示談交渉は交通事故後の和解方法として、ほとんどの場合に行われます。しかし、やり直しができないため、タイミングを誤ると損をしてしまいます。
例えば、傷害事故で示談を急いで行ってしまった結果、後で後遺症が残ることがあります。そうすると、賠償金以上に医療費がかかる可能性があります。このような損をしないために、いつ示談交渉を行うべきかを把握しておきましょう。
ここでは人身傷害事故・死亡事故が発生した場合の示談交渉のタイミングをご説明します。
3つの民事上の問題解決手段
民事でのトラブルが起こると、以下の3つの手段で解決を図ることになります。
- 示談
- 簡易裁判所での調停
- 通常訴訟・少額訴訟
交通事故での損害賠償問題は民事の範囲となりますので、これらの手段を被害者が加害者に対して行います。そのうち、特に示談による解決が多く見られます。
示談とは
示談とは、事故当事者双方の話し合いによって、紛争を処理する和解契約のことを言います。賠償金の支払いなどを約束することを取り決めます。費用・時間が節約できるというメリットがあります。
しかし、一度示談が成立してしまうと、基本的にはその後に変更をしたくてもやり直すことができません。そのため、時期を見計らって行うことが欠かせません。
示談が成立したら示談書の作成を
示談において考え得るトラブルとしては、加害者の賠償金の未払いなどの契約不履行があります。約束が果たされないと示談した意味がなくなってしまいます。そこで、トラブルを避けるために、賠償の方法について示談書を取り交わしておきましょう。
書面の形式に決まりはありません。どのような内容の和解がなされたのかを明記しておくだけです。万が一後遺症が現れたときのために、「示談書の締結後に後遺障害や再手術が生じた際は、事故当事者は改めて協議に応じる」という旨の文を加えておくと良いでしょう。
示談交渉を始めるタイミング
被害者としては事故のことをいつまでも考えたり、悩んだりしたくないものです。中には早めに示談交渉に応じたくなる被害者もいるでしょう。
しかし、示談を焦って行うと後になって状況が変化し、早期の決着を後悔してしまうおそれがあります。たとえば、後遺症が残ってしまい、医療費や損失が生じてしまうと、傷害の賠償金では賄えません。そのため、交渉を始める時期を見極めることが大事です。
示談は事故直後から開始することが可能
法律的には、示談は事故直後から開始することが可能です。しかし、この段階ではまだ自分が無傷であるのか、実際には打撲や頸椎捻挫(むち打ち)をしていたのかなどの判断が付かないことがあります。
怪我が確定していない事故直後は、まだ示談交渉を開始しないことをお薦めします。示談を行うのに適したタイミングは、傷害事故か死亡事故かによって異なるため、該当する時期に行うことが理想です。以下で示談交渉の最適なタイミングを見ていきましょう。
傷害事故における示談交渉の最適なタイミング
傷害事故における最適な示談交渉のタイミングは怪我の治療後です。なぜならば、治療が終わらないと請求すべき医療費が確定しないためです。
また、もしも後遺症が残った場合は等級認定を受ける必要もあります。基本的には示談内容を覆すことはできませんが、示談交渉時に予測できなかった治療や症状が後になって発生した場合は、損害賠償の再請求が可能です。
死亡事故における示談交渉の最適なタイミング
死亡事故が起きた場合は相続人が損害賠償請求をします。死亡事故における最適な示談交渉のタイミングは2つあります。
一つ目は四十九日後です。
理由は葬儀が終わり、一旦落ち着いた時期であるためです。通夜や葬儀にかかった費用も賠償請求できますので、葬儀前には示談交渉を始めない方が賢明です。
もう一つは加害者の刑事裁判終了後です。特に、悪質な事故の加害者に罪を償ってほしいと考える場合は尚更です。
理由は、示談が先に終わってしまうと、刑事処分が軽くなることもあるためです。
反対に、加害者に厳罰を求めていない場合は、被告人の刑を軽くすることを求めた嘆願書を裁判所に送ることも可能です。それによって、多少刑が軽くなることが期待できます。
加害者と音信不通の場合は内容証明郵便を
加害者と音信不通になってしまうと、当然、示談交渉が進みません。
まずは、焦らずに弁護士を通して損害賠償請求の内容証明郵便を送りましょう。治療費も含めた損害額を算定し、記載します。そして、支払いに応じない場合は法的措置を講じる旨の一文を添えておきます。
これで加害者が示談のために連絡してくることが期待できます。依然として連絡がない場合は訴訟に移ります。
事故が起きたら、必ず警察に連絡し、加害者の連絡先と保険会社を聞いておきましょう。警察への通報なしに処理をしようとすると、加害者と連絡が取れなくなったときに泣き寝入りをすることになります。
示談は被害者にとって、焦らずに行うべきもの
交通事故の加害者は何かと早期に示談交渉の開始を促してくるでしょう。示談が早く終われば、検察庁は加害者に起訴猶予処分か不起訴処分を言い渡す可能性が高まるためです。しかし、加害者の要求に応える義務はありませんので、焦らずにタイミングを待ちましょう。
まとめ
示談交渉は人身事故件数の約90%において行われると言われています。示談によって、賠償額を被害者と加害者双方の過失の割合に応じて増減したり、支払い方法を交渉したりすることができます。お互いが同意した実現可能な和解方法となっています。
示談は基本的にやり直しができないため、タイミングが重要です。後悔しないためにも交通事故に強い弁護士に任せて被害者請求を最大にしていただければと思います。