交通事故によって車が全損をしてしまった場合、修理は不可能ですので新たに車両の買い替えが必要になります。その際、新しく車を購入するときには単に購入費用だけでなく、さまざまな費用がかかってきます。
しかし、それらの全ての費用を、加害者側に請求をすることはできるのでしょうか?
そこでこの記事では、事故によって自分の車が全損をしてしまった場合の加害者に請求ができる費用や代車、さらには慰謝料の範囲について解説していきます。
全損とは
「事故で車が全損になる」とたまに耳にすることがありますが、そもそもこの全損とはどういった状態なのでしょうか。全損とは、自動車保険においては以下の3つを意味します。
- 車体全体が破壊され、修理が不可能な状態
- 車が盗難に遭い、見つからない状態
- 車の修理代が保険の補償よりも高くなった状態
つまり、修理すればまた乗れるようになるような被害だったとしても、保険の補償金額以上の修理代が必要となった場合は「全損」と言えることになります。また、修理代が補償金で賄える場合の損害を「分損」と言います。
●全損の場合
修理費>車両の時価 →損害額が請求可能
車両の損害額=事故前の車両の交換価格-車両を処分して得られる価格
こちらの落ち度がない場合は相手に全ての損害額の請求を
車対車の事故で、相手側に100%の過失がある場合はこちらが被った損害額の全てを相手に請求することができます。双方に落ち度がある場合は過失相殺となります。損害には以下が含まれます。
- 被害車両の事故当時の時価
- レッカー代
- 保管費
- 代車費用
- 登録手続関係費用
- 積載物の時価
- 営業車の場合は休車損害
全損事故後に請求が出来る費用について
交通事故によって自分の車が全損をしてしまった場合、加害者に被った損害を請求することが出来ます。車が全損をしたとなると、修理をすることが不可能ですので、その車は廃車となり新しく車を購入しなければなりません。
車を購入する場合、どういった費用がかかってくるのでしょうか。
車そのものの車両本体価格以外に、ナンバープレートを取得するために「登録費用」がかかりますし、車を駐車する場所があることを証明する「車庫証明取得費用」もかかります。その他には、「自動車所得税」、「自動車重量税」などの税金関係や「自賠責保険料」の支払いもしなければなりません。
これらの費用というのは、交通事故で車が全損をしなければ被害者の方は支払う必要がないものですので、加害者が支払って当然のことです。車の所有をしていれば毎年支払う必要がある費用に関しては、加害者に請求をすることが出来ません。
加害者に請求出来るもの
「登録費用」「車庫証明取得費用」
加害者に請求出来ないもの
「自動車所得税」「自動車重量税」「自賠責保険料」
修理費と時価額の関係性
交通事故によって車が全損をした場合、修理費用と車両の時価額の差がよく問題になっています。車両の時価額は、車両の車種や年式によって変わります。
車によっては、修理をするよりも時価額の方が下回ってしまうことがあります。修理を希望される方も中にはおられますが、時価額を超える修理費に関しては、加害者に請求をすることが出来ません。
車の時価額は何を見て決めているの?
車の時価額は特定のガイドブックなどを参考に決められています。小売価格や下取り価格、卸売価格、新車価格などの情報が載っています。参考にされる媒体・査定には以下のようなものがあります。
- オートガイド自動車価格月報(レッドブック)
- 中古車価格ガイドブック(イエローブック)
- 財団法人日本自動車査定協会による査定
保険会社は、オートガイド自動車価格月報を元にして時価額を伝えてきますが、最新のものが使用されているかチェックをしておいた方がいいでしょう。
代車費用について
全損をして廃車になった場合や、修理を行う場合、被害者の方は車がない期間があります。その間は、代車を用意してその車を使用することになります。
代車はタダで利用が出来るものではなく、当然費用が発生をします。その費用に関しては、加害者に請求をすることが出来ます。
代車の使用が認められる期間
相手側への代車費用の請求は可能ですが、代車をいつまでも使い続けることはできません。相手の保険会社が提示する使用期間の限度は概ね2週間~1か月が多いようです。これを過ぎた分の利用料に関しては、被害者負担となります。
ところが、新車を買う場合、納車には時間がかかることもあります。その場合、代車費用の補償期間を延ばしてもらわないと、自腹となってしまいます。
代車費用が出る期間は交渉によって必要性が認められれば、延長できる可能性があります。代車費用に関して納得がいかない場合は弁護士に相談されてみることも良いでしょう。
代車の必要性とは
代車の使用期間を延長してもらうには、保険会社に「なぜ代車がないと困るのか」について説明しなければなりません。その際に主張すべきなのは車の必要性です。基本的には通勤・通学・通院などで車しか移動手段がない状況であれば、認められる可能性があります。「趣味でよく乗るため」や「友人の引っ越し手伝いがあるため」などの理由は日常的な必要性とはみなされないでしょう。
代車のグレードは元の車よりも低く
また、代車の車種に関しても賠償金とするか否かの考慮に含まれます。代車の費用を自分で賄う場合は当然、どのような車種に乗っても良いでしょう。しかし、損害賠償金として相手側に請求するのであれば、代車は必要最低限か元の車のグレードよりも低いものにしましょう。全損となった車よりも高額な車をレンタカーで借りて費用を請求しても、相手の保険会社に全額認められることはないでしょう。
仕事で使用していた車が事故の被害に遭った場合
事故の被害に遭った車が、タクシーやトラック、営業車など、仕事に使用をする車両であった場合、加害者に特別に請求をすることが出来るものはあるのでしょうか?
車両がなければ仕事にならない、大きな損害が出るという場合、「休車損」として車両がない期間に発生をする損害を請求することが出来ます。
タクシーやトラックといった車両は、仕事に大きく影響をしますので、損害請求が認められるでしょう。ただ、営業車に関しては、営業活動にどれだけ車が重要かによって変わってきます。中には、損害請求が認められない場合もあります。請求をするには、事故前の売上や経費に関する資料を証拠として用意しておきましょう。
全損事故で発生することがある慰謝料とは
慰謝料が発生する事案はないのでしょうか?
実は、全損事故でもまれに慰謝料が認められるケースがあります。それは希少価値の高い自動車が大破した場合です。生産台数が少ない・価値が高い車は賠償金を払われたとしても、他の車で代替できるものではないためです。
全損事故で希少な車を失ったという方は、慰謝料の請求を検討してみてはいかがでしょう。その場合は裁判となる可能性がありますので、法律のプロである弁護士へのご相談をお薦めします。
- 車が交通事故によって全損をしてしまった場合、交通事故がなければ支払う必要がなかった費用に関しては、基本的には請求をすることが出来ると覚えておきましょう。
ただ、交通事故によって被害を受けるのは対象の車以外にもさまざまなものがありますので、どういった費用が加害者に請求出来るのか、弁護士に相談をして確認をしておいた方がいいでしょう。