重大な交通事故や悪質な交通事故の加害者は刑事裁判にかけられることが一般的です。
被害者ご本人、死亡事故のご遺族の中には、そのような刑事裁判の場で、「無念を晴らしたい」「事実を伝えたい」といったお気持ちから、裁判に参加できないかと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「交通事故の被害者参加制度」を利用すれば、それが可能になります。ここでは交通事故の被害者参加について詳しくご説明します。
交通事故の被害者参加とは
交通事故の被害者参加とは、交通事故で被害を受けた方や、そのご遺族が、加害者の刑事裁判に直接参加できる制度のことです。
まずは、被害者参加制度の基本的なことについてご説明します。
対象となる事件
被害者参加制度の対象となる事件は刑事訴訟法で定められていますが、交通事故のケースで対象となる事件は次の2つです。
- 危険運転致死傷罪
- 過失運転致死傷罪
人身事故の被害に遭い、加害者が上記のうちどちらかの罪名で起訴された場合に、被害者参加制度の対象となります。
ただし、被害者参加は裁判所が相当と認めるときに限り許可されるものです。被害の程度が比較的軽い場合などは、許可されない可能性もあることに注意が必要です。
利用できる人
被害者参加制度を利用できるのは、以下に該当する人です。
- 被害者本人
- 被害者の配偶者、子、孫、両親など直系の親族、兄弟姉妹(被害者本人が死亡したか、心身に重大な故障がある場合)
- 被害者の法定代理人(親権者、後見人など)
このように、被害者本人だけでなく、死亡事故や重度の後遺障害が残った事故では、一定の遺族・親族も利用可能です。
利用するための手続き
被害者参加制度を利用するためには、まず、担当の検察官に参加の申し出をします。
申し出を受けた検察官は、参加を認めるかどうかについての意見を付けて、裁判所へ通知します。
裁判所は、被告人(加害者)またはその弁護人の意見を聴いた上で、犯罪の性質などさまざまな事情を総合的に考慮し、相当と認めるときは参加を許可します。
裁判所により刑事裁判への参加を許可された人のことを「被害者参加人」といいます。
交通事故の被害者参加人ができること
交通事故の刑事裁判で被害者参加人となれば、以下のことができるようになります。
刑事裁判への出席
被害者参加人は、刑事裁判(公判期日)に出席できます。
そもそも刑事裁判は、検察官が訴えた被告人を裁判所が裁く手続きです。被害者やその遺族・親族は、基本的に傍聴席から裁判を見守るしかありません。
しかし、被害者参加人となれば刑事裁判へ直接参加することになるので、公判期日には傍聴席ではなく検察官の隣などに着席することができます。
検察官の訴訟活動に関して意見を述べること
被害者参加人は、検察官に対して、刑事裁判でどのような主張をするのか、どのような証拠を提出するのか、どのような求刑を行うのかなどの権限行使について、意見を述べることが可能です。
実際の権限行使に疑問があるときは、検察官に対して説明を求めることもできます。
証人への尋問
証人尋問の際には、被害者参加人も裁判所の許可を得れば、証人を直接尋問することができます。
ただし、尋問できるのは情状に関する事項について、その証人の供述の証明力を争うために必要なことに限られます。犯罪事実に関する質問をすることはできません。
被告人への質問
被告人質問の際にも、被害者参加人は裁判所の許可を得れば、被告人に対して直接質問をすることができます。
ただし、質問できるのは、次にご説明する「事実や量刑に関する意見の陳述」をするために必要な事項に限られます。
「事実や量刑に関する意見の陳述」では事実または法律の適用についての意見を述べることが認められるので、被告人質問では情状に関する事項だけでなく、犯罪事実についても質問することが可能です。
心情等に関する意見の陳述
被害者参加人は、現在の状況や、つらい気持ち、被告人に対して思うことなどを意見として、法廷で述べることが可能です。
被害者としての胸の内を被告人や裁判官に直接伝えることで、被告人の反省や裁判所による適正な量刑を促したりする効果が期待できます。
事実や量刑に関する意見の陳述(被害者論告)
証拠調べの終了後、被害者参加人は、事実や法律の適用に関する意見を陳述できます。簡単にいうと、被告人がどのような罪を犯したのか、それに対してどの程度の刑罰が相当なのかを主張できるということです。
このような意見の陳述は検察官が「論告」として行いますが、被害者参加人も別途、被害者としての立場から論告をすることが認められるのです。
交通事故で被害者参加制度を利用するメリット
交通事故で被害者参加制度を利用することにより得られるメリットは、主に以下の3点です。
加害者や裁判官に直接、被害感情を伝えることができる
刑事裁判に直接参加することにより、加害者(被告人)や裁判官に対して、被害者としての感情を直接伝えることができます。
