交通事故に遭ってしまった時、自覚症状がないと「特に痛みはないのに大げさかも」と病院に行くことを躊躇する人もいるかもしれません。
しかし、交通事故直後で気が高ぶっていて痛みを感じにくい場合も多くなっています。また、事故後数時間から数日して症状が現れる場合もあるので、自己判断で病院に行かないことは非常に危険です。
実際、すぐに病院に行かなかったために、事故と症状の因果関係を認めてもらえず、賠償金が受け取れないという事態になることもあります。
あの時病院に行っておけば・・・と後悔しないために、今回は「なぜ交通事故被害にあったらすぐに病院に行くべきなのか」について解説します。
交通事故に遭ったら痛みがなくてもまずは病院へ
事故に遭って、誰が見ても怪我をして見えるような場合、まずは何をおいても病院に行こうという流れになるでしょう。
ただ、外傷がなく本人も痛みを感じる状況にない場合、特に病院に行く必要はないと判断する人もいます。また、仕事など予定のある人や忙しい人は、病院で長く待たされるのを嫌い、自覚症状が出たら後で病院に行けばいいと考えるかもしれません。
しかし、事故後自覚症状がなくても必ず病院に行かなければいけない理由があるのです。
交通事故直後は自覚症状が出ない場合がある
「特に痛みがないから大丈夫」と自己判断するのは危険です。なぜなら、自己直後に痛みを感じないことには4つのケースが考えられるからです。
興奮していて感覚が麻痺している
交通事故は突然のアクシデントです。事故直後は、興奮状態になり大量のアドレナリンが分泌され、痛みが麻痺する場合があります。
アドレナリンは、
- ひどく興奮した時
- 生命の危機を感じた時
- 激しく怒りを覚えた時 など
に分泌されるホルモン物質で、痛みを麻痺させる効果があります。
そのため、事故直後は痛みがなかったものの、自宅に帰ったら急に痛みが出て、受診をしたら骨折していたというケースもあります。事故現場で痛みを感じなくても、病院で診てもらいましょう。
脳内出血や脳の損傷は痛みが出ないまま重篤な状態になることがある
実は、脳には痛点がありません。ですから、脳内出血を起こしていたとしても、事故直後は何の異変も感じないことがあります。
数時間経って自覚症状が出た時には、すでに重篤な状態・・・ということが起こる可能性があります。また、脳は繊細な細胞ですから、小さな損傷でも後から体の機能障害につながることもあります。
特に、事故の時に頭部を強くぶつけた場合などは、自覚症状がなくても病院で詳しい検査を受けることをおすすめします。
交通事故後、数日から数ヶ月後に自覚症状の出るものもある
事故後数日経過してから症状が出るものもあります。たとえば、頸椎捻挫、いわゆる「むちうち症」です。
首の痛み、痺れ、めまい、倦怠感、頭痛など様々な症状がでるむちうち症です。事故直後から症状が出ることもあれば、数日後から1ヵ月後に症状が出るケースもあります。
本当に何もない
交通事故に遭っても、特にたいした自覚症状のなく、本当に体に損傷がなかったということもあります。いちばん喜ばしいことですが、万が一、上の3つのケースだった場合は取り返しのつかないことになるでしょう。
そのため、絶対に自己判断せず、ひとまず病院で診察をしてもらいましょう。
怪我や体のチェックのためだけではない?事故後すぐに病院に行く理由
たいした怪我もなく自覚症状がなくてもすぐに病院に行ったほうがいい理由としては、医師の診断書が必要になる場合もあるからです。
特に、その場では何ともなくても後日症状が出てきた場合、交通事故後すぐに診察を受けていなければ、「交通事故によるものだ」という因果関係を証明できないことがあります。
交通事故後に病院に行かなかったことで起こった悲劇
これは実際にあったケースです。車を運転していたAさん。赤信号で停止していたところ、脇見運転の後続車に追突され、首に激しい衝撃を受けました。
ただ、Aさんは特に自覚症状もなかったので、仕事が忙しく検査が面倒だという理由から、病院へ行きませんでした。すると、その後目のかすみを感じるようになり、2ヶ月後、1.0あった視力は0.02まで下がってしまい、慌てて相手方の保険会社に慰謝料請求をしました。
しかし、事故後すぐに病院に行っていなかったため、視力低下と交通事故の因果関係が認められませんでした。
結局、Aさんは後遺障害認定も受けられず、賠償金を払ってもらえなかったのです。
すぐに病院に行かなければ因果関係が証明できない
このように、事故から時間が経過してから病院に行くと、その症状が「本当に事故によって起こったものか」証明できなくなってしまうことがあるのです。保険会社への賠償金の支払い請求には必ず「医師の診断書」が必要です。
病院から事故と症状の因果関係を証明する診断書をもらえなければ、保険会社から治療費や賠償金も払ってもらえないということが起こるのです。
このような悲しい結果にならないためにも、自覚症状がなくてもすぐに病院で診察・検査をしてもらうことが重要になってくるのです。
また、最初は物損事故として届けを出したものの、後から痛みが出てきた場合には「人身事故への切り替え」も可能です。しかし、その切り替えの期限は1週間から10日以内と言われており、これにも医師の診断書は必要ですから、やはり事故に遭ったら早めの受診をしましょう。
判断に迷う場合は、すぐに弁護士に相談しましょう
交通事故に遭ったものの、「このくらいの怪我で人身事故にしていいのかな?」「こんな症状が出てきたけど、もう一度病院に行ったほうがいいのかな?」など、判断に迷った時は弁護士への相談を検討されると良いでしょう。
交通事故に強い弁護士なら、医療や後遺障害についても詳しいため、治療についても「適切なアドバイス」をすることができます。
後遺症でお悩みの方の中には、つらい症状の中で保険会社との示談交渉をすることに苦痛に感じて示談書にすぐにサインする方がいます。それにより被害に応じた適正な慰謝料を受け取ることができなくなります。
それが弁護士に相談・依頼することで保険会社が提示してきた金額よりも高額な賠償金を得られる可能性が高くなります。
苦しい交通事故の被害を少しでも良い結末にするために、実績・経験を持つ弁護士に相談されることをおすすめします。