近年、あおり運転による重篤な事故が立て続けに起きたことから、これまであまり関心を持たれることのなかった「あおり運転」が大きな注目を集めるようになりました。
ドライバーの約7割が、あおり運転をされた経験ありというデータもあることから(チューリッヒ保険会社調べ、回答者2,230人)、あおり運転は非常に身近にあり、ドライバーの誰もがあおり運転による事故に遭遇しても不思議はないと言えます。
この記事ではあおり運転に遭ってしまったとき、大きなトラブルや事故に発展させずに、いかに自分や一緒に乗っている大切な人を守れるのか、その対処方法を紹介します。
あおり運転は歴然とした交通違反行為
あおり運転とは、前方を走る車との車間距離を極端に縮めて接近したり、幅寄せしたり、追い回したりするなどのほか、不要なパッシングしたり、クラクションを鳴らしたりして威嚇する行為のことを指します。
あおり運転に該当する行為のほとんどは、以下に記載したように道路交通法に違反しており、通報されれば懲役や罰金などを課せられます。それだけ危険な行為であるともいえます。
〇車間を詰める行為
車間距離不保持(道路交通法第26条)にあたります。
3月以下の懲役、または5万円以下の罰金(高速道路)、5万円以下の罰金(一般道路)が課せられます。
〇急な割り込みや幅寄せ
進路変更禁止違反(道路交通法第26条の2)にあたります。
5万円以下の罰金の罰則が課せられます。
〇割り込みをした上での急停車
急ブレーキ禁止違反(道路交通法第24条)にあたります。
3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金が課せられます。
〇左側からの追い越し
追越し違反(道路交通法第28条)になります。
3ヶ月以下の懲役、または5万円以下の罰金が課せられます。
追い越し禁止の標識がある時は、右側からの追い越しも禁止です。
〇不要なパッシングやクラクションを鳴らす行為
それぞれ、減光等義務違反(道路交通法第52条)、警音器使用制限違反(道路交通法第54条)にあたります。
どちらも5万円以下の罰金が課せられます。
〇その他、危険を及ぼす運転
安全運転義務違反(道路交通法第70条)にあたります。
周囲の車や人に危害を与えるような運転をした場合、3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金が課せられます。
悪質なあおり運転は一発免停も!
あおり運転による重大な事故が相次ぎ、あおり運転が社会問題化したことを受け、警視庁はあおり運転の取り締まりを強化しました。
2017年12月には、自動車を運転することで著しい危険を生じさせる「危険性有帯者」と判断された場合、交通違反による点数の累積がなくても最長180日間の免許停止にできるという道路交通法を、あおり運転にも適用させるように全国の警察に指示しました。
これにより、2018年1~3月のあおり運転による免許停止処分件数が、例年の9倍になりました。
あおり運転から身を守る方法は?
では、実際にあおり運転の被害者になってしまった場合、どのように対処すれば、大きなトラブルに発展させることなく身を守ることができるのでしょうか。
具体的な方法を紹介します。
無理な追い越しや車線変更をしない
あおり運転を誘発する最大の原因は、無理な追い越しや車線変更にあります。
自分が何の悪気もなく追い越しや車線変更をしたとしても、後続車のドライバーに「無理やり追い越された」「割り込まれた」「喧嘩を売られた」などと受け取られ、それに対する報復としてあおり運転が行われることがあります。
運転に不慣れな人の場合は、自分では大丈夫だと思っても、危険なタイミングで追い越しや車線変更している場合もあるので、運転に自信がない場合は慎重にタイミングを見計らいましょう。
早めに道を譲る
あおり運転をされたら、相手がかなり怒っている状態であると認識しましょう。それ以上刺激しないためにも、無理なく停車できる路側帯や路肩などがあれば停止したり、曲がれる道があればそちらの道に回避して、道を譲りましょう。
停止する際は、ウィンカーを出して減速した後に停車し、ハザードランプを点灯させて周囲の車へ注意を促しましょう。
ドライブレコーダーなどで動画撮影する
