間もなくジメジメと雨が降り続く梅雨の季節がやって来ます…梅雨は恵みの雨をもたらしてくれる一方でいろんな災害トラブルも引き起こします。
この梅雨時は交通事故という人災が多発する季節でもあります。視界悪化による「追突事故」や「歩行者を跳ねる事故」、水たまりでブレーキ制御不能になる「スリップ事故」など大事故・死亡事故が毎年頻発しています。
無用な交通事故は避けたいものです。梅雨が始まる前の安全運転対策について少しだけお付き合いください。
梅雨の交通事故の実態
内閣府が発表した「交通事故死者数及び事故発生件数の月別推移」を見てみましょう。
交通事故が最も多い月は11月から12月という年の瀬がピークです。これは正月へ向けて物流の往来が激しくなり交通量が増えることが大きな要因です。その他には、3月、10月と季節の変わり目の行楽シーズンにも事故はよく起こりますが、さらに事故が多発している時期が6月、7月の梅雨時です。
平成25年は発生件数だけで見ると56,270件と12月の次に多く起きています。6月、7月は大型連休など無いにも関わらず交通事故の発生、死亡事故の件数が多いのはなぜでしょうか?
考えられる要因としては梅雨の長雨によるものです。
【参考】:内閣府ホームページ 交通事故死者数及び事故発生件数の月別推移(第1-26図)
梅雨に交通事故が多発する5つの要因
梅雨の交通事故と聞くと「雨による視界の悪化が原因」だと考える人が多いと思います。
もちろん、視界の悪化は大きな要因の一つですが、それだけでなく「ドライバーの心理状況」や「歩行者の行動癖」によるものが影響して事故を引き起こすケースもあります。
それぞれ見ていきましょう。
1.雨による視界の悪化
交通事故が多発する時間帯は季節関係なく薄暗い明け方と夕方というのは広く知られています。それで言うと梅雨時は空も曇天で薄暗い状態が続きますので視認悪化による事故が起きやすい状態にあります。
しかも雨が降るとさらに視界は悪くなりますし、ドライバーは運転時にフロントガラスの前面にワイパーを使用しますので視界の悪化に輪をかけることになります。梅雨は長雨が約1ヶ月半も続くわけですから事故が起きる必要条件が揃っている状態と言えます。
2.雨音による車内と車外の音の遮断
ドライバーは運転時には8割以上が“目からの情報”により車を運転すると言われていますが、その他は“音による情報“を頼りに運転します。
梅雨時の運転で悩まされるのが雨音の問題です。地面や車体に叩きつけられる雨音が外の音を遮断しますので耳から入る情報がおろそかになります。
前方や後方から来る車やバイクのエンジン音が聞こえないために「出会い頭の事故」が起きやすくなり、また子どもの遊び声が雨音でかき消されることにより「衝突事故」が発生しやすくなります。
梅雨時の運転時には「車内の音楽を消す」、「少しだけでも窓を開ける」など、外の音をキャッチしやすくなるような工夫が求められます。
3.雨(水たまり)による路面の悪化
雨が降り続くと道路には水たまりができますが、この水たまり大きくなるとタイヤが滑りやすくなり事故を起きやすくなります。
「ハイドロプレーニング現象」という言葉を覚えていますか?
運転免許の講習などでよく出てくる単語なので何となく覚えているという人も多いと思いますが、これは水たまりを走行中に起きる現象で「タイヤと路面の間に水が入ることで車がアイススケートのようにスーッと滑ってハンドルやブレーキが効かなくなる」というものです。
大きな水たまりの中をスピードを出して走行している際によく起こります。この減少が起きる原因は「スピードの出しすぎ」、「タイヤの溝の摩耗」、「タイヤの空気圧不足」の3つが主な原因です。
また、雨のスリップ事故はカーブを曲がる時にもよく起こります。急カーブが多い道路ではスピードを落として走行することが必要です。
4.歩行者の行動の問題
梅雨に交通事故が多いのはドライバーの過失だけが問題ではありません。歩行者は傘をさして歩くため視界が悪化します。また、雨を避けるために視線は下を向きがちになります。特に高齢者はその傾向が強くなります。
そのため自然と前方・後方の注意がおろそかになり事故に巻き込まれやすくなります。
また、子どもは雨の日でも構わず外で遊びますが、雨により「周囲がよく見えない」、「雨音で車のエンジン音が聞こえない」ために急に道を飛び出したり、道路を横切るケースがあります。
このようにドライバーも歩行者もお互いが「視認の悪化」、「聴力の悪化」になるため事故が増えることになります。
子どもを持つ親や高齢者がいる家庭は反射材を身に着けさせるなどの工夫が必要です。
【雨天時の歩行者の行動で気をつけるポイント】
- 子どもの急な飛び出しがある
- 雨に濡れたくないために無理な道路の横断がある
- 横断歩道を渡らない人が増加する
- 信号を無視する人が増える
- 傘をさして自転車運転する人が増える
5.ドライバーの心理的な問題
梅雨時の運転は平常時と違い「視界の悪化」、「路面の悪化」、「雨音」という3つの問題により集中が必要になります。そのためドライバーには心理的に大きな緊張とストレスが加わります。
また、道路は雨の影響で車の量が増えてノロノロ運転になりがちです。渋滞も多くなるためイライラすることが増えます。できるだけ目的地に早く着きたいという焦りが生じて運転が乱暴になり事故の増加を招くことがあります。
また、「雨の日は早く家に帰りたい」という心理も働きますので、家路を急ぐあまり一般道などでは車のスピードを出す人が増えます。
雨で視界が悪い中でスピードを出せば「スリップ事故」、「衝突事故」の確率が上がるのは言うまでもありません。
【ドライバーが気をつけたい雨天時の運転の心理面】
- イライライしない
- 急ぎすぎない、無理な追い越しはしない
- 歩行者の動きに十分注意する
- 車両の雨対策をおこない余裕を持って運転する
- 大雨がきたら運転を停止する、休憩する
梅雨時の安全運転対策
ここまで梅雨時に交通事故が起きる理由について解説しましたが、ここからは事故を起こさないための安全運転対策について説明します。
運転時に気をつけるべきポイントと梅雨に入る前にチェックしたい車のメンテナンスについて解説します。
運転編
まず梅雨の運転の注意点ですが、「視界の悪化」、「路面の悪化」、「聴力の悪化」という3つを意識して丁寧な運転が必要です。ドライバー自らは「スピードを出し過ぎない」、「車間距離を空ける」、「ハンドルをしっかり持つ」など基本に忠実な運転を心がけるべきです。
さらに周りを走る車やバイクも同じく周囲がよく見えていないということも意識しなくてはなりません。「曲がる際にはウィンカーは早めに出す」、「ブレーキは早めに踏む」など、ランプの点滅により後続の車にこちらの意図を早めに知らせることが安全運転対策です。
また、歩行者の急な飛び出しにも対応できるように、狭い道は「ゆっくり運転する」、「ハイビームを点灯する」、「クラクションを鳴らす」など、車の存在を歩行者にも知らせる必要があります。
- スリップ事故を起こさないようにスピードを出し過ぎない
- スピードを出しての追い越し運転はしない
- 視認悪化による追突事故をさけるために車間距離を空ける</li.
