高次機能障害の症状がわかる
高次脳機能障害で認定される主な等級がわかる
高次機能障害でもらえる慰謝料の相場がわかる
高次脳機能障害を負った際の後遺障害等級認定のポイントがわかる
交通事故で高次脳機能障害を負った場合は、慰謝料が高額になる場合が多いです。しかし、高次脳機能障害は外傷がないことも多く、第三者から見ると、異常がないように見えやすい症状と言えます。
それもあって、被害者本人や家族は後遺症に悩まされているにも関わらず後遺障害として認定されない事もあります。そのため、高次脳機能障害で後遺障害等級を申請する際は、しっかりとした準備を行う必要があります。
この記事では、「高次脳機能障害の症状」「認定される主な等級と慰謝料の相場」「後遺障害等級認定のポイント」について解説します。
高次脳機能障害とは
高次脳機能とは、「認知」「思考」「記憶」などの人間の脳の働きの事です。具体的には、周囲の出来事を理解し、その出来事に対して正しい行動を選んだり、物事を記憶するなどの脳の働きのことを指します。
では高次脳機能障害とは、どのようなものでしょうか?
簡潔に言うと、「認知」「思考」「記憶」などに障害が起こり、忘れっぽくなったり、周囲の出来事に対して適切な行動を選べなくなる症状です。
交通事故では、頭部に激しい衝撃を受けることで高次脳機能障害を発症することがあります。高次脳機能障害は、外傷のある骨折などと違い、目に見えない後遺症であることが特徴の一つとなっています。そのため、症状は第三者から理解されにくいため、後遺障害等級の認定が難しくなるといったことが起こります。
高次脳機能障害の主な症状
「高次脳機能障害」の症状は、大きく以下の3つに分けられます。
- 認知障害
- 行動障害
- 人格変化
以下でそれぞれの詳しい症状について解説します。
認知障害
認知障害は、記憶力や集中力に対する障害です。主な症状としては「忘れっぽくなり直前に話した内容も思い出せない」「行動を計画して実行することが出来ない」「気が散りやすい」などがあります。
行動障害
行動障害は、思考と行動に関する障害です。主な症状は「周囲の状況に合わせた適切な行動が出来ない」「同時に複数の事ができない」「行動を抑制することが出来ない」などです。
人格変化
人格変化は、衝動性や幼稚性などを引き起こす障害です。主な症状は「怒りっぽくなる」「自発的な行動がなくなる」「自己中心的な行動が多い」などがあります。
高次脳機能障害での主な等級と慰謝料
高次脳機能障害で認定される主な等級と慰謝料は以下の表の通りです。
等級 | 症状 | 慰謝料(自賠責基準) | 慰謝料(弁護士基準) |
---|---|---|---|
1級 | 生命維持に必要な動作において常に他人の介護を要する状態 ※食事・入浴・用便・更衣などの介助や、痴呆症などにより常に監視を必要とする |
1650万円 | 2800万円 |
2級 | 生命維持に必要な動作において随時他人の介護を要する状態 ※食事・入浴・用便・更衣などの介助や、認知症などにより随時監視を必要とする |
1203万円 | 2370万円 |
3級 | 生命維持に必要な動作は可能だが、労務ができない状態 ※意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力、社会行動能力のうち1つ、または2つ以上の能力が全部(大部分)失われていること |
861万円 | 1990万円 |
5級 | きわめて軽易な労務以外はできない状態 ※意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力、社会行動能力のうち1つ、または2つ以上の能力が半分程度(大部分)失われていること |
618万円 | 1400万円 |
7級 | 軽易な労務しかできない状態 ※意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力、社会行動能力のうち1つ、または2つ以上の能力が相当(半分)失われていること |
419万円 | 1000万円 |
9級 | 通常の労務はできるが、社会通念上、就労可能な職種の範囲が制限される状態 ※意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力、社会行動能力のうち1つ以上の能力が相当程度失われていること |
249万円 | 690万円 |
【参考】:神経系統の機能および精神の障害に関する障害等級認定基準について|厚生労働省
脳障害だけに関わらず、交通事故において後遺障害が残ってしまった場合、等級認定が適切か検証することは非常に大切になってきます。
