子供が交通事故に遭った時には親は気が動転するのは当然です。子供のケガや後遺症のことを考えると夜も眠れなくなるのではないでしょうか。そんな苦しい状況でも慰謝料・損害賠償の請求手続きは待ってくれません。
子供の事故の慰謝料請求手続きをおこなうのは大半の人が初めてだと思いますが、事故のほとんどのケースで加害者側の保険会社との示談交渉が必要になります。この交渉に入る前に慰謝料請求というものが何かを知らないと、保険会社の担当者に反論することさえできずに保険会社が提示する不当な条件に応じなくてはならなくなります。
この記事では付添費など子供が被害者になった際の慰謝料・賠償金請求の手続きと、親がとるべき対応について分かりやすく解説します。
親などが取るべき対応
交通事故に遭った場合、被害者は事故現場で警察が取り掛かる実況見分調書の作成に協力します。子供の被害者も同様です。調書を作成するのは、事故当日のほか、後日の場合もあります。親は同席できますが、応対している子供に口添えすることができません。
実況見分調書の例のように、交通事故の初めの段階では、親が十分なサポートをすることができない面も出てきますが、時間が経つごとに対応を万全にすることは可能です。あせらずに行動するようにしてみてください。
子供の治療に専念した後で、加害者側との示談交渉が始まります。損害賠償額を請求する手続きに入るのです。示談交渉の前に、親が絶対に知っておく必要があるのが損害賠償のあらましです。
未成年者は、民法の規定によって、法的な行為を行うことができないため、親が代行する必要があるのです。被害に遭った子供がどんな損害賠償金を得ることができるのかについて知らなければ、保険会社への請求ができなくなってしまいます。当然のことですが、子供に代わって親がするべきことは多いのです。
請求できる損害賠償金
未成年の子供が病院に入院していた時、付き添うのは親として自然な行いです。症状によっては、付添が不可欠な場合もあります。
付添費(看護費)を保険会社に請求できることをご存知ですか。
成人の場合は、法律的に見て「合理的な理由」がなければ、認められないものですが、12歳以下の子供に付き添った場合には請求できるのです。13歳以上の子供でも、合理的な理由があれば請求できます。
このほかにも、入院費、手術費用、入院にともなう雑費などを請求できるので安心してください。
実際に出費した費用以外に請求できるのは、慰謝料と呼ぶものです。慰謝料は、被害を負ったことによる精神的な苦痛に対する損害賠償です。損害賠償額の中ではもっとも高い保険金となりますので、分かりやすく説明します。
どのような慰謝料があるのか
どのような種類の慰謝料があるのか見てみましょう。
・入通院(傷害)慰謝料
入通院した日によって算定されます。幼少から成人前の子供も、成人と同じ額を請求できます。
・後遺障害慰謝料(+逸失利益)
これ以上治療したとしても良くも悪くもならない状態(症状固定)になった後で、後遺症が残った場合、後遺障害等級認定を申請します。認定された等級によって慰謝料が決まります。成人前の子供でも、成人と同じ額を請求することができます。
・死亡慰謝料(+逸失利益)
被害者が死亡した場合は、死亡慰謝料を請求できます。死亡した被害者の属性(一家の大黒柱かどうかなど)によって慰謝料が変わってきます。
・その他
子供が死亡した場合、親および兄弟姉妹は、自分たちの慰謝料を請求することができます。
示談交渉における注意点
慰謝料をどのように見積もるかは、示談交渉に臨むうえで大切なことです。慰謝料と言っても、算定となる基準は一つではないのです。基準は3つあります。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士・裁判所基準
自賠責基準 < 任意保険基準 < 弁護士・裁判所基準
の順で慰謝料は高額になっていきます。
任意保険基準は、それぞれの任意保険会社が独自の基準を設けているとされ、一般には公表されていません。自賠責基準と弁護士・裁判所基準は公開されていますので、2つを比べてみましょう。
入通院慰謝料
