この記事でわかること
- 保険会社の顧問弁護士についてわかる
- 自身が加入する任意保険会社の弁護士に依頼するリスクがわかる
- 保険会社側の弁護士の対応に不満がある場合の対処法がわかる
- 弁護士は乗り換えることが可能
交通事故に遭った際には、まずはご本人が加入する任意保険会社に事故の報告をしますが、その際に保険会社に自社の顧問弁護士の紹介を受けるケースがあります。
また、保険会社に弁護士特約の使用について相談した際にも同じように弁護士を紹介されることがあります。しかし、保険会社から紹介された弁護士に加害者(相手保険会社)との示談交渉を任せてよいのでしょうか。
この記事では、保険会社側から紹介された弁護士に依頼するリスクと、弁護士に不満がある場合の対処法について解説します。
保険会社の顧問弁護士とは?
交通事故の被害に遭ってご自身が加入する保険会社に連絡した際に「交通事故に強い弁護士がいますよ…」というような提案を受けることがあります。
その弁護士は保険会社の交通事故案件の顧問弁護士であることがほとんどです。保険会社の顧問弁護士は、保険会社と個別に契約を結び業務を担いますが、顧問契約は通常1年単位で結ぶケースが多く定額の報酬で仕事をします。その報酬はさほど大きくないため、弁護士はいわば副業的な感覚で契約を結ぶことが多いようです。
その業務内容は加害者側サポートがほとんどです。また、被害者のサポートをおこなう場合も保険会社の利益にかなった弁護活動を行うケースがあるため、依頼する際には注意が必要です。
保険会社から弁護士の紹介をうける状況とは
自身が加入する保険会社から弁護士の紹介を受けるのは主に「交通事故の報告時」と「弁護士特約の相談時」です。
事故の報告時
事故の被害に遭うとまずは加入する保険会社に連絡します。その際に事故後の対処法について担当者にアドバイスを求める方は多いですが、そこで保険会社が自社の顧問弁護士を紹介することがあります。
事故後は被害を受けたショック、興奮状態、つらい痛みから解放されたいために、急いで解決策を求める傾向があります。紹介を受けたタイミングですぐに契約するケースが多いですが、依頼する弁護士は慎重に見極めたうえで検討した方が良いでしょう。
弁護士特約の相談時
弁護士特約とは、交通事故に遭った際に、弁護士に依頼する費用を保険会社が負担してくれる利用メリットが多い特約です。この特約を使用する際には必ず加入する保険会社に連絡をしますが、その際に弁護士の紹介を勧められることがあります。
弁護士費用が実質0円ならばということで紹介されるまま弁護士と契約する方がいますが、ここでも弁護士選びは慎重に検討すべきでしょう。
弁護士特約の上限金はほとんどの場合300万円となっています。弁護士費用で300万円を超える場合はほとんどありません。ただし、常時介護が必要な重度の後遺障害の場合や死亡事故の場合は300万円を超えることがあるので注意しましょう。
また、注意したいのが「保険会社が紹介した弁護士にしか弁護士特約は使えない」といわれるケースがあることです。しかし、実際にはそのような決まりごとはありません。弁護士特約は自分で選んだ弁護士に対しても利用できます。
【参考】:交通事故「弁護士費用特約」の基礎知識や使い方、メリット・デメリットを詳しく解説
保険会社側から紹介された弁護士に依頼するリスク
保険会社側が紹介する弁護士は、交通事故の案件を多数扱っている専門家だから任せて安心だと考える方は多いと思います。確かにその通りで交通事故事件を数多く扱っているため一定の知識を持つ弁護士は多いです。
しかし、以下のような3つの依頼するリスクがあります。
- 交通事故の被害者側のサポートが浅い場合がある
- 交通事故サポートに熱意がない場合がある
- 被害者加入の保険を使いたがらない可能性がある
交通事故の被害者側のサポート経験が浅い場合がある
