この記事でわかること
- ライプニッツ係数とは何かがわかる
- ライプニッツ係数を用いた逸失利益の計算方法がわかる
- ご自分の事故の逸失利益の相場がわかる
- ライプニッツ係数をツールで計算できる
このような方にオススメの記事ですよ!
- ライプニッツ係数の計算が複雑でわからない
- 逸失利益を計算したいが、ライプニッツ係数が理解できない
交通事故に遭い、後遺障害が残った場合や死亡した場合は、「逸失利益」(事故に遭わなければ本来受け取れたであろう利益)を加害者に請求できます。
その逸失利益を計算するための計算方法にライプニッツ係数という指数が用いられています。しかし、ライプニッツ係数とは一体どのような指数なのでしょうか?
この記事では「ライプニッツ係数とは何か」「ライプニッツ係数を用いた逸失利益の計算方法」についてご説明します。すぐに計算できる「ライプニッツ係数計算機」もご活用ください。
ライプニッツ係数とは?やライプニッツ係数の計算方法について確認していきましょう!
ライプニッツ係数計算機
ライプニッツ係数がわかる計算機です。ライプニッツ係数について詳しく知る前にまずは計算してみましょう!
※ 小数第5位を四捨五入
ライプニッツ係数の計算方法
年数n, 年利aに対応するライプニッツ係数は以下の式で計算されます。 \[ \sum_{i=1}^{n} \frac{1}{(1+a)^{i}} = \frac{1}{(1+a)^1}+\frac{1}{(1+a)^2}+・・・+\frac{1}{(1+a)^{n}} \]ライプニッツ係数とは?
ライプニッツ係数とは、将来的に受け取るはずの収入を前倒しで受け取る際に「発生する利息」を控除するために使う指数です。
例えば、10年間で2000万円の収入を受け取る可能性がある場合に、今すぐまとめて受け取るとなると、その分の「利息という利益」が発生すると考えられます。
その利息は控除するべきものであるため、ライプニッツ係数を用いて控除されます。
交通事故では、主に後遺障害が残った場合や死亡事故の「逸失利益」(本来得られるべきであるにも関わらず得られなかった利益)の計算でライプニッツ係数を使用します。
ライプニッツ係数は令和2年4月より年利5%から3%に引き下げられました。計算式は以下のようになります。
- 1年の場合 1÷1.03≒0.97
- 2年の場合 (1÷1.03)+{1÷(1.03×1.03)}≒1.913
- 3年の場合 (1÷1.03)+{1÷(1.03×1.03)}+ {1÷(1.03×1.03×1.03)}≒2.828
上記の計算を10年分行うと以下の表のようになります。
1年の場合 | 0.97 |
2年の場合 | 1.914 |
3年の場合 | 2.831 |
4年の場合 | 3.724 |
5年の場合 | 4.594 |
6年の場合 | 5.441 |
7年の場合 | 6.268 |
8年の場合 | 7.074 |
9年の場合 | 7.861 |
10年の場合 | 8.631 |
ライプニッツ係数を用いた逸失利益の計算方法
逸失利益を計算する主なケースは、後遺障害が残る場合と死亡事故の場合です。
2つは計算方法が違うため、それぞれ詳しく計算式を解説します。
後遺障害の逸失利益の計算方法
後遺障害が残った場合は、労働能力が失われるので、それに対する逸失利益が支払われます。
後遺障害の場合の逸失利益の計算式は以下の通りです。
逸失利益(後遺障害)=基礎収入×労働能力喪失率×労働喪失期間に対応するライプニッツ係数
基礎収入とは
基礎年収は、原則として事故前の年収となります。
ただし、年収の低い若者や学生の場合には全年齢平均賃金を基礎収入とすることが多いです。その理由は、若者や学生の事故前の年収を基礎年収に用いると、逸失利益が低くなりすぎる場合が多いからです。
労働能力喪失率とは
労働能力喪失率とは後遺障害によって労働力の低下の度合いを数値化したものです。
後遺障害は、その程度によって等級が認められます。労働能力喪失率は、等級ごとに一律で定められています。
以下が労働労働能力喪失率と後遺障害等級の関係表です。
第1級 | 100/100 |
第2級 | 100/100 |
第3級 | 100/100 |
第4級 | 92/100 |
第5級 | 79/100 |
第6級 | 67/100 |
第7級 | 56/100 |
第8級 | 45/100 |
第9級 | 35/100 |
第10級 | 27/100 |
第11級 | 20/100 |
第12級 | 14/100 |
第13級 | 9/100 |
第14級 | 5/100 |
後遺障害の種類によっては上記の表の等級と労働能力喪失率が対応しない事もありますが、大抵の後遺障害では対応しています。
労働能力喪失期間とは
労働能力喪失期間とは、その後遺障害がいつまで労働能力に影響を与えるかの期間を示すものです。
一般的には、労働能力喪失期間は事故に遭った年齢~67歳までとされています。その理由は、「後遺障害は基本的に完治することはない」「一般的に67歳まで働く」と考えられているからです。
ただし、18歳未満の場合は、就労開始を18歳と仮定して、18歳~67歳としています。
後遺障害の残った方の逸失利益の具体的な計算例
具体例を挙げて実際に計算を行います。
「40歳会社員」「年収550万円」「後遺障害8級が認定されている」という場合の逸失利益の計算式は以下のようになります。
逸失利益=基礎収入(550万円)×労働喪失率(0.45)×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(18.327)
≒4536万円
この場合における逸失利益は、約4536万円となります。
死亡事故の逸失利益の計算方法
死亡事故の際も、逸失利益の考え方は後遺障害の場合と基本的に同じです。
死亡事故の際は、労働喪失能力は100%として扱われます。また、将来必要になるであろう生活費はかからなくなるので、生活費の分を控除されます。
死亡事故の計算式は以下の通りです。
逸失利益(死亡事故)=基礎収入×(1-生活費控除率)×終了可能年数に対応するライプニッツ係数
生活費控除率とは
生活費控除率とは収入の中で生活費が占める割合です。
原則として生活費は以下の割合で控除されます。
男性(独身、幼児などを含む) | 50% |
女性(主婦、独身、幼児などを含む) | 30% |
一家の支柱(被扶養者1人の場合) | 40% |
一家の支柱(被扶養者2人以上の場合) | 30% |
例えば、離婚して養育費を払っている、または高齢の親を介護している場合は、上記の生活費の割合より小さくなる可能性があります。
逆に、1000万円を超える収入がある、または夫婦共働きの場合は上記の生活費の割合より大きくなることもあります。
死亡事故の場合の逸失利益の具体的な計算例
ここで例を挙げて、実際に計算をしていきます。
○【「30歳会社員」「年収500万円」「独身」】のケース
逸失利益=基礎収入(500万円)×{1-生活費控除率(0.3)}×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数(22.167)
≒7758万円
この場合における逸失利益は、約7758万円となります。
まとめ
交通事故で後遺障害が残った場合や、死亡事故の場合は加害者に逸失利益を請求することが出来ます。ライプニッツ係数の計算は複雑なので、ぜひ本記事に載せてある計算機をお使いください。
逸失利益はかなり高額になるケースが多いです。賠償請求額を少しでも高くするためには弁護士の力を借りることをお薦めします。