交通事故の裁判で「本人訴訟」は可能?やり方・進め方は?

交通事故の裁判で「本人訴訟」は可能?やり方・進め方は?

交通事故の示談や調停では話がまとまらない場合、最後の手段として「裁判」があります。裁判で弁護士をつけると費用が心配だということで、「本人訴訟」という方法を選ぶ人もいます。

「本人訴訟」は裁判に関するすべての手続きを自分でおこなうものです。もちろん交通事故の裁判でも、本人訴訟は可能ですが「そのやり方・進め方」について知っている人は多くありません。

この記事では「本人訴訟」の基礎知識を確認した上で、具体的なやり方・進め方を解説していきます。

「本人訴訟」にはメリットもデメリットもあります。両方を理解した上で、自分の交通事故の場合は、弁護士に頼んだほうがいいのか、本人訴訟でいけるのか、最善の道を選んでください。

本人訴訟とは

「本人訴訟」とは、弁護士をつけずに本人のみで裁判をすることをいいます。弁護士をつけることは義務ではありません。

裁判ではそれぞれの言い分の「どちらが正しいのか」、公正中立な裁判官が判断します。そのため、「あなたの主張」の正しさを加害者(保険会社)に認めさせることができるかもしれません。

ただし、裁判を起こし、裁判官に判断をしてもらうには、様々な手続きを踏まなければなりません。

たとえば、

  • 裁判を起こすための訴状の作成
  • 口頭弁論ための書類の準備
  • 自分に有利な証拠・証人集め
  • 相手の答弁書に対する反論 等

本人訴訟の場合は、こうした手続きをすべて自分でおこなっていきます。

交通事故の裁判でも本人訴訟は可能?

自分1人で裁判をおこう「本人訴訟」は、交通事故の裁判でも可能なのでしょうか。もちろん、交通事故の裁判であっても「本人訴訟」はできます。

しかし、加害者側には交通事故問題を熟知した保険会社や会社の顧問弁護士がついています。そのため、法律や判例を根拠に主張をしてくるでしょう。

それを崩すことは簡単ではありません。相手の主張に反論できなければ、裁判で勝つことは難しくなります。

本人訴訟のやり方・進め方は?

では、「本人訴訟」をする場合、そのやり方・進め方はどのようになっているのでしょうか。

本人訴訟も「通常裁判」と同じ流れで進む

本人訴訟といっても、「弁護士がつかない」というだけで、裁判自体は「通常裁判」と同じ流れで進んでいきます。

裁判は、訴状を裁判所に提出することから始まり、和解または判決で結論が出されることで終わります。

以下で、裁判の流れについて解説していきます。

1.訴状の作成・提出

裁判を始めるには、訴えを起こしたい人が「訴状」を裁判所に提出する必要があります。「訴状」というのは、訴えを起こす人(原告)が裁判所に、判断してほしい内容をまとめた文書です。

訴状には必ず「当事者」、「請求の趣旨」、「請求の原因」について記載しなければなりません。

内容
当事者 原告・被告の住所・氏名を明記し、「誰が」「誰に対して」裁判を起こすのかを記載する 「原告が」「被告に対し」交通事故に基づき損害賠償を求める
請求の趣旨 裁判所に「どのような判決を出してほしいか」を記載する 被告は原告に対し金200万円を支払え
請求の原因 「請求の趣旨」で書いた内容の理由を記載する 被告の車が原告に追突したことにより、頚椎(けいつい)を捻挫して治療費が200万円かかった

記載漏れがある場合、裁判所で「訴状」が受理されない可能性がありますので、しっかりと確認しなければなりません。

2.被告への送付と第1回口頭弁論期日の指定

原告(訴えた人)が訴状を送ると、10日ほどで裁判所から「第1回口頭弁論期日の日程」の連絡がきます。

「口頭弁論期日」とは、原告(訴えた人)・被告(訴えられた人)が裁判官の前で、互いに主張を言い合うために法廷を開く日のことです。通常は、訴状を受理した日から「約1ヶ月後」の日程が提示されます。

第一回口頭弁論期日が決まると、裁判所は被告に「原告の訴状」を送ります。訴状を受け取った被告は、それに対する返答である「答弁書」を裁判所に送ります。

裁判所が「被告の答弁書」を受け取ると、原告にも送ってくれます。原告は答弁書を読んで、被告に反論するための証拠書類や証人を準備します。

3.口頭弁論 ‐ 準備書面で争う

指定された期日に原告(訴えた人)と被告(訴えられた人)が法廷に集まり、第一回口頭弁論がはじまります。

口頭弁論とは、裁判官の面前で「紛争になっている事柄」について、双方が口頭で意見を言い合うことです。

「口頭弁論」といっても、民事裁判では事前に「何を主張するか」を準備書面という書類で相手に知らせることになっています。そのため、書面でのやり取りがメインとなります。
第一回口頭弁論期日では、原告は訴状、被告は答弁書のとおり主張することを伝えて終わりです。