等級と自身の症状を照らし合わせてみて、正しい等級になっているかどうか専門家に相談しましょう。
後遺障害等級申請に必要な書類
後遺障害等級に必要な書類は以下の表の通りです。
必要資料 | 作成者 |
---|---|
保険金(共済金)・損害賠償額・仮渡金支払い請求書 | 請求者自身(代筆可能) |
交通事故証明書(人身事故) | 自動車安全運転センター |
事故発生状況報告書 | 請求者ご自身(代筆可能) |
診断書(事故発生から治療終了まで) | 診察した医師 |
後遺障害診断書(症状固定後) | 診察した医師 |
頭部の画像検査資料(CT・MRIなど) | 治療を受けた医療機関 |
診療報酬明細書 | 治療を受けた医療機関 |
通院交通費明細書 | 請求者ご自身(代筆可能) |
請求者の印刷証明書 | 印鑑登録をした市区町村 |
【参考】:脳外傷による高次脳機能障害の後遺障害認定について|損害保険料算出機構
後遺障害等級を申請する際には、高次脳機能障害を負った被害者の方は、資料を書くのが困難なこともあるため、代筆可能な資料はご家族の方が書かれると良いでしょう。
また、提出する書類に不備がないか、実際の症状が診断書に反映されているかを弁護士など専門家にチェックしてもらうことで適切な認定が可能になります。
弁護士に後遺障害等級申請のサポートを受けることをおすすめします。
後遺障害等級認定のポイント
後遺障害等級の認定は損害保険料率算出機構という機関が行っています。この損害保険率算出機構は高次脳機能障害の後遺障害等級を認定する際のポイントとして以下の3つを挙げています。
- 意識障害についての所見があること
- 脳の損傷の画像所見があること
- 日常生活または社会生活に制約があること
以下でそれぞれ詳しく解説します。
意識障害についての所見があること
高次脳機能障害は、事故後に意識障害がある場合に起こりやすいのが特徴です。
具体的には事故直後に6時間以上意識障害があった場合や軽度の意識障害が1週間以上続いた場合などに高次脳機能障害が残る可能性は高くなると言われています。
そのため、そのような症状があった場合は、事故後にできるだけ早く通院して、医師に症状をしっかり伝えて「意識障害についての所見」を作成してもらいましょう。
脳の損傷の画像所見があること
高次脳機能障害での後遺障害等級認定では、脳への異常が確認できることが重要となります。
なので、診察時には必ずMRI検査・CTスキャン・脳波検査などを受けましょう。そして、等級申請の際には画像所見を示すようにしましょう。
日常生活または社会生活に制約があること
高次脳機能障害での後遺障害等級認定では、日常生活または社会生活に制約があることも大事になってきます。例えば、仕事や学業への影響のように社会生活への支障や制約があることを明らかにする必要があります。
社会生活への制約とは具体的に以下のような症状です。
- 作業を長く続けられない
- 自分で計画立てて物事を実行できない
- 新しい出来事を覚えることが出来ない
しかし、軽度の高次脳機能障害の症状は一般の人でも当てはまるものが多くなっています。
それもあって、初めて診療にあたる医師は「後遺障害が残っているかどうか」「事故との因果関係」の判断が付きません。
また、高齢者の方は認知症、子供の場合は発達障害というように決めつけられることがありますので注意が必要です。
そのため、医師に対して、被害者本人だけでなく家族のように身近な方から事故後にどのような変化があったのかを報告してもらうことが重要になります。
被害者の方になんらかの異常な行動があったら、そのたびにメモを残しておくと良いでしょう。
まとめ
高次脳機能障害は、第三者から見た場合、特に異常があるようには見えないケースが多くなっています。そのため、後遺障害等級認定のためには、実際の症状が記入された診断書を作成して申請することが重要になります。
高次脳機能障害は被害者本人だけでなく家族のサポートが重要です。ご家族や周囲の方々は、被害者が事故前と後でなんらかの異常を感じられた場合は、その書状についてメモを取ることをおすすめします。それらを医師や弁護士に伝えて診断書に反映させるように努めましょう。
また、法律などの知識に明るくない方は、後遺障害等級申請や保険会社との示談交渉が難しいこともあります。もし不安がある方は、一度弁護士に相談をすることをオススメします。相談をすることで、被害者の方の症状においての認定される等級や具体的な申請のやり方がわかります。
高次脳機能障害の症状が出ていたら、しっかりと後遺障害等級申請の準備を行い、適切な等級が認定されるよう対応しましょう。