交通事故の加害者の中には自分の責任を認めず、事故を被害者のせいにしたりする人が少なくありません。
こうした加害者の態度に「許せない」という気持ちになることもあるでしょう。ですが、感情的にならずに、まずは冷静になってください。間違った手段に出ると、反対に加害者から訴えられてしまいます。
この記事では、事故加害者のこと許せないと感じた時の対象法について解説していきます。
実は、加害者の態度によっては慰謝料を増額できる可能性があるのです。
「許せない」態度をとる交通事故加害者について
交通事故被害に遭った場合、加害者から被害者に対して謝罪の言葉があって当然です。しかし、加害者の中には被害者に謝るどころか、不誠実な態度をとる人も少なくありません。
事故の過失を認めない加害者
事故を起こした加害者の中には、自分の責任を認めず、逆に被害者のせいにしてくる人もいます。
また、事故直後はみずから過失を認めていたのに、示談交渉に入ると「自分は悪くない」と言い出す加害者も珍しくありません。
事実と異なることを証言する加害者
加害者側の不注意や責任で事故が起こった場合であっても、それをごまかして「自分に有利になる証言」をする加害者もいます。
具体的には、
- 信号機は青だったのに被害者の車が突っ込んできた
- こちら(加害者)はしっかりと一時停止していた
- 被害者の車がスピードを出し過ぎていた
など、実際の事故状況とは違う説明をすることがあります。特に、車にドライブレコーダーがついておらず、証人がいない場合に多くなります。
加害者が不誠実な態度をとる理由
なぜ事故の加害者はこういった態度をとってしまうのでしょうか。
事故を起こした加害者には「免許の停止」や「賠償金を支払い」が課せられます。たとえ保険会社が賠償金を払ってくれるとしても、事故後の保険料があがってしまうのです。
こうした理由から加害者は、過失を認めなかったり、事実とは異なる証言をしてしまうのです。
事故の目撃者がおらず、ドライブレコーダー等の証拠もないケースなら尚更です。
また、交通事故の加害者の多くは任意保険に加入しているので、示談交渉は保険会社に代行してもらいます。
そのため、加害者の多くは「保険会社に任せておけばいいから自分は関係ない」と考え、被害者に謝罪もしないのです。
納得できない状態で示談に応じてはいけません
加害者が不誠実な態度をとり、許せないと感じている状態では示談交渉に応じてはいけません。
そもそも示談交渉は「交通事故問題を解決する手段」であり、損害賠償金を決める大事な交渉です。加害者が責任を認めず嘘をついている状態では、交渉がうまくいくはずがありません。
示談は一度成立してしまえば、やり直すことはできません。示談が成立してしまえば、加害者からの謝罪がないどころか、被害者に不利な条件となり賠償金が減ってしまう可能性があります。納得できない状態で示談に応じてはいけません。
交通事故加害者に課せられる責任とは
そもそも交通事故を起こした加害者には、「刑事上」「行政上」「民事上」の3つの責任が発生します。
責任の内容は、事故の種類(物損か人身か)や事故の程度によって変わってきます。
刑事上の責任
加害者の過失で「人身事故」を起こした場合、刑事上の責任を追求されることがあります。
刑事上の責任とは、加害者が起こした事故に対して刑罰を受けることです。この場合、刑事裁判となり検察官が起訴するかどうかを決めるため、基本的に被害者はかかわることはできません。
行政上の責任
車やバイクの運転は、都道県公安員会によって許可されています。交通事故を起こした場合、事故の重さに応じてドライバーにペナルティが課せられます。これが行政上の責任です。
起こした事故が悪質で大きいほど、「免停(免許の停止)」や「免許取り消し」といった行政処分がなされます。
民事上の責任
民事上の責任とは、被害者に対する損害賠償のことをさします。被害者がケガをして入院・通院すれば、その費用を加害者はすべて負担しなければなりません。さらに、精神的苦痛を理由として慰謝料を支払う義務も生じます。
この民事上の責任が「加害者が被害者に対して負う責任」ということになります。
被害者が直接かかわれるのは「民事上の責任」だけ
このように、加害者に課せられる責任には3つのものがありますが、被害者が直接かかわることができるのは「民事上の責任」のみです。
いくら加害者を「許せない」と感じても、重い刑罰を与えたり、免許を取り消しにすることはできません。また、刑事上・行政上の責任は「被害者に不誠実な態度」をとったという理由だけで重くなることはありません。
加害者が許せない場合、民事上の責任をしっかりと追及していかなければならないのです。
加害者が「許せない」と感じてもやってはいけないこと
加害者に対して許せないと思っても感情的になって行動してはいけません。間違った方法をとることで、逆に被害者が不利な立場になってしまいます。
感情的にならず冷静に
あなたが交通事故のケガで苦しんでいるにもかかわらず、加害者が責任逃れをしたり嘘をついている場合、怒りを感じるのはもっともです。
ですが、怒りの感情を相手にぶつけても何1つ良いことはありません。まずは冷静にならなければなりません。感情的に行動すれば、被害者が大きな損をすることになりかねません。
脅迫や強要は逆に訴えられる可能性も
加害者の態度が「許せない」という気持ちから、直接連絡して無理やり謝罪を求めたり、お金を払うよう脅したりする被害者の方がいます。
話し合いの中で自分の思いを伝えるだけなら問題ありませんが、やり過ぎれば犯罪になってしまいます。
具体的には、以下のようなものです。
- 「お前も同じ目に遭わせてやるからな」と脅す(脅迫罪)
- 「○○円払わないと会社にバラすぞ」と言う(恐喝罪)
- 「土下座して謝れ」と求める(強要罪)
このような行動をとってしまえば、逆に加害者から訴えられ、損害賠償金を支払うことにもなりかねません。
被害者がすべきは適切な損害賠償金を求めていくこと
事故加害者に対して被害者がすべきことは、治療費や慰謝料を含む損害賠償金を請求することです。
損害賠償の金額は、加害者と被害者での話し合い(示談交渉)で決定します。
ただし、ほとんどの場合、加害者の保険会社と示談交渉していくことになります。示談のプロである保険会社を相手に、被害者が望む額の賠償金を支払ってもらうよう交渉するのは簡単なことではありません。
加害者が任意保険に加入していない場合は、本人と直接交渉することになります。嘘をついたり過失を認めない加害者を相手に、冷静に交渉していくことは簡単ではないでしょう。
このような場合、被害者の味方になって示談を代行してくれるのは弁護士以外にはいません。弁護士に示談を依頼することで交渉がスムーズに進み、適切な損害賠償金を手に入れることができるのです。
加害者と連絡が取れない時はどうするの?
