PTSDの具体的な症状がわかる
PTSDで認定される後遺障害等級と慰謝料の相場がわかる
PTSDで後遺障害等級を認定されるためのポイントがわかる
交通事故で死を意識するような体験をすると、それがトラウマになってしまう方もいらっしゃいます。このトラウマによって引き起こされる症状を「PTSD」と言い、日常生活でも支障が出てしまうケースもあります。
PTSDは精神的な症状のため、目で見て判断できるような証拠を示すことは困難です。
しかし、このような場合でも、後遺障害等級は認定してもらうことができます。ただし、目で見て判断できるような証拠を示しづらいため、後遺障害等級を認定してもらうにはポイントを押さえておく必要があります。
この記事では、PTSDで認定される後遺障害等級と慰謝料の相場、後遺障害等級を認定されるためのポイントを解説しています。
PTSDとは
PTSDとは「心的外傷後ストレス障害」、posttraumatic stress disorder の略称です。
具体的に戦争や地震などの災害、テロや(交通)事故、犯罪事件などを体験した後、忍耐の限界を超えたストレスが生じることを指し、心身の障害になります。
思いがけない時に不安が増大して不眠が続き、些細なことであれ反応を示すことがあります。
PTSDの症状
PTSDでは、不安、鬱(うつ)状態、パニック(※恐れ慌てること)、フラッシュバック(※過去の出来事がはっきりと思い出されること)などが代表的な症状として挙げられています。
前述した症状の持続状態が3ヶ月以内の時は、急性PTSDと呼びます。持続状態が3ヶ月以上の時は、慢性PTSDと呼びます。
しかしながらも多くの場合、半年を経ても精神の変調が続くことが多いようです。だからこそPTSDの治療には、精神医学や心理学の専門家だけでなく、看護師や保健師、ケースワーカーなどがチームを組むことが望ましいと言われています。
交通事故によるPTSDの症状
交通事故における重傷患者の約3割が、交通事故からおよそ1ヵ月後にPTSDや鬱病(※気が滅入って気力が出ずに、劣等感・不安・厭世的気分(えんせいてききぶん)・絶望感などに囚われる精神障害の一種)などの精神疾患を発症しているのが実情です。
鬱病とPTSDは、相互に合併している例が多くあります。ちなみに、単純追突でPTSDは起こり得ません。
症状名 | 具体的な症状 |
---|---|
不安 | 事故現場や運ばれた病院を恐れる、いつも緊張している、眠れないなど |
鬱状態 | 意欲の低下、感情の縮小など |
パニック | 過度に音に敏感になる、事故関連のことを回避しようとするなど |
救急医療が発展したことにより、重傷患者の生存率は向上するようになりましたが、その一方で、こうした後遺障害を抱えながらリハビリを続けている人の割合も増えているのです。
特に以下のようなケースで精神疾患を発症しやすくなっています。
・事故の際に生命の脅威を感じた場合
・恐怖の記憶が強かった場合
・入院時の心拍数が高かった場合
精神疾患を発症してしまうと、怪我の回復だけでなく、リハビリや社会復帰にも影響する可能性がありますので、事故の後に精神的な不調を感じたら、早めに精神科や心療内科を受診しましょう。
PTSDの後遺障害等級と慰謝料の相場
PTSDや鬱病などの非器質性精神障害には、後遺障害等級の認定基準があります。
等級 | 認定基準 |
---|---|
9級 | 通常の労務はできるが、就労可能な職種に制限がされる場合 ※常に援助を必要とする |
12級 | 通常の労務はできるが、多少の障害を残す場合 ※随時援助を必要とする |
14級 | 通常の労務はできるが、軽微な障害を残す場合 ※日常生活や社会生活に一定の制限を受ける |
非該当 | 精神障害はあるが、日常生活や社会生活が普通にできる場合 |
各等級での慰謝料の相場は以下の表のようになります。
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
9級 | 249万円 | 690万円 |
12級 | 94万円 | 290万円 |
14級 | 32万 | 110万円 |
自賠責基準とは交通事故の被害者に対して最低限の保証を目的としていて、もっとも低い慰謝料の基準になります。弁護士基準とは、弁護士会が過去の裁判例を元に発表している基準です。主に弁護士に依頼したときに採用される基準です。
この2つとは別に「任意保険基準」というものもあります。これは保険会社ごとに等級別の慰謝料の基準を設定しています。任意保険基準は、自賠責基準より高く、弁護士基準より低いです。
後遺障害を認定されるためのポイント
PTSDは目に見えない症状のため、後遺障害等級を認定されるのは難しいです。そのため、後遺障害に認定されやすいポイントをしっかり抑える必要があります。
交通事故との因果関係を示す
交通事故によるPTSDの発症には、未だに疑問が持たれており、発症したとしても交通事故による原因ではないと判断されるケースも少なくありません。
その理由は、日常生活での出来事が原因とされたり、PTSDの中でも鬱傾向があったりした場合には、被害者の性格が原因とされるからです。
ですので、PTSDと交通事故の因果関係を証明するには、家族関係や職場関係で問題がなかったことや被害者の性格が特に消極的ではないことなど、交通事故以外に精神症状にかかる理由がないことを指摘する必要があります。
ですので、交通事故が原因である事を示すために、「事故状況や受傷内容」、「症状が現れた時期」、「専門医の受診時期」が重要になります。
発症後は速やかに治療を受ける
PTSDが発症したことを示すために、発症後は速やかに治療を受けるようにしてください。もし、症状が発症した後に半年など時間をおいてしまうと、この症状は交通事故によるものではないと判断されやすくなってしまいます。
ですので、PTSD発症後はすぐに治療を受けることが大切です。
弁護士に相談するメリット
交通事故によるPTSDが発症した際に弁護士に相談するメリットは2つあります。
1. 後遺障害等級を認定されやすくなる
2. ストレスが軽減できて治療に専念できる
弁護士は法律のプロですので、後遺障害等級を認められやすくするための医学的立証の方法などを知っています。ですので、弁護士に依頼すると後遺障害等級が認められやすいです。
弁護士に依頼せずに、全て一人で保険会社とのやり取りや後遺障害等級申請などを行おうとすると、どうしてもストレスがかかってしまいます。
PTSDの治療のために弁護士に保険会社とのやり取りや申請などを一任して、ストレスをかけないことがおすすめです。
まとめ
PTSDが交通事故の後遺障害として認定されるには、PTSDと交通事故との因果関係を示すことが必要になります。そのため、交通事故後に少しでも精神症状を感じたら、早めに治療を受けるようにしましょう。
PTSDの治療にはストレスをかけない生活が大切です。もし保険会社とのやり取りや後遺障害等級の申請などでわからないことがあったり、ストレスを感じてしまったら、まずは弁護士に相談して適切なアドバイスを受けることをおすすめします。