからです。
しかし、外貌醜状による逸失利益が認められるケースもあります。以下で、外貌醜状による逸失利益が認められやすいケースと認められづらいケースを解説します。
外貌醜状による逸失利益が認められやすいケース
外貌醜状による逸失利益が認められるケースは「幼少児」「若年者」「現職が外貌に影響を受ける」です。
幼少児の逸失利益が認められる理由は、醜状痕が人格形成や学業への取組に影響を与える可能性があるからです。若年者は、就職や転職、昇給のなどの際に影響を受ける可能性があるとみなされています。
現職が外貌に影響を受ける仕事は、ホステス、モデル、芸能人、営業職などです。この他にも影響を受けると判断されたものは逸失利益を認められます。
しかし、逸失利益が認められても、等級に応じた労働能力喪失率までは認められないケースが多いのです。多くの場合は、等級に応じた労働能力喪失率の1/3~2/3程度です。
外貌醜状による逸失利益が認められづらいケース
外貌醜状による逸失利益が認められないケースは「職を持たない高齢者」「現職が外貌に影響を受けない中高年」「下肢の醜状痕」です。
職を持たない高齢者や現職が外貌に影響を受けない中高年、下肢の醜状痕は、労働能力への直接的な影響は考えられないとして逸失利益を否定される可能性が高いです。
ただ、絶対に逸失利益を否定されるわけではないので、逸失利益が認められるかどうか、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
まとめ
交通事故で外貌醜状となってしまった場合、示談交渉の際に逸失利益を巡るトラブルが非常に多いです。
逸失利益が認められるかどうかで賠償金も大きく変わるケースがありますので、顔に症状が残った際には弁護士に相談することをおすすめします。