自賠責基準よりも、弁護士・裁判所基準のほうが、数十万円高く請求できます。さらに重要なのは、自賠責基準では、慰謝料を含めた入通院損害賠償額の上限が120万円にとどまることです。損害賠償額の中には、治療費や入院費などの項目が入っており、仮に治療費等が膨らんだ場合、自賠責保険での慰謝料が請求できないこともあります。弁護士・裁判所基準ではありえないことです。
後遺障害慰謝料
後遺障害等級認定を受けた場合、将来得られたはずの収入=逸失利益を算定することになりますが、ここでは慰謝料に限って説明します。
等級 | 慰謝料 | 自賠責保険 (2020/03/31以前の事故) |
自賠責保険 (2020/04/01以降の事故) |
---|---|---|---|
第1級 | 2,800万円 | 1,100万円 | 1,150万円 |
第2級 | 2,400万円 | 958万円 | 998万円 |
第3級 | 2,000万円 | 829万円 | 861万円 |
第4級 | 1,700万円 | 712万円 | 737万円 |
第5級 | 1,440万円 | 599万円 | 618万円 |
第6級 | 1,200万円 | 498万円 | 512万円 |
第7級 | 1,030万円 | 409万円 | 419万円 |
第8級 | 830万円 | 324万円 | 331万円 |
第9級 | 670万円 | 245万円 | 249万円 |
第10級 | 530万円 | 187万円 | 190万円 |
第11級 | 400万円 | 135万円 | 136万円 |
第12級 | 280万円 | 93万円 | 94万円 |
第13級 | 180万円 | 57万円 | 57万円 |
第14級 | 110万円 | 32万円 | 32万円 |
表は、日本弁護士連合会(日弁連)が発行している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称:赤本)を参考に作成したものです。
左側の弁護士/裁判所基準の慰謝料では介護の有無の区別がないものの、2つを比べると差は明らかです。
死亡慰謝料
将来得られたはずの収入=逸失利益をのぞいた慰謝料に限って説明します。自賠責基準の死亡慰謝料は350万円(2020/04/01以降の事故は400万円)です。弁護士・裁判所基準では、子供の場合、2000万円から2500万円を請求できます。
それぞれの慰謝料により異なりますが、任意保険基準と比べても、弁護士・裁判所基準の方が数十万円から1000万円ほど高い慰謝料を請求できます。
任意保険会社が提示する過失割合が妥当かどうかの説明
慰謝料とは別に親が注意するべきことがあります。慰謝料を決める大きな要素の過失割合です。過失割合とは、加害者と被害者の責任の割合を数字で表したものです。例えば、7:3の過失割合であるならば、慰謝料×0.7を受け取ることになるのです。
営利を目的とする任意保険会社が、支払額を抑えようとすることから考えて、被害者にとって不利な過失割合を提示する可能性は否定できません。親は、盲目的に提示された過失割合を受け入れない方が良いのです。
示談交渉で注意すべきこと
示談交渉の相手は、文字通り保険のプロである任意保険会社です。慰謝料の算定も、過失割合についても、被害者が望むような条件を出すとは考えないことです。
百戦錬磨のプロを相手に、被害者が望んでいる慰謝料を含めた示談金の支払いを認めさせなければなりません。ヘタをすると、不当に低い示談金を受け入れなければならなくなるのです。
弁護士に依頼するメリット
子供の交通事故被害でお悩みなら、交通事故に強い弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士に依頼した場合のメリットは、大きく以下の点があります。
- 被害者請求のための時間と労力を省くことができる
- 保険会社との示談交渉をすべて任せることができる
- 慰謝料の増額が期待できる
家事や仕事を抱えている親にとって、法律や保険について調べ、さらには保険会社と交渉するのは大きな苦労がともないます。負担を減らすためには、弁護士に依頼するのが良いでしょう。
弁護士に依頼すれば裁判所基準という高額な慰謝料基準で請求できますので、得られる賠償金も大きくなります。まずは相談から始めませんか。