この記事でわかること
- 交通事故の弁護士費用の項目が理解できる
- 交通事故の弁護士費用は事務所によって異なる
- 弁護士費用特約を利用すれば多くのケースで費用は0円になる
- 交通事故に強い法律事務所は費用面でも柔軟に対応してくれる
不幸にも交通事故の被害者になってしまったら、加害者(保険会社)と「損害賠償金」について話し合う必要があります。
この保険会社との交渉が実にやっかいです。示談のプロである保険会社は会社の利益のために「被害者に支払う金額を抑えよう」といろんな手を使って交渉してきます。被害者に事故の知識が少ない状態では、簡単に言いくるめられてしまいます。
そこで対等に交渉するためには、被害者も事故の専門家である弁護士に依頼する必要があります。しかし、弁護士に依頼するとなると、一番気になるのが「費用がどれだけかかるのか(相場)」という点だと思います。実際、当サイトにも弁護士費用に関する問い合わせは数多く寄せられます。
普段弁護士に依頼をすることなどない方にとってみれば、高額な費用がかかってしまうのではないかと心配するのも無理はありません。
そこでこの記事では、交通事故の弁護士費用の相場について解説していきます。さらに、弁護士費用を安く抑える方法も合わせてご紹介します。
交通事故の弁護士費用は一般の人から見ると分かりにくいですよね。弁護士費用の項目や相場を一つづつ理解して依頼する際の参考にしましょう!
交通事故の弁護士の費用相場とは何?
費用相場とは、ある業界内で多くの企業が採用する商品やサービス費用の平均値のことです。交通事故の弁護士費用とは、実際に弁護士に依頼した場合にかかる費用の総額を指すことが多いですが、その「費用相場」は事務所によって開きがあります。
以前は日弁連が定めた「弁護士報酬基準」という業界基準となる費用相場がありましたが、この制度は平成16年に廃止されて、以降は弁護士が自由に報酬を決められるようになったためです。それに伴って法律事務所は独自の基準で費用を決めるようになったことにより弁護士費用の相場に開きが出るようになりました。
ただし、多くの法律事務所は交通事故事件においては、かつての「弁護士報酬基準」をベースに費用や報酬を決めているケースが多いですので事務所ごとに費用が大きく変わることはあまりありません。
費用相場が変わるというのは事務所が設定した費用の違いというよりも、解決方法(示談、訴訟など)や弁護士の解決能力による場合が多いと言えるでしょう。
交通事故の弁護士費用項目
交通事故の被害者が弁護士に相談・依頼した場合の費用項目(料金システム)は、大きく「法律相談料」「着手金」「成功報酬」「実費」「日当」に分けることができます。以下では、それぞれの項目ごとに解説していきます。
1.弁護士に相談する際の「法律相談料」
あなたが弁護士に依頼すると決めていても、いきなり依頼できるわけではありません。依頼を受ける前には、弁護士に対して「交通事故の詳細」を説明する必要があります。その際にかかる費用が「法律相談料」です。
相談を受けた弁護士は依頼者から話を聞いたうえで、「どうやって依頼を解決に導くか」を提案してくれます。基本的に弁護士は依頼を受ける前提で話を聞きますが、「依頼人の要望に応えられない」と判断すれば断るケースもあります。
法律相談の場合、ほとんどの事務所が「30分5000円前後」という料金設定をしています。
2.依頼した場合に支払う「着手金」
弁護士に正式に依頼する場合、最初に「着手金」を支払う必要があります。
この「着手金」は、弁護士に依頼するために必要な費用で、前金ではありません。そのため、依頼が解決されなかったり、依頼者の期待に沿えない結果になってしまっても返金されることはありません。
着手金は、示談交渉などの場合、多くの事務所が20万円前後に設定しています。ただし、「裁判をする場合」は以下の表のようになります。
被害者が得る経済的利益 | 割合 |
---|---|
300万円以下 | 8% |
300万円~3000万円以下 | 5%+9万円 |
3000万円~3億円以下 | 3%+69万円 |
3億円を超える場合 | 2%+369万円 |
【具体例】
交通事故の加害者に対して2000万円の損害賠償を請求する場合、着手金は2000万円×5%+9万円=109万円になります。
3.依頼した案件の成功への対価となる「成功報酬」
弁護士が依頼を無事成功に導いた場合、その内容(金額)に応じて「成功報酬」を支払う必要があります。成功報酬の金額は、「弁護士の働きで増額できた経済的利益」によって変わってきます。示談交渉のケースでは、弁護士の働きで「増額できた分の10%」が相場となっています。
裁判の場合、以下の表のようになっています。
経済的利益の額 | 割合 |
---|---|
300万円以下 | 16% |
300万円を超え3000万円以下 | 10%+18万円 |
3000万円を超え3億円以下 | 6%+138万円 |
3億円を超える場合 | 4%+738万円 |
【具体例】
加害者側の保険会社から200万円の示談金を提示されましたが、弁護士に依頼後、示談金が600万円にアップしました。この場合の成功報酬は、(600万円-200万円)×10%+18万円=58万円となります。
4.手続きのための「実費」