基本的に刑事裁判では、被害感情は検察官を通じて書面や証人尋問といった形式で法廷に提出するしかありません。被害感情をどれくらい詳しく法廷で主張・立証するかは、検察官の意向次第です。
しかし、被害者参加人となることで直接、思いの丈をぶつけることが可能となります。
加害者の言い分を是正できる可能性がある
刑事裁判で加害者が虚偽の主張や不合理な弁解をすることは珍しくありません。
そのような場合でも、検察官の訴訟活動に関する意見の申し出や、証人尋問、被告人質問、意見陳述などを通じて真実を立証し、加害者の言い分を是正できる可能性があります。
判決に影響を及ぼすことができる
被害者参加人としてのさまざまな活動により、被告人が有罪か無罪かの判断や、有罪の場合の量刑の判断に影響を及ぼすことも可能です。
従来、刑事裁判では被害者の置かれている状況や処罰感情などが軽視され、不当に軽い判決が下されるケースが多かったのではないかと問題視されています。
被害者参加制度の利用によって、このような問題が是正され、被害者にとっても納得のいく適正な判決の言い渡しが期待できるでしょう。
被害者参加をして困ったときの対処法
交通事故の被害者として刑事裁判への参加が認められても、次のような問題で困ってしまうこともあるでしょう。
ここでは、その対処法をご紹介します。
公判期日に出席する都合がつかない場合
裁判所が指定した公判期日に出席する都合がつかない場合には、被害者参加手続きを弁護士に依頼するのがおすすめです。
弁護士は、被害者の代理人として刑事裁判へ参加することが認められています。
事前に打ち合わせをしておけば、弁護士が被害者の意向を十分にくみ取り、代理人として的確に対応してくれます。
意見陳述などをうまくできる自信がない場合
意見陳述の際に、何を述べればよいのかが分からなかったり、緊張などでうまく陳述できる自信がないという方は多いです。
そんなときも、弁護士への依頼がおすすめです。
弁護士は豊富な専門知識と経験に基づき、陳述すべき意見の内容についてアドバイスしてくれます。被害者の代わりに弁護士から意見陳述をしてもらうことも可能です。
被告人の面前で意見陳述などを行うのが怖い場合
被告人の面前で意見陳述などを行うのが怖い場合には、裁判所に次のような措置をとってもらえることがあります。
- 被告人との間につい立てなどを置き、被告人の視線が気にならないようにする
- 別室において、法廷と結ばれたテレビ回線で意見陳述などを行う
これらの措置をとってもらえるのは、裁判所が相当と認めた場合に限られます。裁判所に適切な措置をとってもらうためには、代理人弁護士を通じて申し出ることが望ましいといえます。
旅費や宿泊費の負担が重い場合
被害者参加人として刑事裁判に出頭した方には、必要に応じて一定額の旅費・宿泊費・日当が法テラスから支払われます。
ただし、これらの費用を受け取るためには請求が必要です。検察庁や裁判所で「被害者参加旅費等請求書」を受け取り、必要事項を記入の上、裁判に出席した際に裁判所へ提出しましょう。
被害者参加手続きを弁護士に依頼するメリット
被害者参加手続きを利用する際は、弁護士への依頼がおすすめです。弁護士の専門的なサポートを受けることで、以下のメリットが得られます。
公判期日に同行してもらえる
被害者参加人自身が公判期日に出席する場合でも、弁護士に同行してもらい、法廷で同席してもらうことが可能です。
疑問や不安があれば、いつでも弁護士からアドバイスが受けられます。被害者参加人として訴訟活動の全部または一部を弁護士に代行してもらうこともできます。
証拠を速やかに入手してもらい、事前の打ち合わせができる
被害者参加人としての訴訟活動を適切に進めるためには、検察官が裁判に提出する予定の証拠を事前に確認し、加害者の言い分などを知っておく必要があります。
被害者参加人となれば第1回公判期日前に証拠を入手することが可能ですが、大量の証拠を自分で閲覧・コピーして内容を正確に把握するのは難しいものです。
弁護士に依頼すれば、証拠を速やかに入手してもらい、弁護士からポイントを説明してもらった上で、事前の打ち合わせを行うことが可能となります。
代理人弁護士にかわりに尋問・質問してもらえる
被害者参加が認められても、証人尋問や被告人質問を適切に行うことができなければ、裁判所によって尋問・質問を制限されてしまいます。
しかし、代理人弁護士がいれば被害者参加人としての証人尋問や被告人質問を代行してもらうことが可能です。事前に打ち合わせをしておけば、被害者の意向をくみ取って的確な尋問・質問をしてもらえます。
もちろん、希望があれば、裁判所の許可を得て被害者参加人が直接、尋問・質問を行うことも可能です。
その場合には、弁護士との事前の打ち合わせにおいて尋問事項・質問事項を作成してもらうことにより、法廷での尋問・質問をスムーズに進めることができるようになります。
被害者論告を作成してもらえる
多くの場合、被害者参加人は被害者論告で被告人に対する厳罰を求めることになります。
しかし、専門的な知識がなければ、どれくらいの刑罰が適正なのかが分かりにくいものです。また、厳罰を求めるためには、その根拠も論理的に説明しなければなりません。
