ひき逃げや当て逃げをされた際、最終的な目標は「犯人を見つけて、補償を要求すること」です。しかし、犯人はなかなか見つけられない場合もあります。ここでは、ひき逃げと当て逃げのそれぞれのケースを考えながら、給付金請求ができる保険や政府保障事業制度について説明していきます。
ひき逃げや当て逃げは道交法違反
ひき逃げや当て逃げについて考える際は、まずその定義を知っておくことが重要です。どちらも法律で定められた用語ではありませんが、れっきとした法律違反に該当します。
ひき逃げとは
ひき逃げとは自動車などで人身事故を起こし、そのまま逃走することです。
ひき逃げは次の2つの道路交通法違反を犯しています。1つは負傷者を救護し、道路における危険を防止するなどの必要な措置をとる義務です。そして、2つ目が警察への報告義務です。これは事故発生の日時、場所、死傷者の数、負傷者の負傷の程度、壊れた物があればその物と壊れた程度などについて報告することを義務付けるものです。
さらに事故の被害に応じて過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪、殺人罪などの罪に問われます。
当て逃げとは
当て逃げとは車両と接触する物損事故を起こし、そのまま逃走することです。
物損事故でも警察への報告義務があるため、逃走すれば道交法違反(報告義務違反、危険防止措置義務違反、安全運転義務違反)などに該当します。
ひき逃げや当て逃げは、事故の加害者を特定することが最優先
ひき逃げや当て逃げをされた際、まず大事なことは警察に届け出ることです。人身事故の場合、交通事故証明書が発行されていないと保険の給付金が受けられない場合があるためです。
そして次に証拠を集めます。うまく証拠を集めることができれば、警察に本格的な捜査や犯人の特定・逮捕を期待することもできますし、そこまでいけば保険会社と補償の相談をすることもできるようになります。相手の責任を追及するにあたっては、法律の専門家の手を借りることが欠かせませんから、早めに相談を持ち込むと良いでしょう。
相手が特定されたときは、通常の交通事故のときと同じ手順を踏むことになります。相手の任意保険から補償を受けるか、それが無理なときは相手の自賠責保険から補償を受けることになります。
ひき逃げ・当て逃げに対する補償には自分の保険を
残念なことですが、ひき逃げや当て逃げの場合は、犯人が捕まらないこともあります。このままでは、当然ですが相手に補償をさせることはできませんので、ここで泣き寝入りしないようにするためには、自分の保険を使うことになります。
ひき逃げされたときは人身傷害補償保険などに請求
自分か家族が入っている保険に「人身傷害補償保険」や「無保険車傷害保険」がある場合は、そこから補償を受けられる可能性があります。保険の種類を確認して、保険会社と相談をしましょう。
当て逃げされたときは車両保険に請求
当て逃げされて車に傷が出来た場合は自分の車両保険に請求するか、自腹で修理代を払うかに分かれます。保険金の請求は等級ダウンを伴うため、将来的に保険料が上がる結果を招きます。そのため、修理代金によっては自腹の方がお得なことがあります。
政府保障事業制度を利用する方法も
ひき逃げのため自賠責保険から補償されず、任意保険にも入っていない場合は、国が設けている「政府保障事業制度」を利用することができます。手続きを踏んで請求を行い、審査が通れば、自賠責保険を利用したときと同水準の補償をしてもらうことができます。
もっとも、自賠責保険の代わりを務める制度であることからもわかるように、任意保険等と比べると受け取れる金額はかなり限られたものになります。たとえば、健康保険や労災保険等から支払いを受けられれば、その分は引かれてしまいます。
政府保障事業制度とは
政府保障事業は、自賠責保険の補償が受けられない交通事故の被害者のために用意されている制度です。各種保険の給付や加害者からの損害賠償金を受け取ってもなお被害者に損害が見られる場合、法定限度額の範囲内で政府(国土交通省)がその損害をてん補します。
その後、政府は被害者に代わり、加害者に対して賠償金を求償します。
政府保障事業を通して賠償金を請求する流れ
政府保障事業からの支払いの可否は政府が決定し、認可された場合にお金が損害保険会社を通じて被害者に支払われます。その手順は以下のとおりです。
- 相談
- 請求関係書類の準備
- 書類を最寄りの損害保険会社へ提出
- 損害保険会社が受理
- 損害保険料率算出機構が損害調査
- 国土交通省で審査・決定
- 損害保険会社が被害者に支払い
ひき逃げや当て逃げをされて、納得いかないことがあったら?
加害者が見つかった際は、加害者自身やその保険会社との交渉が発生しますし、加害者が不明の場合は、保険会社等との交渉が発生します。
いずれにしても、事故示談交渉において分からないことや納得できないことは多いものです。できる限り素人判断はせずに、弁護士に相談した方が慰謝料請求で有利になり示談金が増える可能性が高くなります。