任意保険基準とは?その慰謝料と計算方法

任意保険基準とは?その慰謝料と計算方法

「任意保険基準」とは、交通事故における任意保険会社の慰謝料算定基準です。交通事故の示談で加害者側の任意保険会社から提示される慰謝料の額は、任意保険基準にもとづき計算されます。

任意保険基準の金額は、そもそも慰謝料として適切な金額なのでしょうか?この記事では、交通事故の慰謝料の計算方法を説明し、任意保険基準の金額が多いのか少ないのかを考えてみます。

1.任意保険基準とは?

(1)任意保険基準とは何か?

「任意保険基準」とは、交通事故の慰謝料を算定する際に任意保険会社が基準として用いる金額のことです。

交通事故に遭ったときには示談による解決を図るのが通常です。示談の際には任意保険会社は慰謝料を含めた損害賠償金額を提示しますが、そこで任意保険会社が提示する慰謝料は、ほとんどのケースで任意保険基準にて計算されます。

任意保険基準は、慰謝料の基準としては低額です。自賠責基準と金額面でさほど変わらないというケースもあります。その理由は、保険会社が自社の都合によって設定した慰謝料基準のためです。

(2)任意保険基準の慰謝料計算方法


この表はかつて、各保険会社が使用していた入院・通院の統一の任意保険基準です。保険会社は、慰謝料算出の際に、この統一の任意保険基準を使用していたのですが、現在では保険会社ごとに個別に任意保険基準を設定するようになりました。保険会社はその基準を一般に公開していないため、それぞれの会社の基準は分からないのが現状です。

ただし、現在の基準は各保険会社が過去に使用していた統一の任意保険基準がベースになっているようですので、上記の任意保険基準の慰謝料計算式を用いれば慰謝料相場はある程度算出することは可能です。

そのため、任意保険基準の慰謝料相場の計算方法としては、上記の数値を元に算出すれば大体の金額は把握できます。

(慰謝料金額の例)

  • 入院5ヶ月のみの場合には、113.4万円
  • 通院5ヶ月のみの場合には、56.8万円
  • 入院2ヶ月、通院6ヶ月の場合には、102万円

(3)任意保険基準と弁護士基準の慰謝料額の差

交通事故の慰謝料算定基準には、任意保険基準のほか、「自賠責基準」「弁護士基準」と呼ばれる基準があります。3つのうち最も高額なのが弁護士基準です。
以下、任意保険基準と弁護士基準を比較した一例をご紹介します。ご覧のように任意保険基準は弁護士基準と比較して金額は少ないということが分かります。

■入通院慰謝料(例 入院期間1か月、通院期間5か月の場合)

任意保険基準 76万8,000円
弁護士基準 105万円
金額差 282,000円

■後遺障害慰謝料(例 後遺障害14級の場合)

任意保険基準 32万円
弁護士基準 110万円
金額差 780,000円

■死亡慰謝料(例 被害者が一家の支柱である場合)

任意保険基準 1,700万円
弁護士基準 2,800万円
金額差 1,100万円

つまり、交通事故で被害を受けたならば、慰謝料は弁護士基準で算出してもらわないと大きく損をすることになります。

(4)任意保険基準の慰謝料は少ない

前述しましたように、任意保険基準の慰謝料は、弁護士基準よりかなり低い金額です。任意保険基準の慰謝料で示談すると、慰謝料の金額が本来もらえるはずの金額よりも少なくなってしまう可能性があります。

交通事故の示談をする前に、任意保険基準の慰謝料について理解しておき、できるだけ多くの慰謝料を獲得できる方法を知っておくことが大切です。

2.そもそも、交通事故の慰謝料とは?

(1)交通事故の損害には財産的損害と精神的損害がある

交通事故の被害者は、加害者に対して損害賠償を請求することができます。賠償を請求できる損害は、財産的損害と精神的損害の2つに分かれます。

財産的損害とは、交通事故による財産(お金)の損失です。交通事故でかかったケガの治療費や入院費は、財産的損害になります。また、交通事故で会社を休んで給料が減ってしまった場合にも、財産的損害があったとして休業損害の賠償を請求できます。

精神的損害とは、精神的・肉体的な苦痛のことです。交通事故では、ケガなどによる苦痛を味わったこと自体を損害として、加害者に賠償を請求できます。精神的苦痛に対する賠償金は、慰謝料と呼ばれます。

(2)交通事故にあったら慰謝料請求ができる

交通事故の財産的損害については、お金の損失があったことを証明できなければ、原則として賠償を請求できません。一方、精神的損害に対する慰謝料は、交通事故にあったというだけで、当然に請求できます。

精神的苦痛というのは、そもそもお金に換算することはできません。けれど、交通事故にあった以上、精神的・肉体的苦痛を受けていることは明らかです。特に苦痛を証明しなくても、慰謝料請求は当然に認められます。

3.交通事故の慰謝料の種類

交通事故で発生する慰謝料は、次の3つに分かれます。

(1)入通院慰謝料(傷害慰謝料)

交通事故にあったら、ケガによる入通院を余儀なくされます。入通院による精神的・肉体的苦痛に対する慰謝料が入通院慰謝料です。ケガに対する慰謝料という意味で、傷害慰謝料とも呼ばれます。

(2)後遺障害慰謝料

交通事故によるケガが完治せず、後遺障害となることがあります。この場合には、後遺障害で苦痛を味わうことになる慰謝料として、後遺障害慰謝料を請求できます。

(3)死亡慰謝料

交通事故が原因で亡くなった場合には、死亡慰謝料を請求できます。死亡した本人は慰謝料を受け取れないので、死亡慰謝料は相続人である遺族が受け取ることになります。遺族は、家族を交通事故で亡くしたことについての遺族固有の慰謝料も受け取れます。

4.交通事故の慰謝料の計算方法

任意保険基準とは?その慰謝料と計算方法

(1)交通事故の慰謝料の相場は?