保険会社の顧問弁護士の主な業務は加害者弁護の仕事です。そのため、損害賠償金をできる限り少なくする方法については詳しいですが、被害者請求の知識や経験が少ない弁護士もいます。
一方、被害者側の立場で仕事をするという事は、出来る限り損害賠償金を引き上げることが求められます。このように加害者側と被害者側とでは、弁護士が果たすべき役割は逆になります。そのため、保険会社側弁護士が被害者サポートを十分にできるかは分かりません。
交通事故サポートに熱意がない場合がある
一般的に交通事故の弁護士の報酬は獲得した賠償金(経済的利益)あるいは保険会社が提示する賠償金から増額した分によって決まります。
しかし、保険会社と契約する弁護士の報酬額はあらかじめ決められた金額が多いようです。そうなると被害者の損害賠償金を増額させても報酬は変わりません。そのため、熱意を持って取り組んでくれないケースも中にはあるようです。
それによって、賠償金を上げる際に重要な治療の受け方のアドバイスや、後遺障害等級申請のアドバイスをしてくれないということが起こります。
適切な治療の受け方や後遺障害等級の申請をしないと、示談の際に納得のいかない損害賠償金しか受け取れない可能性が高くなってしまいます。
被害者加入の保険を使いたがらない
保険会社側の弁護士は被害者加入の保険を使いたがらないケースがあります。例えば、「車両保険」「人身傷害保険」「搭乗者傷害保険」など、ご自身が加入する保険から支払われるケースがありますが、それらの保険を払ってくれないことがあります。
保険会社から紹介された弁護士に依頼することで、自身が加入する保険についての情報を教えてもらえず十分な補償が受けられないことがあるため要注意です。
保険会社から紹介された弁護士に不満がある場合の対処法
既に保険会社から紹介された弁護士に依頼してしまったけれど、その対応に不満がある場合はどうすれば良いのでしょうか。
そういった場合の対処法は2つあります。
- セカンドオピニオンとして交通事故の被害者側に強い弁護士に相談してみる
- 交通事故の被害者側に強い弁護士に乗り換える
セカンドオピニオンとして交通事故の被害者側に強い弁護士に相談してみる
もし現在依頼している弁護士に不満がある場合は、交通事故の被害者側に強い弁護士にセカンドオピニオンとして意見をもらうのが良いでしょう。
中には、他の弁護士に勝手に相談して良いのか不安に思われる方もいるのではないでしょうか。しかし、弁護士業界ではセカンドオピニオンをすることは依頼者の権利の1つとして考えられているので問題ありません。
弁護士には守秘義務があるので、別な弁護士に相談したことがばれることはありませんので、気兼ねなく相談することができます。
交通事故の被害者側に強い弁護士に乗り換える
すでに依頼している最中であっても弁護士を乗り換えることは可能です。もしも現在の弁護士の対応に不満がある場合、被害者側に強い弁護士に相談の上、検討してみると良いでしょう。
乗り換える際には、以下の2つを必ず行いましょう。
- 現在の弁護士に変更したい旨を伝える
- 自身の保険会社に弁護士の変更を通知する
弁護士に変更したい旨を伝えないと、業務の引き継ぎが適切に行えなくなります。また、解除された弁護士が気分を害するケースも考えられます。また、自身の保険会社に通知をしないと「弁護士特約」から保険金が支払われない可能性があります。
言いにくい場合は新たに依頼する弁護士に変更通知を頼むこともできます。いずれにしても、保険会社には速やかに通知を行いましょう。
まとめ
もちろん保険会社側が紹介する弁護士の中にも職務にしっかりと対応してくれる事故に強い専門家はいます。しかし、一般的に保険会社側が紹介する弁護士は被害者の立場に立ってサポートしてくれないケースがあるため、その点の見極めが必要です。
交通事故の被害者請求は弁護士によって得られる満足度や賠償金が大きく変わることがあります。後悔しないように手続きを進めるようにしましょう。