加害者の中には、事故直後に電話番号だけ教え「後で保険会社から連絡する」とだけ言い残し、一切連絡をしてこないという人もいます。
事故後、加害者と連絡が取れなくなった場合はどうすればいいのでしょうか。
加害者の住所は「交通事故証明書」でわかる
加害者から連絡がない場合、こちらから電話をかけても出ないケースがほとんどなので、直接相手の住所を調べて連絡を取る必要があります。
交通事故が発生すると、警察官の実況見分をもとに「交通事故証明書」が作成されます。ここには「当事者の住所」が記載されるので、加害者の住所を知ることができます。
「交通事故証明書」は以下の方法で入手できます。
- 自動車安全運転センター事務所の窓口(即日発行)
- 自動車安全運転センターホームページで申請(郵送)
- 警察署・交番・駐在所・損害保険会社にて備え付けの申請書をもらい、郵便局で申し込む(郵送)
示談に応じない加害者には内容証明郵便を送る
加害者が任意保険に入っていない場合、示談交渉は加害者本人とすることになります。
実は加害者が示談交渉に応じてこないケースは非常に多くなっています。
そのような場合、「内容証明郵便」で損害賠償の請求書を送りましょう。
「内容証明郵便」は郵便局が、書いた郵便の内容を証明してくれるものです。加害者は、内容証明郵便を受け取ると「そんな手紙は受け取っていない」と言い逃れをすることができなくなります。
加害者が任意保険に加入していても、保険会社から被害者に連絡が来ないケースも少なくありません。そうした場合、こちらから保険会社に連絡をするようにしてください。
裁判を起こせば逃げることはできない
加害者に内容証明郵便を送る際には、損害賠償の請求書だけでなく「支払いや返答がない場合には裁判を起こす」旨を書いてください。こうすることで、加害者に心理的な圧力を与えることができます。
何も返答がない時には裁判を起こします。裁判を起こせば、加害者はそれに応じるしかありません。
もし加害者が裁判に出席しなければ被害者の勝訴が確定し、請求した通りの判決が出されます。この判決にもとづいて、差押えなどの強制執行ができます。
ただし、これら一連の手続きは複雑で1人でおこなうのは簡単ではありません。加害者と連絡がとれなくなったら弁護士の力を借りるべきです。
加害者を許せないと感じたら弁護士に相談してください
加害者の態度に不満を感じたら、交通事故に強い弁護士に相談してください。
弁護士は面倒な交渉を代わりにおこなうことはもちろん、確実に相手に損害賠償金を支払わせることができます。場合によっては、加害者の「悪質さ」に応じて慰謝料増額も見込めます。
弁護士が加害者との交渉をすべて代行します
交通事故の示談は、治療費や慰謝料の金額を決めたり、後遺障害の認定など様々な話し合いがおこなわれます。
ただでさえ大変な示談を態度が悪い加害者と交渉することは、大きなストレスとなります。何より示談がまとまらず、長期間に及んでしまいます。
その結果、早く交渉を終わりにしたいと考え、不利な条件で示談に応じてしまう被害者の方は少なくありません。
弁護士に依頼すれば、示談交渉をすべて代行してくれます。交通事故に強い弁護士は「態度の悪い加害者」との交渉の仕方も心得ていますので、確実に損害賠償金を手にできます。
加害者の態度が「悪質」であれば慰謝料増額の可能性もある
基本的に、「加害者の態度が悪い」という理由で慰謝料増額することはできません。
しかし、「悪質」の程度が著しい場合、具体的には、
- 被害者の救護を一切おこなわなかった
- 事故現場から逃走した
- 逃走した上に、車の損傷を隠蔽した
- 信号無視をしたのに、青信号だったと嘘の説明をした
- 刑事裁判で治療費を全額支払うと言ったのに、裁判後に支払いを打ち切った
このようなケースでは、被害者に支払われる慰謝料が増額されたという例があります。増額の割合は「悪質さ」の程度により異なりますが、1割から3割ほど増額が見込めます。
弁護士が交渉することで、慰謝料増額の可能性が高まります。事故加害者が許せないと感じているなら、納得のいく損害賠償金を勝ち取るためにも相談してみましょう。