慰謝料というのは、本来お金に換算できない精神的苦痛を、無理矢理お金に置き換えたものです。交通事故で実際に受けた苦痛は人それぞれでしょう。しかし、「自分は1億円の苦痛を味わった」と主張しても、それを証明するのは困難です。

慰謝料の金額を出すときには、算定基準が必要になります。算定基準により、慰謝料の相場を知ることができます。

【参考】:交通事故慰謝料の計算方法と引き上げる方法

(2)交通事故の慰謝料算定基準は3つある

現在、交通事故の慰謝料算定のため実務で使われている基準は1つではありません。次のような3つの異なる基準が存在します。

①自賠責基準
自賠責(自動車損害賠償責任保険)は、交通事故に対する最低限の補償を目的とし、法律によって設けられている強制保険です。損害賠償金として自賠責から支払われる金額は、国で決められています。

慰謝料について、自賠責から支払われる金額を「自賠責基準」と呼ぶことがあります。交通事故の慰謝料としては、少なくとも自賠責基準の金額は受け取れるということです。

②任意保険基準
任意保険は、自賠責で足りない分の補償を受けるために、運転者が任意で加入する保険です。交通事故にあったときには、自賠責から最低限の損害賠償金を受け取り、自賠責の補償を超える分は任意保険会社に払ってもらうことになります。

慰謝料についても、自賠責の上限を超える分は、任意保険から支払いを受けられます。ただし、任意保険でも、交通事故の被害者に払う慰謝料額の基準は決まっており、これを「任意保険基準」と呼びます。

任意保険基準の金額は、各保険会社で異なりますが、大きな違いはありません。任意保険は自賠責を補うものですから、任意保険基準の慰謝料額は、自賠責基準よりは高くなります。

③弁護士基準(裁判所基準)
交通事故の慰謝料算定基準には、弁護士会が過去の裁判例をもとに作成した「弁護士基準(裁判所基準)」もあります。弁護士基準の慰謝料額は、3つの慰謝料算定基準の中で最も高額です。

弁護士基準での算定方法については、日弁連交通事故相談センター本部が発行している「交通事故損害額算定基準」(青本)や、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(赤い本)で参照できます。

裁判では裁判官は過去の判例を参考に判決を出しますから、交通事故で裁判になった場合には、弁護士基準の慰謝料額が受け取れる可能性が高くなります。

5.示談で保険会社が提示する慰謝料は任意保険基準

(1)交通事故は示談により解決するのが一般的

交通事故の被害者となれば、加害者に損害賠償金を請求できます。しかし、損害賠償請求のため裁判を起こさなければならないとなると、被害者にとって負担になる上に、解決までに時間がかってしまいます。

こうしたことから、交通事故の場合には、示談による解決を図るのが一般的な方法となっています。示談とは、被害者と加害者が、損害賠償金額について裁判外で合意することです。金額の多い少ないにかかわらず、被害者と加害者が示談で合意すれば、損害賠償金額はその金額になります。

(2)示談は任意保険会社との間で行う

交通事故の損害賠償金を払うのは、実際には加害者が加入している自動車保険会社です。自賠責分は金額が決まっているため、示談で金額が決まるのは任意保険から支払われる部分です。そのため、被害者は任意保険会社と示談することになります。

(3)すぐに示談に応じると任意保険基準の金額しかもらえない

示談の際には、通常、任意保険会社の方から損害賠償金額の提示があります。損害賠償金のうち、特に金額の差が出やすいのが慰謝料です。慰謝料には3つの算定基準があり、それぞれで金額が違うからです。

任意保険会社が慰謝料を計算するときには、任意保険基準を使っています。任意保険基準は、自賠責基準よりは高くなりますが、弁護士基準よりは低い金額です。

つまり、裁判を起こせば弁護士基準の慰謝料額が受け取れるはずなのに、示談をすると任意保険基準の慰謝料額しか受け取れない可能性があるということです。

6.交通事故の解決を弁護士に依頼するメリット

交通事故の解決は、弁護士に依頼できます。弁護士には、裁判だけでなく、示談交渉も任せられます。弁護士が被害者の代理人として保険会社と示談交渉する場合には、弁護士基準にもとづき金額を提示します。

弁護士基準の慰謝料額は、任意保険基準よりも高額です。弁護士に示談交渉や裁判を依頼すれば、獲得できる慰謝料の金額が増える可能性が高くなります。

7.まとめ

交通事故の示談の際、保険会社から提示される慰謝料は、任意保険基準で計算されています。任意保険基準の慰謝料額は、慰謝料として十分な額と言えるものではありません。裁判になった場合には、もっと多い弁護士基準の慰謝料を獲得できます。

実際には、裁判をしなくても、弁護士に示談交渉を依頼すれば、慰謝料金額が増えるのが通常です。保険会社から提示された損害賠償金額に納得がいかない場合には、弁護士に相談することをお勧めします。

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