第二回以降の口頭弁論期日は、通常1ヶ月ごとに開かれます。口頭弁論は、裁判所が判決を出せるだけの主張や証拠が出尽くされるまで続きます。

4.和解または判決

裁判は必ず「判決」で終わるわけではありません。

裁判が進む中で、原告(訴えた人)・被告(訴えられた人)の間でお互いの主張に折り合いをつけることができれば、「和解」という形で終わることがあります。

和解する場合、裁判所に原告・被告の間で合意した内容の「和解調書」を作成してもらい、裁判は終了です。和解調書には確定判決と同じ効力があるので、差押えなどの強制執行することもできます。

もちろん、和解できない場合には、双方が主張と証拠を出し尽くすまで裁判を続け、最後に裁判所が判決を出します。

双方とも判決に不服がなければ、判決を受け取ってから2週間後に判決は確定します。判決が確定すると、後から判決の内容を争うことはできません。

判決に不服がある場合は、さらに上級の裁判所に裁判をしてもらうことが可能です。判決を受け取ってから2週間以内に上級の裁判所に訴え出ることで、上級の裁判所での裁判がはじまることになります。

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本人訴訟のメリット

様々な手続きを1人でおこなわなければならない「本人訴訟」ですが、メリットとしてはどういった点があげられるのでしょうか。

訴訟にかかる費用を安く抑えることができる

「本人訴訟」のメリットは、弁護士に依頼しないので弁護士費用がかからないことです。

裁判の内容や期間にもよりますが、弁護士費用は安く見積もっても数十万円はかかります。自分ですべておこなえば、こうした費用を節約することができるでしょう。

本人訴訟のデメリット

本人訴訟は「弁護士費用が抑えられる」というメリット以上に、デメリットが多くなっています。

「証拠集めから複雑な手続き」まで全部自分でやらなければならない

裁判では、裁判官に自分の主張を納得させるだけの「証拠」を提示しなければなりません。

ただ、交通事故の裁判で証拠となる書類は、検察庁や裁判所といった公的機関に請求しないと手に入らないものが多く、手続きも複雑でわかりにくくなっています。

事故状況を争っている場合、「事故を目撃した人」の証言が非常に重要です。ただ、実際に事故を目撃しかつ裁判で証言をしてくれる人を見つけるのは簡単ではありません。

これらの証拠は、集めただけでは不十分です。裁判で勝つためには、「相手の反論を封じ込めるために有効な証拠はどれか」「どのタイミングでこの証拠を出すべきか」など戦略を立てなければなりません。

それを見極めて判断することは、専門知識と経験がないとやはり難しい面があります。

本人訴訟では勝てる可能性が低い

司法統計によると、「本人訴訟の裁判」と「弁護士がついた裁判」では、勝率に「2倍の差」が出ています。

やはり弁護士がいない場合、「主張の正当性」「相手への反論」「証拠提出のタイミング」など、裁判を戦う上での戦略が十分に立てられません。

被告側(加害者)は保険会社の依頼する弁護士が必ずつきます。そのため、原告(被害者)は、弁護士を相手にしなければならず、圧倒的に不利な状況なのです。

交通事故の裁判で勝つためには弁護士に相談を

勝訴判決を勝ち取るために裁判をするのなら、やはり弁護士に頼むことが一番の近道です。

弁護士に依頼すれば裁判をすべて代行してくれる

弁護士に依頼すれば、裁判の準備から法廷での対応まで、裁判にまつわることすべてを代行してもらえます。弁護士は「依頼者の代理人」として、裁判に勝つために全力で取り組んでくれるでしょう。
さらに、弁護士に依頼することで請求できる損害賠償金が2~3倍に増額されるという可能性も高まります。

本人訴訟に関してのアドバイスを受けることもできる

「どうしても本人訴訟を行いたい」という場合にも、弁護士に一度相談をしてみてください。

弁護士に相談することで、裁判の見通しを立ててもらったり、提出する書類に漏れがないか確認してもらうことができます。さらに、どれくらいの損害賠償金が見込めるかも算定してくれるでしょう。法律のプロにアドバイスをもらうことで、有利に裁判が進められます。

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