高齢化が進むに連れ、ドライバー全体に占める高齢者の割合も高くなっています。そうなると心配されるのが高齢ドライバーによる車の事故。
メディアでも、高齢ドライバーによる高速道路の逆走が問題になったり、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる痛ましい事故が取り上げられたりします。
特にブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故は、駐車場など本来ならスピードの出にくいはずの場所で突発的に発生し、大惨事につながるケースも珍しくありません。
今回は、このようなブレーキやアクセルの踏み間違いによる事故を高齢者が起こしやすいのはなぜなのか?また予防策はあるのか?など解説します。
年齢が上がるにつれて増える、ブレーキとアクセル踏み間違い事故
アクセルとペダルの踏み間違えによる事故は、運転歴が浅い24歳以下のドライバーの割合が高く、最も少ないのが30代~50代、その後60代後半から増え始め、さらに75歳以上の高齢ドライバーで最も高くなっています。
65歳以上の高齢ドライバーは、2008年~2018年の10年間でおよそ2倍に増えています。今後、高齢化が加速することで全ドライバーに占める高齢者の割合も高くなり、高齢者が起こしやすい事故の発生件数の増加が懸念されます。
高齢者がブレーキとアクセルを踏み間違える理由は股関節の硬さやパニックが原因
高齢者が、ブレーキとアクセルを踏み間違えやすい理由で大きいものは、やはり加齢による身体的な衰えです。運転に影響を与える身体的な衰えには、以下のようなものがあります。
・視覚機能の低下
・集中力、注意力の低下
・情報処理能力の低下や間違い
・体の柔軟性の低下
・反射神経の鈍化
・身体の敏捷性の低下(素早く思ったとおりに動けない)
スポーツをする時などは、高齢者自身がこのような自らの衰えを自覚できますが、運転の場合には身体を動かすことが少ないため実感するのが難しいことがあります。
そのため、運転が上手だと自負していると、若い頃と同じスピードで飛ばしたり、カーブや住宅街でも減速しないなど危険な運転をしてしまう場合もあります。高齢な家族が危険な運転をしていると感じたら、しっかりと注意することも必要です。
さらに、交通事故総合分析センターでは、高齢者の股関節が固く開きにくくなっていることも、踏み間違いによる事故を引き起こす要因であると指摘しています。
高齢ドライバーは、股関節を動かさずに操作できるように、脚を開いて座る傾向があると言います。そのため、右足がそもそもアクセルペダルに近づきやすい位置になります。
さらに、右後方を目視するため身体をひねった際、右足先がアクセルペダルに乗ってしまい、ブレーキを踏んだつもりがアクセルだったという事例も報告されているそうです。
また、ブレーキやアクセルの踏み間違いによる事故は、何らかの危険(人の飛び出し、車が横から急に出てきた)を認知し、慌てたり、パニックに陥ったことから発生するケースが多いのも特徴です。
高齢者の場合、自分がブレーキとアクセルを踏み間違えたことにパニックを起こし、さらにアクセルを踏み込んでいまう、というケースも見られます。
駐車場やパーキングエリアで多い、踏み間違いによる事故
ブレーキやアクセルの踏み間違いによる事故は、一般道よりも駐車場、高速道路のパーキングエリア、コインパーキングなどで多くなっています。
事故のパターンは3つあり、1つめは、駐車場所や出口へ向かう直進中に起こる事故です。直進中に歩行者や他の車の存在に気付いたとき、また駐車場所を探す過程で減速したとき、ブレーキを踏んだつもりがアクセルを踏んでしまうというケースです。
2つめは、発進時です。駐車場所から発進するときにいきなりアクセルを強く踏んでしまうケースのほか、何度か切り返しをして車の向きを調整する中で踏み間違えてしまう場合もあります。
3つ目は、後退するときです。前述したように、右後方へ身体をひねって目視した際、右足がアクセルペダルに乗ってしまったり、切り返しを行う過程で単純に踏み間違えたりすることもあります。
駐車場やパーキングエリアなどでの運転は、限られたスペースのなか、アクセルやブレーキを踏み替えながら切り返す必要があり、また周囲の車や歩行者の動きにも注意が必要になります。
そのため、視覚力、集中力、注意力などが衰え、身体の柔軟性を欠いた高齢者にとって難易度の高い運転シーンであることから、高齢者による事故が相次いで発生していると考えられます。
「誤発進抑制機能」など安全装置を搭載した車で、高齢者による事故を防ごう!
高齢者によるペダルの踏み間違え事故が多いことはここまででお伝えしましたが、高齢になったからといって、車の運転をしてはいけないわけではありません。
しかし、人生の終盤で痛ましい事故の加害者になり辛い思いをすることは、高齢者自身にも、その家族にとっても不本意なことのはずです。
そういったことを防ぐためにも、運転を続けたいと考えている高齢者には、「自動ブレーキシステム」や「誤発進抑制機能」などの安全装置が搭載された車を選ぶのがおすすめです。
高齢の両親にプレゼントしたら喜ばれますし、買い替えのタイミングが合えば「こんな安全な車があるよ」と進めてみるのもよいでしょう。
予算的に厳しい場合は、今乗っている車に後付けできるタイプの「急発進防止装置」も発売されているので、こちらを導入するものよさそうです。
まとめ
高齢な家族の運転を危なっかしいと感じるようになったら免許の返納を検討しなければいけない場合もあります。本人がそう思えない場合は、家族が進言する必要もあります。
車を運転できないことを寂しく感じたり、行動範囲が狭くなることを嫌だと思ったりすることもあると思います。かたくなに免許返納を嫌がる人もいるでしょう。
しかし「言っても無駄だから」と諦め、事故が起こったあとから、あのとき免許の返納をさせておけば、と後悔しても遅いのです。