ドライブレコーダーを搭載していると分かるだけでも、あおり運転を抑止できると言われているので、「ドライブレコーダー搭載車」などのステッカーを貼るといいかもしれません。
実際にドライブレコーダーを搭載しているのであれば、自動的に録画されるのであおり運転の証拠が残せます。
ドライブレコーダーを搭載していない場合は、しつこく追い回されたり、何度も幅寄せされたりなど、危険なあおり運転をされたときには、同乗者にスマートフォンなどで録画してもらい証拠を残すとよいでしょう。
ただ、ちょっと車間距離を詰められたからといって、これみよがしに撮影すると、逆に相手を刺激することになるので撮影する場合も注意が必要です。
高速道路ではとにかく落ち着いて!PAやSAに避難
高速道路でのあおり運転は、非常に危険です。あおり運転を受けてしまったらパニックになってしまうことも考えられますが、とにかく落ち着いて、最寄りのPAやSAまで辿り着けるようにがんばりましょう。
非常駐車帯があれば駐車も可能ですが、非常駐車帯に停止したことで後続車にぶつけられて事故になったケースもありますので、高速道路ではこの方法はあまりお勧めできません。
出られるなら次の出口で高速道路から降りるというほうが安全かもしれません。
警察に通報
しつこいあおり運転に遭って困ったときは、早めに警察に通報しましょう。同乗者がいないときは、通話状態にしたまま膝の上や隣の座席などにスマホを置いて、大きな声で自分が今走っている場所を伝えます。
いざというときのために、スマホの緊急連絡の仕方を確認しておきましょう。
あおり運転をされた場合にやってはいけないこと
あおり運転をされた際に、ぜったいやってはいけないことがいくつかあります。
あおり運転をしているドライバーは、カッとして頭に血が上り冷静さを失っている場合が多いです。そのため、以下のような刺激してさらに怒りを増幅させるような行為、危険な行為は絶対にしないようにしましょう。
逆にあおり返す
あおられたことに腹を立てて、仕返しすることは絶対NGです。
あおった車に道をゆずった後、今度は自分が後ろからパッシングしたり、接近して追い回すなどした場合、相手が先にやったからなどということは関係なく交通違反になります。
相手のさらなる怒りを買うことにもなるので、相手が車を降りて迫ってくるトラブルに発展する可能性が高まります。
クラクションを鳴らす
あおり運転をやめさせるために、クラクションを鳴らそうと考える方もいるかもしれませんが相手を刺激するので逆効果です。
さらに悪質で執拗なあおり運転をされる可能性があります。
急ブレーキを踏む
あおり運転してくる車を驚かせてやろうと思い、また単に腹を立てて急ブレーキを踏もうと考える場合もあるかも知れませんが、これも絶対NGです。
追突事故が起きる可能性が大きく、相手や自分はもちろんのこと、他の車両を巻き込んでの大事故に発展する恐れがあります。
相手が車から降りてきた時の対処法は?
あおり運転に遭った際、穏便にやりすごしたいと思って路肩に停止して道を譲ったのにも関わらず、あおり運転をしてきた相手も停車し、こちらに向かってきた場合はどうすればよいのでしょう。
まず忘れてはならないのは、相手と直接接触できる状況にしてはいけないということです。ドアを開けないのはもちろんのこと、ドアロックもきちんとした上で警察に通報しましょう。
降りるように促されたり、窓を叩かれたりしてもひたすら耐えて、警察が来るのを待ちます。
きちんと話し合えばわかってもらえるはず、と考えてドアを開けてしまうと、自分だけでなく同乗している家族や友人などに危害が及ぶ恐れもあります。
あおり運転をしてきて、さらに車から降りて迫ってくるような相手は、話をしてもわかってくれないと思っておいたほうがよいでしょう。
まとめ
あおり運転の取り締まりが強化されても、依然としてあおり運転をするドライバーは存在します。
あおり運転に遭遇しないのが一番よいことですが、自分自身の運転が、あおり運転を誘発するようなものでないかチェックする必要もあります。
同乗者に「運転が荒い」「無理なタイミングで割り込む」など指摘されたことのある人、ハンドルを握ると気が大きくなるなど自覚がある人は、自分の運転を見直し、お気に入りのBGMを流すなどリラックスできる環境を整え、穏やかな気持ちで運転することを心がけましょう。