「実費」とは、示談交渉や裁判の手続きをするために実際にかかる費用です。示談交渉では、書類を取り寄せたり郵送したりする費用だけなので「数千円」ほどです。
裁判になると、加害者への請求金額に応じて「印紙代」がかかり、請求金額が高くなれば当然印紙代も高額になります。交通事故事件の印紙代は、「数万円」はかかります。
弁護士が移動するための交通費もこの「実費」に含まれます。
5.出張した際に必要になる「日当」
依頼内容によっては、弁護士が調査や手続きで遠方まで出張するケースがあります。こうした場合には、出張するための費用として「日当」を支払う必要があります(交通費は「実費」に含まれる)。相場は1日あたり3~5万円ほどです。
裁判になれば、裁判が開かれるたびに「日当」がかかります(1日あたり数千円)。
6.消費税
弁護士に払う費用には当然「消費税」がかかります。ただし、実費(裁判や示談に必要な手続きの費用など)には消費税はかかりません。
「報酬基準」廃止後に出てきた新しい料金システム
上記では、「報酬基準」をベースにしている事務所の費用項目について解説しました。これらの「項目を合わせた総額が弁護士費用」となります。
ただ、「報酬基準」が廃止されて以降、「独自の料金システム」を採用する事務所も増えました。特に、「交通事故被害に遭われた方にもっと気軽に相談してほしい」という思いから、「相談料0円」、「着手金0円」で依頼を受ける事務所も多くなっています。以下では、その料金システムの一例をご紹介します。
完全成功報酬制
完全成功報酬型とは、相談料と着手金は0円で実費と成功報酬のみの料金システムです。中には、「実費も無料」という事務所もあります。ただし、その分「成功報酬の割合」が高く設定されています。どれくらいの割合を成功報酬として支払うかは、事務所ごとに基準が異なるため、見積もりで確認する必要があります。
タイムチャージ制
タイムチャージ制とは、成功報酬の代わりに「弁護士の拘束時間に対して」料金が発生するシステムです。タイムチャージの料金は1時間5千円~3万円がおおよその相場です。
この料金システムは、依頼が早く解決すれば安く済みますが、長引けばその分料金が高額になります。特に、裁判となればスムーズに進まないこともあるので、料金が高くなる可能性があります。
必ず見積りをもらって弁護士費用を確認すること
弁護士報酬が自由化されて以降、独自の料金システムを採用する事務所が増えました。もちろん、どの料金システムが良い悪いということはなく、ケースごとに判断するしかありません。
交通事故案件を弁護士に依頼する場合、「示談交渉なのか、裁判弁護なのか」、「依頼の難易度」、「慰謝料の額」によって、費用が大きく変わってきます。そのため、弁護士に正式に依頼をする前に、必ず「見積もり」を出してもらってください。多くの事務所が依頼前に見積もりを作成してくれます。
見積もりを教えてくれない、あるいは大ざっぱな金額しか教えてくれないような弁護士事務所には、絶対に依頼をしてはいけません。
【交通事故の弁護士費用の相場は?】
- 依頼内容・難易度によって、弁護士費用に大きな開きが出る
- 弁護士費用は、「相談料」「着手金」「成功報酬」など項目ごとに分かれている
- 弁護士費用が自由化されて以降、「独自料金システム」を採用する事務所も増えてきている
- 弁護士費用の総額については、相談の段階で「見積もり」を作成してもらうべき
弁護士に依頼して損することもある?
交通事故被害に遭って、保険会社との示談や訴訟を弁護士に依頼すれば、ほとんどの場合、賠償金額をアップすることができるでしょう。なぜなら、弁護士に依頼をすることで、被害者にとって有利な「弁護士基準」で賠償金を採用することができるからです。
必要最低限な費用を除けば、弁護士費用の多くは「実際には獲得した賠償金(経済的利益)」の内から支払うことになるため、多くの場合依頼者は得をすることができます。
では、反対に「弁護士に依頼したことで依頼者が損をする」ということはあるのでしょうか。
加害者からの慰謝料が少なければ損をすることがある
弁護士に依頼をすれば、慰謝料を増額することができる可能性が高まりますが、すべてのケースで増額できるわけではありません。
慰謝料の増額が見込めない、あるいは慰謝料が少ないケースとしては、物損事故や入院の必要がない・後遺障害が認められないなど、交通事故被害が小さい時です。
一生残るケガとして、後遺障害が認定されれば、弁護士基準で多額の慰謝料を請求することができます。反対に、ケガもほとんどなければ慰謝料は少額になります。慰謝料を増額させようと裁判を長引かせれば、「日当」や「実費」といった費用が増えるだけで、依頼者は損をすることになるでしょう。
もちろん、弁護士は相談の段階で「慰謝料の相場」などを算定して、明らかに被害者の損になる場合は依頼を断るでしょう。
ただし、「後遺障害に認定されるかどうか」、プロに相談してみないと判断できないようなケースもたくさんあります。保険会社に断られても、弁護士に依頼したことで後遺障害が認定され、慰謝料が何倍にも増額されたという例も少なくありません。
【参考】:交通事故で弁護士に依頼して費用倒れになるケースとは?費用倒れを回避する方法も合わせて解説
加害者に弁護士費用は請求できる?