- 薄暗くなったら早めにライトを点灯する
- 水たまりにハンドルを取られないようにしっかりと握る
車のチェックとメンテナンス編
雨が降り続く時期はマイカーにも梅雨対策が必要です。具体的には「ワイパー」、「フロントガラス(窓ガラス)」、「タイヤの溝」のチェックとメンテナンスです。
車の「視界を良くする」、「スリップを防ぐ」という2つの安全対策をおこなうことで事故の発生を未然に防げますし、雨天の運転ストレスも劇的に改善します。
ワイパーの交換
ワイパーは雨天時の安全運転の保安部品となるものです。基本的には消耗品ですので定期的な交換が必要になります。まずはワイパーが正しく動作するかをチェックするのはもちろんのこと、ワイパーのゴムの劣化、ワイパーブレード(本体)が劣化していないかの確認が必要です。
交換時期は車の使用頻度にもよりますが一般的にワイパーのゴムで約半年、ワイパーブレードで約1年と言われています。
また、ワイパーを動かした時に以下のような症状が出たときには交換するタイミングです。
- スジ状の線が残る
- ビビビという音がする
- 拭きムラが出る
- 水が滲んで残る
油膜を取る、撥水コート
車を運転しているとフロントガラスや窓には自然と汚れや油膜がこびりつくものです。油膜とは、フロントガラスの表面上に付着した薄い油の膜のことです。この油膜がはりついた状態になると撥水が悪くなるため視界の悪化を招きます。
梅雨時は雨により油膜が付くためフロントガラスやサイドミラーなどはこまめなお手入れが必要になります。
フロントガラス部分の洗浄ではカーシャンプーなどを使い一度洗い流します。そしてガラスコーティングを塗って拭き取れば、雨をはじき飛ばして良好な視界が保たれるようになります。
フロントガラスの内側にもドアや窓の開閉時にゴミや汚れが付着しますが、前面と違ってしつこい油膜が付くことはありませんのでタオルを使って乾拭きすれば見やすくなるでしょう。
また、サイドミラーにはミラー専用のコーティングを使えば雨でも左右の視界が良好になります。
タイヤの交換
前述したようにハイドロプレーニング現象が起きる大きな要因の一つがタイヤの摩耗です。また、雨のスリップ事故をなくす意味でも「タイヤの溝」がすり減っていないかのチェックは欠かせません。
タイヤ交換のポイントは「溝のすり減り」がどの程度かによります。一般的には新しいタイヤの溝が約4割ほど減ったら交換のタイミングと言われています。
タイヤの溝は、例えば高速道路のような長い直線を走っているときはさほど擦り減らないものですが、ブレーキをかけた状態でカーブを曲がったり、駐車する際にハンドルを左右に何度も切り返すと摩擦が強くなりタイヤの溝の擦り減りが大きくなります。
山道などカーブが多い場所を走行する機会が多い車ならタイヤの溝のすり減り具合をこまめにチェックする必要があるでしょう。
車の窓ガラスの曇りを素早く取る方法
「フロントガラスの内側が急に曇って前が見えなくなりパニックになった…」という経験はドライバーなら誰でもあると思います。
この原因は「車に持ち込んだ濡れた傘についた水分の蒸発」、「外気の湿度よりも室内の湿度が高い」ということにより起こります。つまり梅雨の時期には車の窓の曇りは起きやすくなります。
この曇りを素早く取るためには、メーターの下にある「A/Cスィッチ」をONにして次に「デフロスタースイッチ(温泉マークに似ている)」をONにすればすぐに曇りが取れます。
*A/Cとはエアコンのことでデフロスターとは着霜・着氷・結露を防止するための装置のことです。
まとめ
毎日のように雨が降り続く梅雨の時期に交通事故が多発する理由についてご理解いただけたと思います。
しかし、「スリップ事故」、「ハイドロプレーニング現象」怖いですね。
備えあれば憂い無しですので、梅雨に入る前にしっかりと車のチェックとメンテナンスをする。そして、雨の運転でもストレスが無いような状態で安全運転を心がけたいものです。