交通事故でケガをしてしまった場合、治療に時間がかかり仕事を休むこともあります。働けない期間が長くなれば、経済的な負担も大きくなっていくでしょう。
被害者の場合、治療費や慰謝料などの「損害賠償金」は加害者に請求できますが、「治療終了後・示談成立後」となってしまいます。ただし、すぐにお金が必要な場合など、損害賠償金の一部を前払いしてもらうことができるのです。
この記事では、賠償金の前払い制度である「仮渡金」「内払金」についてご紹介していきます。
すぐにでも治療費を受けたい場合に利用する「仮渡金」
交通事故の被害でケガをした場合、その治療費は高額になることが多々あります。
ひどいケガの場合、治療費を捻出するだけでも苦労することがあるのです。
治療費の支払いが大変なケースでは、治療費などの「前払い」を加害者の保険会社に請求できるのです。これを「仮渡金請求」と言います。
この「仮渡金請求」は、自賠法第17条で規定されています。
自賠法第17条(被害者に対する仮渡金)第1項
保有者が、責任保険の契約に係る自動車の運行によつて他人の生命または身体を害したときは、被害者は、政令で定めるところにより、保険会社に対し、政令で定める金額を16条第1項の規定による損害賠償額の支払のための仮渡金として支払うべきことを請求することができる。
事故の被害に遭って、当面の治療費や生活費に困る方は必ず活用するべきです。
仮渡金の請求方法・支払い時期について
「仮渡金」を請求する場合、加害者の自賠責保険に直接請求しなければなりません。
そのため、まずは加害者側の保険会社に連絡をとり、「仮渡金制度を利用したい」と伝えると、必要書類を送ってくれます。
保険会社から送られてきた書類を記入すると同時に、「被害者が集めるべき書類」もあります。たとえば、以下のようなものです。
- 人身事故の交通事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 印鑑登録証明書
- ケガの診断書
- 死亡診断書や戸籍謄本(死亡事故の場合)
- 委任状(本人以外が請求する場合)
これらの必要書類をそろえ提出すると、1週間前後で「仮渡金」を受け取ることができます。
ただし、仮渡金の請求は1回しかできないのでご注意ください。
また、書類に不備があると、仮渡金の受け取りが遅れてしまうので、保険会社にしっかりと確認してください。
仮渡金の限度額
仮渡金の金額は、以下の通りに定められています。
- 死亡の場合:290万円
- 重度の傷害の場合(14日以上の入院かつ30日以上の治療など):40万円
- 中程度の傷害の場合(14日以上の入院など):20万円
- 軽度な傷害の場合(11日以上の治療):5万円
ご自身がどのケースに当てはまるのかは、あらかじめ保険会社に確認してから請求するようにしてください。
注意していただきたいのは、仮渡金はあくまでも「仮に渡すお金」です。
そのため、治療が終了した際の金額が「仮渡金を下回る」場合、その残金は返却しなければなりません。
示談成立前に請求できる「内払金」
「仮渡金」は自賠責保険を利用するため、請求すればほとんどの場合認められます。仮渡金以外にも、前払いを受けることができる「内払金制度」と呼ばれるものがあります。
この制度は、保険会社がサービスとして提供しているものです。
そのため、請求しても認められない可能性がありますが、当面の生活費や治療費に困る場合は一度確認してみるべきです。
内払金の請求方法と支払い時期
内払金の請求するためには、まずは「交通事故証明書」と「印鑑証明書」が必要になります。2回目以降は、診断書や診療報酬明細書(レセプト)を添付して保険会社へ請求します。
休業損害についても、「休業損害証明書」が発行できるなど損害額が確定している場合は請求が可能です。お金を受け取れる時期としては、書類提出から1ヵ月前後かかります。
ただし、「内払金」の請求は死亡事故や後遺傷害の場合は利用できないのでご注意ください。
内払金の限度額
内払金は、原則として治療費が「10万円を超える」場合に限られており、保険金も10万円単位で支払われます。回数に制限はありませんが、限度額は「120万円」となっています。120万円以内であれば何度でも受け取ることが可能です。
また、「内払金」も仮渡金と同様、「損害賠償金の前払い」であるため、示談成立後に確定した損害賠償金から「内払金」が差し引かれることになります。
仮渡金と内払金のまとめ
以下の表では、仮渡金と内払い金についてまとめました。
仮渡金 | 内払金 | |
---|---|---|
保険金額 | 傷害:最大40万円 死亡時:290万円 |
1回につき10万円~ (上限120万円) |
請求可能な回数 | 1回 | 120万円までなら何度でも可能 |
支払いまでの期間 | 請求後、約1週間 | 請求後、約1週間 |
必要書類 | ・仮渡金支払請求書 ・交通事故証明書 ・事故発生状況報告書 ・医師の診断書(死体検案書) ・加入者の印鑑証明書 ・委任状、委任者の印鑑証明書 ・戸籍謄本 |
・診断書(診療報酬明細書) ・交通事故証明書 ※ ・休業損害証明書 ・印鑑証明書 ※ ※2回目以降の請求では、不要になります |
後遺障害等級が確定する前に、賠償金の一部を支払ってもらうことはできない?
ケガの治療を続け、「症状固定」となってもなお症状が改善されない場合は「後遺障害等級の認定手続き」をおこなっていきます。後遺障害等級が認定されれば、その結果を踏まえ示談交渉をすることで、損害賠償金が増額されます。
しかし、認定結果を待って示談交渉をするため、賠償金を受け取れる時期は遅くなってしまいます。すぐにでもお金が必要なケースでは、保険会社に連絡をし、「後遺障害部分」を除いた傷害部分(治療費、休業損害、慰謝料等)を先に示談交渉することができます。
ただし、これをする場合、保険会社に足元を見られ、賠償金を下げられる可能性があるので注意してください。
交通事故被害でお困りなら弁護士への相談をお薦めします
交通事故被害に遭うと、様々な損害が発生します。心身が健康な時でさえめんどうな手続きを、ケガの治療で大変な時におこなわなければなりません。
また、こちらが「早くお金が欲しい」とわかると、加害者側の保険会社は「低めの賠償額」を提示してくるケースも非常に多いのです。示談交渉で損をしないためにも、交通事故に強い弁護士に相談しませんか。
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