事前に弁護士と打ち合わせれば、納得のいく被害者論告の文面も作成してもらえます。被害者参加人は、法廷でその文面を読み上げれば、説得的な被害者論告ができるようになります。
交通事故の被害者参加を依頼する弁護士の探し方
弁護士に依頼するなら、交通事故の事案および被害者参加手続きの経験が豊富な弁護士を選ぶことが大切です。なぜなら、経験が浅い弁護士に依頼すると、的確なサポートが受けられないおそれがあるからです。
ただし、被害者参加手続きの経験が豊富な弁護士は、さほど多くないのが実情です。そこで、弁護士を探す際には、インターネットで検索してみることをおすすめします。
ホームページに交通事故被害者参加の取り扱い事例や解説記事を掲載している事務所は、交通事故被害者参加に力を入れていると考えられます。
オールイズワンは交通事故被害者参加をサポートします
オールイズワンは交通事故被害者の救済に取り組んでおり、被害者参加手続きを積極的にサポートしております。
オールイズワンは交通事故事案に強い法律事務所ですので、被害者参加についても以下のような対応が可能です。
- 意見書の作成をお手伝いします。
- 意見陳述をサポートします。
- 交通事故の訴訟に強い弁護士が対応します。
交通事故で被害者参加制度のご利用をお考えの方は、ぜひオールイズワンにお気軽にご相談ください。全力で取り組みます。
オールイズワンの刑事手続被害者参加
法律相談
交通事故のご相談についてはお電話・メールからお問合せください。
交通事故の法律相談は初回1時間無料にて承っております。重大事故に遭われた方は相談は何度でも無料です。
- 電話受付:9時~22時(平日)、9時~20時(土日祝)
- TEL048-816-6990 (無理も苦労も苦痛もゼロへ)
弁護士費用(税込)
<公判請求サポートと刑事手続被害者参加>
着手金 | 330,000円(否認事件の場合、550,000円) 検察官が公判請求について否定的な場合には意見書を作成 |
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報酬金 | 330,000円(警察段階から受任の場合は440,000円;否認事件の場合、550,000円) |
※出廷費用として、33,000円/回がかかります。
※裁判員裁判の場合には別途お見積り致します。
※業務内容の大要は以下のとおりです。
- (警察段階)
- 警察段階での参加意思表明
- 警察官面前調書作成時のアドバイス
- 捜査内容の確認と公訴事実、起訴不起訴に関する見通しの確認、報告
- 適宜、捜査内容に関する質問、要請
- (検察段階)
- 検察官面前調書作成時のアドバイス
- 刑事記録の取付けと分析
- 検察官との事前協議
- 期日前、ご依頼者やご家族に当事務所にて刑事記録を閲覧していただきながら、記録に関する説明と期日に向けた方針の確認、今後、ご依頼者にご協力いただくべき事項のご案内、心情意見陳述の形式面の指導
- 電話、Eメールにて、被害者参加人の心情意見陳述の内容に関する指導
- 検察官に対し、案件によっては捜査の内容に関する質問、要請等
- 検察官との期日当日の役割分担に関する協議開始
- 検察官に対し当日希望する訴訟活動に関する裁判所の許可取得要請 ※
- 被告人質問事項書、証人尋問事項書、法的意見陳述書を作成し検察官と共有した上、期日における検察官との役割分担を確認
- ※ (許可取得要請の内容)
- 心情意見陳述について、期日当日、参加人の思いを全て訴えられるよう
- 被告人質問、証人尋問を参加人自らされるご希望がある場合はその許可の
取得 - (裁判所との調整)
- 裁判所との期日当日の法廷への出頭時間、入室手順の打ち合わせ(被告人と鉢合わせしないように)
- 複数人で参加される場合の法廷内の席の調整
- 参加人以外のご家族の傍聴席の確保
- (裁判段階)
- 期日当日の検察官との面接時間の確保と面接立会
- 期日当日、代理人として、被告人質問、証人尋問、法的意見陳述
- 参加人の方には心情意見陳述をしていただきます(陳述の場所は、当日のお気持ちにより、証言台でも、検察官側の自席でも構いません)。また、ご希望の場合は、被告人質問、証人尋問もしていただきます。代理人弁護士が隣におりますので、何があっても心配はご無用です。
- 検察庁内の一室をお借りして、期日について振り返り
- 判決期日立会と総評
<示談交渉(被害者側)>
着手金 | 220,000円 |
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報酬金 | 110,000円+示談金の11%(民事の賠償とは別である旨の合意を交わした場合は16.5%) |
<示談書のチェック(被害者側)>
着手金 | 55,000円 |
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報酬金 | 0円 |