相談者の方から「示談や裁判でかかった弁護士費用を加害者に負担させることはできないの?」といった質問されることが多々あります。そもそも交通事故がなければ発生しなかった費用ですから、相手に負担してもらいたいと思うのも当然です。
残念ながら、加害者に「弁護士費用」を請求することはできません。交通事故案件に限らず、「自分で依頼した弁護士の費用は自分で負担する」というのが大原則です。
ただし、前述した通り、慰謝料が倍以上になるケースも多いので、基本的には弁護士費用を払っても、依頼者が得をすることの方が多くなります。まずは弁護士に対して「どれくらいの慰謝料を増額ができるのか」、「弁護士に依頼した方が得か損か」など率直な疑問をぶつけてみてください。
弁護士費用を抑えるためにできること
弁護士に依頼すれば賠償額が増額するとはいえ、一般的に見れば弁護士費用は高く、依頼を思いとどまる気持ちはよくわかります。費用を安く抑えた上で、弁護士に依頼する方法はないものでしょうか。
弁護士費用が「実質0円」になる弁護士費用特約を利用する
あなたが加入している自動車保険を一度確認してみてください。そのオプションに「弁護士費用特約」が付いていれば、「実質0円」で弁護士に依頼することができます。
弁護士費用特約とは、弁護士に依頼する際の費用を保険会社が補償してくれるというものです。この特約を使うためには、事前に保険会社から承認を受けなければなりません。適用条件は、保険会社や契約によって異なりますので、一度確認する必要があります。
詳しくは下記の記事をご覧ください。
【家族も使える】弁護士費用が0円になる自動車保険「弁護士費用特約」を解説
依頼を遅らせれば弁護士費用は安くなるが・・・
弁護士に依頼するタイミングによっても弁護士費用は変わってきます。結論から言えば、相手保険会社から示談金額を提示された後に依頼した方が、弁護士費用は安くなります。
なぜなら、示談金が提示された後に依頼すれば、「最終的な獲得金額-当初の示談金」が経済的利益となるため、弁護士に支払う「成功報酬」が少なく済むのです。事故後すぐに弁護士に依頼をすると「賠償金全額」が経済的利益となるので、弁護士に支払う成果報酬は高くなります。
ただし、弁護士に依頼するのが遅れたことで、不利益を受けるケースもあります。たとえば、保険会社から「治療を打ち切り」や「保険診療への切り替え」を迫られるといったケースです。交通事故の被害に遭い、肉体的にも精神的にも大変な時期に、保険会社と交渉することは予想以上に大変なことなのです。
弁護士に依頼することで、保険会社との交渉をすべて代行してくれるため、あなたは治療に専念することができ、余計な負担が減ります。弁護士への依頼を「目先の金額」だけで考えてはいけないのです。
まずは弁護士に相談しましょう
交通事故被害に遭い、ケガが原因で入院や通院をすることになれば、多くの方が今後の生活に不安を抱えます。もちろん、加害者側の保険会社が補償をしてくれますが、それは「必要最低限の補償」で、あなたの生活まで補償してくれるものではありません。
交通事故被害に関して少しでも不安があれば、弁護士に相談してください。依頼しなかったとしても、弁護士に相談することで「問題点や解決策」など有益なアドバイスをもらうことができます。さらに、提示された「賠償額」が適正かどうかも無料で算定してくれます。また、被害が大きくない事故であっても、治療や後遺障害認定など「賠償金を増額させるカギ」をアドバイスしてくれます。
加害者側の保険会社の言いなりになっていると、少ない額で示談が成立されてしまいかねません。一度成立した示談は、簡単には覆すことはできません。決してご自分だけで判断されずに、まずは弁護士に相談してみましょう。
【弁護士に依頼する前に知っておくべきこと】
- 物損のみなど、加害者からの損害賠償金が低ければ弁護士に依頼すると損をする可能性がある
- 加害者には弁護士費用を請求することはできない(慰謝料増額という形で回収することはできる)
- 弁護士に依頼すれば、「賠償金増額の増額」「過失割合の是正」「後遺障害の認定」など様々なメリットがある
- 加入する自動車保険に「弁護士費用特約」が付いていれば「実質0円」で弁護士に依頼できる